飼料

粗飼料分析の活用②~タンパク質

キーワード:サイレージタンパク質品種技術粗飼料分析
粗飼料分析の活用②~タンパク質
図1.牛の利用性によるタンパク質の分類

 

この記事は2020年2月1日に掲載された情報となります。

 

ホクレン 畜産生産部 生産技術課

 

POINT
❶粗タンパク質(CP)は飼料中の窒素含量から計算します。
❷サイレージ中の溶解性タンパク質に注目しましょう。

 

尿素やアンモニアも使えるルーメン内微生物

牛にとってタンパク質は、体の維持や成長、生命活動に欠かせない栄養素です。牛は牧草や大豆などに代表される植物性タンパク質だけでなく、尿素やアンモニアも最終的にはタンパク質として利用できます。

これは、牛のルーメン(第1胃)内にいる微生物がこうした尿素やアンモニアなども栄養源として増殖し、増えた微生物が第4胃、小腸に送られ、牛にとって良質なタンパク質として消化、吸収されるからです。また、これに加えてルーメン内で微生物に使われなかったタンパク質も第4胃、小腸で利用されます。

そのため飼料では、測定した窒素含量から粗タンパク質(CP)を計算しています※1(表1)。

※1.タンパク質は平均16%の窒素を含んでいることから、飼料中の測定された窒素に6.25(=100÷16)をかけて算出。

 

表1.飼料の粗タンパク質含量の例
表1.飼料の粗タンパク質含量の例

 

タンパク質だけでなく炭水化物の給与も重要

粗タンパク質(C‌P)は、ルーメン内で微生物の栄養となるもの(RDP)と、第4胃以降で牛によって消化、吸収されるもの(RUP)に大きく分けられます。なお、その割合は飼料がルーメン内にとどまる時間で変わります。

牛は、増えた微生物が第4胃以降に送られたもの(図1の①)と、ルーメン内で微生物に栄養として使われなかったものから糞で排泄される部分(B‌P)を除いたもの(図1の② )を消化、吸収して利用します。

ルーメン内の微生物は、タンパク質と緒に炭水化物※2も栄養源にしています。微生物をうまく働かせる(活性化させる)ためには、粗タンパク質だけでなく、炭水化物もバランスよくしっかりと給与することが大切です。

※2.繊維やでん粉など。

 

粗飼料中の溶解性タンパク質(SIP)にも注目

粗飼料中に含まれるタンパク質含量は、牧草の草種や刈り取り回数(番草)でも異なります(表2)。

 

表2.粗飼料の乾物中のタンパク質含量の例
表2.粗飼料の乾物中のタンパク質含量の例(乾物中%)

 

粗飼料分析では、サンプルを度乾燥させた後に栄養成分を分析しています。そのため、サイレージに含まれるアンモニアなどの成分は、乾燥時に揮発し測定できないので注意が必要です※3、4

※3.「選択分析1」では乾燥前に「アンモニア態窒素」を分析しています。
※4.現在は、乾燥後のサンプルからも揮発された成分の一部、VBN(揮発性塩基態窒素〜尿素やアンモニアなど)を推定できるようになっています。

溶解性タンパク質(SIP)は、アンモニアなどルーメン中の液体に溶けやすく、すぐに微生物の栄養源となるものを示しています。

サイレージでは原料を貯蔵(発酵)する過程で、タンパク質の部がアンモニアに分解されます。こうしたアンモニアはルーメン内の微生物の栄養源のほか、部はルーメン壁から牛の体内に吸収されます。肝臓で解毒されますが、過剰に給与された場合は肝臓への負担が増し乳牛の健康を損なうので注意が必要です。

乳牛の健康を維持し、生産性を向上させるためにも、特にサイレージの粗飼料分析結果では、溶解性タンパク質やアンモニア態窒素含量にも注目しましょう。

 

イネ科乾草
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イネ科牧草サイレージ
イネ科牧草サイレージ

 

輸入アルファルファ
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大豆粕
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