安定的に農畜産物を生産するために 緑肥と自給飼料

2022年産1番草(生草)の特徴と対応方法

キーワード:自給飼料

2022年産1番草を上手に活用するポイントは「乾物摂取量の確保」をしっかりとしつつ「不足するタンパク・エネルギーの補給」を欠かさないことです。1番草の特徴から、そのポイントについて解説します。

この記事は2022年10月1日に掲載された情報となります。

ホクレン畜産生産部 生産技術課

 

今年は、6月中旬〜7月中旬にかけて雨が続き、昨年と比べて1番草の収穫が大幅に遅れました。また、牧草(生草)の分析値を見ると、乾物率(D‌M)、粗タンパク質(C‌P)が低く、繊維(O‌b、NDF)の割合が高くなっています。今年産の1番草の給与に当たっては、乾物摂取量の低下や栄養不足に十分に注意し、飼養環境(水槽管理、エサ押し、飼料設計など)の再点検をおすすめします。

 

今年の1番草の特徴は高水分で繊維が高い

収穫時期

1番草の収穫が始まる6月上旬は比較的、晴天が続いた地域が多く、オーチャードグラスを中心に収穫が始まりました(図1)。しかし、収穫作業が本格化する6月中旬〜下旬にかけては全道的に断続的な雨が続き、収穫作業が進みませんでした。キザミサイレージ体系では、雨の合間を縫っての収穫作業により高水分となりました。方、予乾が必要なロール体系では、更に収穫が遅れました。また、くみあい飼料粗飼料分析センターに集まる生草の分析サンプルも収穫の遅れを反映して、7月以降のサンプル数が大幅に増加しました(図2)。

 

各地の日降水量と日照時間(6月~7月)
図1.各地の日降水量と日照時間(6月~7月) 橙:日照時間 青:日降水量

 

収穫時期ごとの分析サンプル数
図2.収穫時期ごとの分析サンプル数

 

成分値

表1に昨年産と今年産の1番草(生草)の分析値を示しました。今年産の1番草は断続的な雨の影響で昨年産より乾物率(D‌M)が2.5ポイント低くなっています。また、栄養価は、昨年産と比較して粗タンパク質(C‌P)がやや低く、繊維(O‌b、NDF)が高くなっています。特にNDFについては、分析サンプルを成分帯ごとに分類すると、NDFが65%以上のサンプル数が昨年と比較して19ポイントも増加していることが分かります(図3)。このことから、高水分かつNDFが高く、乾物摂取量が低下しやすい1番草を長期間にわたり給与しなければいけない状況が続くと予想されます。

 

表1. 1番草(生草)の各成分の平均値

 

NDF平均値の違いによるサンプル数の割合
図3. NDF平均値の違いによるサンプル数の割合

 

乾物摂取量を確保しつつ不足する栄養を補給

乾物摂取量の確保

今年の1番草の給与にあたり、最初に考えなければならないのは、【乾物摂取量を低下させないこと】です。乾物摂取量が低下すると、「周産期のケトーシス、第四胃変位の増加」、「個体乳量の低下」、「受胎率の低下」など、さまざまなトラブルが増加します。そのため、①水槽掃除の徹底、②エサ押しの頻度を上げる(特に給餌後1時間)、③長モノはできる限り短く切断する、④残餌(ざんし)の量をしっかり観察する、⑤デントコーンの給与量を増やすなど、乾物摂取量を確保するための対策を最優先で実践することが生産性を落とさないための基盤となります。

 

不足するタンパク・エネルギーの補給

乾物摂取量を確保する対策を実践して、それでも足りない栄養については補給する必要があります。ただし、全頭律に実施するとコストが大幅に増加して、費用対効果が得られないことも考えられます。そのため、【分娩から受胎まで重点的にタンパクとエネルギーの補給】を行い、乳量低下および繁殖成績の悪化を防ぐようにします。その際、「現在使用している品目で対策できるか?」、「どれくらい補給が必要か?」を判断する必要があります。そのために、まずは粗飼料分析と飼料設計について、お近くのJ‌Aまたはホクレン各支所の酪農畜産課/畜産生産課にお声がけください。