この記事は2016年6月1日に掲載された情報となります。
いま南空知エリアでは、転作水田での子実とうもろこしの栽培が広がっています。さらに、この子実とうもろこしを飼料として与えたオール北海道の豚肉づくりも始まっています。
南空知で始まった子実とうもろこし栽培
2008年、子実とうもろこしの栽培に最初に取り組んだのは、JAそらち南でした。水田転作作物として栽培されている秋まき小麦と大豆の連作障害を避けるために「子実とうもろこしが有益ではないか」と考えられたからです。
子実とうもろこしは根が深くまで入るため、水はけが改善されます。また、実だけを収穫して茎葉を畑にすき込むため、高い緑肥効果が期待できます。さらに小麦や大豆などの畑作機械や、乾燥機を共用できるのも特徴です。
長沼町の生産者柳原孝二さんは、「小麦や大豆をつくっている生産者であれば新たな設備投資がなくて済むし、根が深く入って畑が乾くようになるので、小麦や大豆を作付けしたときにも相乗効果がある」と話します。現在では、JAながぬまやJAいわみざわなど、空知を中心に栽培が広がっています。
子実とうもろこしで北海道産の配合飼料を開発
飼料原料としての道産子実とうもろこしには大きな可能性があります。輸入による価格変動の影響を受けにくいこと。国産とうもろこしの利用により、食料自給率の向上が期待できること。その一方で、輸入と比べて価格が割高だという課題も抱えています。そこでホクレンでは、そのコストに見合う新たな商品作りを目的に、畑から商品開発、販売まで一貫した部門横断的「付加価値販売プロジェクト」を開始しました。
まず、道産の子実とうもろこしを使った新配合飼料をつくろうと、小麦、ポテトプロテイン、ビートパルプなどを組み合わせて研究を重ね、道産原料98%の配合飼料「道産98ポーク」を開発しました。
この新飼料をSPF認定の豊浦町の(有)フロイデ農場で三元豚に実際に給餌しました。試験に協力してくれた代表取締役、勝木伸さんは「若干、出荷は遅れたものの、これまでと変わらない良い豚に仕上がった」と胸を張ります。出荷時の検査では、枝肉重量も格付もこれまでと変わりなし。肉の分析でも通常とほぼ変わりないと証明されました。
道産飼料で、北海道豚肉の付加価値をアップ
では、肝心の味はどう受け止められたのでしょう。「道産98ポーク」を60日間給与した豚肉を試していただくため、道庁最上階にある「赤れんがカフェ」にて試食会を開催。関係者や招待客に、しゃぶしゃぶやローストポークなどで召し上がっていただいたところ、約8割の方が「おいしい」と回答されました。
札幌グランドホテルの小泉哲也総料理長は「豚肉は脂身を食べれば、だいたいのことが分かるが、この脂身は甘くておいしい」と高く評価。消費生活アドバイザーの井野田正子さんからも「飼料の多くを輸入原料に頼っていることがずっと気になっていたので、今回の取り組みをとてもうれしく思っている」と歓迎の声をいただきました。
今後は、豚肉の食味向上に向けた飼料の改良を図るとともに、開発後は小売店への付加価値販売を展開していく計画です。「生産者の熱い想いをしっかり受け止めて、道産飼料にこだわったさらにおいしい豚肉づくりに取り組んでいきたい。そのためにも、栽培に関わる技術支援を続けていきたい」と語るホクレン営農支援センター営農技術課の新發田修治主任研究員。さらなる高みを目指して、道産子実とうもろこし活用への挑戦はこれからも続きます。