この記事は2016年8月1日に掲載された情報となります。
JA新得町
太田眞弘 組合長
「新得町の酪農畜産農家は助け合いの精神が強い」と太田組合長。
株式会社シントクアユミルクの取締役社長も務める。
農業生産法人
株式会社シントクアユミルク
北村一哉 牧場長
もともと農協の職員ですが、牧場立ち上げにあたり牧場長に任命されました。
牧場長以下、従業員3名、研修生2名の計6名でアユミルクを運営しています。
JA新得町
渡辺 昭一 参事
「研修生が酪農関係の仕事に就き、町内に定着してくれるのが目標」と話す。
農業生産法人 株式会社シントクアユミルク
農協の主導で、研修牧場が誕生
今年4月、新得町に農協の出資による新しい牧場が誕生しました。最新の換気システムを備えた牛舎には、搾乳ロボットや餌寄せロボット、自動で除ふんするスクレーパーなどの設備を導入して省力化を実現。町内の生産基盤を維持・拡大しながら、あわせて研修生を受け入れ、地域が求める人材を育成していくのがねらいです。
JA新得町の組合長であり、この新牧場を経営する農業生産法人「株式会社シントクアユミルク」の取締役社長も務める太田眞弘組合長は、こう話します。
「新得町の酪農の特徴は、戸数が39戸と少なく、1戸当たりの経営規模が大きいことです。もし後継者不足などで戸数がさらに減ると、地域の維持がますます困難になります。そこで、将来を見据えて、生産量を維持しながら、研修機能を持つ牧場をつくろうという構想が生まれてきました」
事業化には農水省の平成26年補正予算「畜産競争力強化対策緊急整備事業(畜産クラスター事業)」を活用し、農協が中心になって新しい牧場を設立することになりました。
設立にあたっては農協だけではなく、町内の農業法人や運送会社など7社にも出資をお願いし、農業生産法人「株式会社シントクアユミルク」ができました。
「酪農家が集まって新しい牧場をつくるのなら、牛を持ち寄ることができますが、ここは全くゼロからのスタート。牛もない、人もいない、畑もない。ないないづくしで苦労しました。事業申請後は、もう後戻りはできないと必死でした」と太田組合長。
搾乳ロボットを導入したのは、搾乳のための拘束時間を短縮し、慢性的な人手不足に対応できる将来的な酪農生産スタイルの一つのモデルケースとして、地域の酪農家に紹介したいという思いからとのこと。
こうしてシントクアユミルクは、生産力強化、担い手育成と確保、先端技術の実践と実証を目的に、地域支援型のモデル牧場としてスタートしたのです。
酪農関係で働く人材を育成
いまシントクアユミルクでは2名の研修生が酪農を学んでいます。一人は滋賀県出身の女性(25歳)で、新得町立のレディースファームスクールの卒業生。牛に関わる仕事がしたいと、アユミルクに就業しました。もう一人は地元の男性(31歳)で、以前は町内の肉牛牧場に勤めていましたが、酪農での新規就農を目指して研修を志望しました。
しかし、北村一哉牧場長は「新規就農の担い手育成だけが目標ではない」と話します。
「町内には法人牧場もあるし、町営の育成牧場もある。コントラのオペレーター、ヘルパー、検定員と酪農関連の働き口はいくつもあるので、ここをきっかけに何らかの仕事に就いて、地元に残ってもらえるような道筋をつくれたらいいですね」とのこと。
そのために北村牧場長は研修生の生活全般をサポート。町内での人間関係づくりにも心をくだいています。「牧草の収穫時に研修生をTMRセンターに派遣したりするのも、地域の皆さんに研修生の存在を知ってほしいから。研修生が早くコミュニティに溶け込めて定着できるよう、地域ぐるみで支援したい」と話します。
また、今後は東京や大阪などの農業人フェアでシントクアユミルクの受け入れ体制をアピールし、新たな研修生の獲得にも力を入れていく考えです。
さらに今年10月には、農協と町内の酪農家、温泉施設などが共同出資で設立した「十勝新得バイオガス株式会社」のバイオガスプラントが完成予定。完成後はアユミルクのふん尿も毎日運んでプラントで処理し、得られるエネルギーの売電や地元の温泉施設の熱原としての利用を計画しています。そして副産物の消化液は肥料として牧草地や畑でも活用する予定です。
農協が中心となり、多くの地元の皆さんの協力を得て、新しいチャレンジを続ける新得町。地域が一体となって向上していこうという未来志向の熱意が共有されています。