2023年 営農のポイント 畜産

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2023年 営農のポイント 畜産

ポイント
畜産情勢の変化に対する対応が必要
【新技術】オーチャードグラスを導入し年間4回の刈り取りで、自給飼料を高消化性牧草に
簡易更新でも良好な草地植生の確保が可能
更新したチモシー草地を長持ちさせる草地管理法
【新技術】新しい飼料分析値を活用した飼料設計を

この記事は2023年4月1日に掲載された情報となります。

北海道農政部  生産振興局 技術普及課  総括普及指導員 横山 優さん

北海道農政部  生産振興局
技術普及課  総括普及指導員
横山 優さん

ポイント❶
畜産情勢の変化に対する対応が必要

飼料価格の高騰、子牛価格の下落など、畜産を取り巻く情勢が大きく変化しています。北海道の場合は、広大な草地面積を最大限に活用して飼料自給率を高め、飼料費を抑えることが求められます。地域によっては子実コーンなど自給濃厚飼料の活用も視野に入れて計画を練りましょう(図1)。

北海道における草地整備等改良面積の推移 折れ線グラフが草地の更新・整備率です。3%前後と低く推移しており、平均では約30年に1度しか更新が行われていないことが分かります。
図1.北海道における草地整備等改良面積の推移 折れ線グラフが草地の更新・整備率です。3%前後と低く推移しており、平均では約30年に1度しか更新が行われていないことが分かります。

ポイント【新技術】
オーチャードグラスを導入し年間4回刈り取りで、自給飼料を高消化性牧草に

土壌凍結地帯の採草地においてオーチャードグラス1番草の収穫期を早め、40日間隔で計4回刈り取ることで、慣行のチモシー2回刈りよりもNDF(中性デタージェント繊維)を低減させた高消化性牧草を確保できます。また、オーチャードグラスを導入することでイネ科牧草被度を80%以上に維持しながら生産でき、収穫作業の労働分散も可能となります(図2)。

収穫期分散収穫体系の組み合わせ 左がチモシー(TY)1番草と2番草を刈った場合、右は採草地面積100haの半分にオーチャードグラス(OG)の4回刈りを導入したと仮定して試算した場合。 乾物の収量は少し減るもののNDF含量(●印)が下がり、牛が自給飼料をいっぱい食べてくれるようになります。
図2.収穫期分散収穫体系の組み合わせ 左がチモシー(TY)1番草と2番草を刈った場合、右は採草地面積100haの半分にオーチャードグラス(OG)の4回刈りを導入したと仮定して試算した場合。 乾物の収量は少し減るもののNDF含量(●印)が下がり、牛が自給飼料をいっぱい食べてくれるようになります。
土壌凍結地帯の採草地における高消化性牧草生産技術
http://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kenkyuseika/gaiyosho/r5/f2/16.pdf

ポイント❸
簡易更新でも良好な草地植生の確保が可能

不良植生割合50%未満の草地を表層攪拌(かくはん)法や作溝法などで簡易更新した場合、少なくとも更新5年目までは収量、栄養価などの生産性に更新法の差はなく、更新しない場合に比べて多収になります。プラウで反転耕起しなくても栄養価が高い牧草がつくれますので、草地更新を積極的に検討ください(図3)。(令和2年研究成果)

表層撹拌法
写真1.表層撹拌法
作溝法
写真2.作溝法
草地の簡易更新マニュアル〜北海道農政部、道立農業・畜産試験場2005年4月より
異なる方法で更新した草地の年間乾物収量(標準窒素区) プラウ+ディスクハロー+ロータリハロー+鎮圧を行う完全更新に対し、表層攪拌とはロータリハロー+鎮圧のみ。作溝とは条間10cmに溝を切って播種と施肥のみ。いずれも播種前の除草剤散布は共通で試験しています。
図3.異なる方法で更新した草地の年間乾物収量(標準窒素区) プラウ+ディスクハロー+ロータリハロー+鎮圧を行う完全更新に対し、表層攪拌とはロータリハロー+鎮圧のみ。作溝とは条間10cmに溝を切って播種と施肥のみ。いずれも播種前の除草剤散布は共通で試験しています。

ポイント❹
更新したチモシー草地を長持ちさせる草地管理法

草地に地下茎型イネ科の雑草が侵入すると草種構成が悪化し、生産性が低下します。更新したチモシー草地を長持ちさせるには、スラリー施用量は「北海道施肥ガイド2020」に準じ、化学肥料とスラリーからの施用養分量が草地の必要養分量を超えないようにするのがポイントです。また、毎年、同時期に刈り取り管理する場合は刈高を10cm程度とし、1番草刈り取りは出穂期を目標とします。適切な草地管理法でチモシー草地を長く維持しましょう。

牧草地へのスラリー散布(ホクレン資料)
写真3.牧草地へのスラリー散布(ホクレン資料)
更新後草地におけるチモシーの維持対策(令和4年研究成果)
http://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kenkyuseika/gaiyosho/r4/f2/12.pdf

ポイント【新技術】
新しい飼料分析値を活用した飼料設計を

牛に必要な栄養素を過不足なく与えるためには、科学的分析に基づく飼料給与が重要です。2020年の「牧草およびとうもろこしサイレージの繊維消化率」に続き、本年「とうもろこしサイレージのデンプン消化率」「乾草および低水分牧草サイレージのNDF消化率」について、最新の分析方法が登場しています。

近⾚外分光分析計(NIRS XDS, Metrohm)
写真4.近⾚外分光分析計(NIRS XDS, Metrohm)
乳牛のエサ設計に役立つ〜粗飼料のデンプン・繊維消化率の推定(資料)
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/shingijutsu/41/19.pdf
乳牛のエサ設計に役立つ〜繊維消化スピードの推定方法(資料)(令和2年研究成果)
https://www.hro.or.jp/list/agricultural/center/kenkyuseika/panf/r2/09.pdf