この記事は2024年8月30日に掲載された情報となります。
デンプン源として重要なトウモロコシ、その栄養価値を最大限得るためにも、以下のポイントを参照に取り組んでください。
収穫時のポイント
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大切なのは、適期収穫を目指したスケジュール管理!
POINT 1 登熟程度の確認
収穫スケジュール
●栄養収量や採食性・サイレージ生産性を考慮すると、トウモロコシの収穫適期は黄熟中~後期です。
●未熟な状態での収穫は、乾物回収率の低下やサイレージ調製時の排汁増加により養分の損失につながります。逆に2023年のように高温年で生育が進みすぎた過熟状態での収穫では、細断不良や破砕不足が懸念されます。
2024年度の単純積算温度は、道央南や太平洋側を中心に昨年並みかやや高めに推移しており、今年も例年通りの収穫日程では過熟になる恐れがあります(8月15日時点)。
倒伏や病害発生圃場への対応
●台風による倒伏や病害によりトウモロコシが枯れ始めている場合は、不良発酵の危険性が高まるため、収穫時期を早めます。
※倒伏時に①登熟が進んでいない、②枯死していない、③被害程度が甚大ではないといった条件が揃っている場合は収穫を急がず登熟を進めましょう。
Pickup 収穫適期を見極める
子実が黄熟期に入ると子実水分は50~55%に低下し、総体水分も70%近くとなり収穫適期を迎えます。圃場で収穫適期を判定するには子実のミルクラインの進み具合が一つの目安となります。ミルクラインが1/3~2/3位まで進むと収穫適期です。
POINT 2 収穫
切断長とクラッシャーの設定
●ハーベスタには破砕処理装置(クラッシャー)付きのものがあります。クラッシャーが無い場合の切断長は10㎜程度が推奨されますが、クラッシャー利用時はセンイ源を生かすためにこれをやや長めにすることが可能です。
※例えば、収穫開始時に切断長12㎜+クラッシャーのローラ間隔3㎜とし、水分含量や登熟程度で切断長とローラー間隔を調整するなど。調整は、水分含量が高い場合は切断長を長めにして、完熟期や倒伏・病害により乾物率が高まり踏圧が効きづらい場合は短め(6~9㎜)とします。
※黄熟期に入っていない糊熟期段階での収穫でクラッシャーを使用すると排汁の発生が多くなってしまうため、破砕処理を避けます(ローラ間隔を最大にするなど)。
●地際すれすれでの収穫は土砂の混入リスクが高まります。適正な刈取り高さを維持しましょう。
※推奨は少なくとも15cm以上。
●きれいな切断となるよう切断刃を研磨し、受刃との間隔を点検しましょう(収穫時は最低1日2回)。間隔調整後も改善しない場合は受刃の摩耗が考えられるため、受刃の交換が必要です。
Pickup トウモロコシ原料草の牧草との違い
●子実、葉、茎とそれぞれ水分含量や比重の異なるものが原料となる。登熟が進んだ子実については、未消化で乳牛に利用されないことを避けるため、十分に破砕する。
●乳酸発酵で使用される可溶性炭水化物を多く含むため(※牧草の予乾後で10%乾物前後に対し、トウモロコシは20〜30%)、良好な発酵品質が得られる。
収穫・詰込み前の準備のポイント
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大切なのは、詰めるのはきれいな原料草!
●バンカー前のエプロンや、運搬車の動線上において、ぬかるみや泥だらけになりやすい場所は火山灰等で整備します。適した資材がなければ、収穫したトウモロコシを敷き詰めるなど対策を実施しましょう。
●バンカーサイロ内の残渣物を掃き出すなど、詰込み時に原料草以外のものが混入しないようにします。
●スタックサイロもスタック下に石灰を振るなどして、清潔な状態にしましょう。
サイレージ詰込み時のポイント
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大切なのは、十分な踏圧と早期密封!
サイレージの出来の良し悪しに関わる重要工程!
空気を追い出しサイレージ発酵で主要な働きをする乳酸菌が速やかに活動できるよう「十分な踏圧と早期密閉」が求められます。短時間で詰込み作業を終わらせるのではなく、踏圧を丁寧に行い空気を十分抜いたうえでの密封が肝要です。
●原料草はタイヤが大きく沈みこまない程度に薄く広げて、踏圧が十分にかかるようにします。
※ただし、原料草の水分が高い場合は、過度な踏圧は避けましょう。
●踏圧が間に合わない場合は以下をご検討ください。
①運搬車を一旦停止させる。または、原料草を別のきれいな場所に一旦降ろしておく。
②詰込みを複数のサイロで並行して行う。
Pickup サイレージのカビや二次発酵の防止策
トウモロコシは栄養価が高いため、開封後の二次発酵(変敗)リスクが高いです。サイレージ開封後の変敗を避けるために①サイレージの取り出し量を増やす、②二次発酵防止効果のある乳酸菌製品(パイオニア製品11A44、11CFT)を使用する、③酸素のサイレージへの侵入を防ぐ高気密性シートを使用するといったことが効果的です。また、ネズミなどの獣害被害によりカビや二次発酵が生じますので、獣害対策(防鳥ネットやスタックの周りに電牧など)も検討しましょう。(CASE STUDY04 獣害対策の事例を参照ください。)