この記事は2019年6月1日に掲載された情報となります。
昨年は6月の長雨で一番草の刈り遅れが各地で発生。サイレージの品質低下を招きました。台風や豪雨、干ばつなど気象の不安定化は、牧草生産に大きく影響します。予測できない天候リスクにどう備えるか。せたな町の「デーリィー・ファーム若松」で聞きました。
有限会社デーリィー・ファーム若松
代表取締役 鈴木 裕也さん
チモシーとオーチャードグラスを作付け
せたな町北檜山地区で360頭を搾乳しているデーリィー・ファーム若松。育成牛も含めると600頭を12名のスタッフで飼養している農業法人です。
ここでは収穫時期の異なる草種を組み合わせた作付けを行っています。代表の鈴木裕也さんは「うちは昔からオーチャードを3回、チモシーを2回、計5回の刈り取り」と話します(図1)。
まず6月頭にオーチャードの一番草を収穫。1週間から10日あけ6月中旬からチモシーの一番草。そのあと追肥し、8月上旬にオーチャードの二番草、下旬にチモシーの二番草を刈り取り。9月末にオーチャードの三番草、飼料用とうもろこしの順で収穫します。
「昨年は飼料用とうもろこしの生育が良くなく、量が期待できなかったので、オーチャードの三番草の前に追肥してみました。そしたら例年より量がとれたんです。これからはそういう草地管理が必要なケースが増えるんじゃないですかね」
オーチャード、チモシーともに一番草を長雨にあたる直前に刈り取れたので、栄養成分の高いサイレージを調製できたものの、牧草もとうもろこしも量は少なく、育成牛も含めた増頭のタイミングと重なり不足ぎみ。今年は輸入乾牧草も確保しTMRの設計で工夫するつもりですが、飼料作物の量と質の確保が重要な課題になっています。
5回の刈り取りでリスク分散
5回の刈り取り作業は、かなりの手間といえます。
「確かに大変ですよ。コントラとかTMRセンターとか別組織があるならともかく、うちは収穫も自分たちでやってますから。10月まで休む暇はありません」
デーリィー・ファーム若松の畑は牧草が190ha、飼料用とうもろこしが90ha。作業を少しでも軽減するため、牛舎に近い畑には3回刈り取るオーチャードを、距離の離れた飛び地の畑にはチモシーを作付けして省力化を図っています。
「三番草は量的には一番草の半分もとれない。でも道南は畑の面積が狭いところが多いから、3回とってサイレージの量を確保しないと。それにオーチャードは刈らないでそのまま雪が積もると、春にマットみたいになって、一番草に日光が当たりづらい。ある程度生えたのを見計らってきれいに刈ったほうが、一番草の生育もよくなるんですよね」
早めの作業で生まれるゆとり
「コンスタントに雨が降ってくれればいいけれど、最近はまとまって降ることが多いでしょ。雨が続くとやきもきするよね」と鈴木代表。雨も心配ですが、それ以上に恐れているのが秋の台風被害です。
「昨年はなかったけど、一昨年とその前年の台風被害はひどかった。特に2016年のとうもろこしは絨毯みたいに倒れちゃって、もう拾えないなと思ったほど。ハーベスターを2台出して刈り取っても、3分の1はダメでした」
台風の影響を受けやすい終盤の作業に余裕を持たせたいので、今年は一番草の収穫を早め、5月の末から行う計画です。
「一番草で量を確保したいから、今年は反当たりの元肥の量を増やすつもり。もちろんコストはかかるけれど、収穫を待って雨にあたるよりいいかなと」
たとえ不順な天候でも影響を最小限に抑えようと工夫する鈴木代表の姿勢。参考にできそうです。