作業機付きトラクターの公道走行について

道路運送車両の保安基準の一部が緩和され、農業用トラクターに作業機を装着して公道を走行できるようになりました。直装式作業機の場合の制限条件と対応方法のポイントを解説します。

この記事は2020年4月1日に掲載された情報となります。

一般社団法人 北海道農業機械工業会 専務理事 竹中 秀行さん

一般社団法人 北海道農業機械工業会
専務理事 竹中 秀行さん

農業者の声が反映され緩和

平成31年4月の基準緩和の認定により、農業用トラクターに作業機を装着して公道を走行できるようになりました。農業者からの要望に応えて、国土交通省により道路運送車両の保安基準が緩和されたことによります。

●灯火装置と全幅
作業機装着時に灯火装置が見えなければなりません(1参照)。トラクターの灯火装置が隠れて見えなくなる場合は、作業機にも装着します(2参照)。

灯火装置が見えても、作業機の幅が2.5m以内で、灯火装置の外縁と作業機の最外側までの距離が40㎝を超える場合は、最外側付近に反射装置を装着します(3参照)。

作業機の幅が2.5mを超える場合は、作業機装着時の幅の表示、外側表示板の装備、灯火器・反射器の装備が必要です(4参照)。更に、道路管理者から特殊車両通行許可を得る必要があります。

安定性
作業機装着時の(傾斜での)安定性が確認されていない場合(5参照)は、15㎞/‌h以下の速度で走行し、制限標識と運行速度の上限を表示します。

マークの表示
制限を受ける場合、制限標識を表示します(6参照)。これまで説明した中では、作業機が灯火装置の外縁から40㎝を超える場合、全幅が2.5mを超える場合、最大安定傾斜角度が規定に満たない場合が該当します。

灯火の確認方法

道路走行に支障がない位置まで、作業機を上昇させた状態で視認性を確認します。車両にもともと備わっている灯火装置が、ほかの通行車両から見えることが確認できれば、灯火装置を追加しなくても走行できます。作業機を前方に装着する場合、後方に装着する場合で、それぞれ図示した灯火装置が見えるかどうか確認しましょう。

灯火の確認方法

トラクター灯火が隠れて見えない場合

作業機の装着により、トラクターの灯火装置が隠れて見えなくなる場合は、ほかの通行車両から見えるようにするため、保安基準に応じた位置に灯火装置を新たに付ける必要があります。それぞれの灯火装置の取り付け位置は道路運送車両の保安基準により定められているので、基準を確認し正しく装着しましょう。

トラクター灯火が隠れて見えない場合

作業機の全幅が2.5m以内で、灯火装置の外縁から40cm を超える場合

作業機の最外側付近の前面両端に白色反射器を、後面両端に赤色反射器を備えます。

作業機の全幅が2.5m以内で、灯火装置の外縁から40cm を超える場合

作業機の全幅が2.5m を超えている場合

自動車または作業機の後面と運転席に、作業機を装着した状態の幅を表示します。作業機最外側の前面と後面に外側表示板(ゼブラマーク)を、更に灯火装置の外縁から作業機の端まで40㎝を超える場合は、前面に白色灯火器、後面に赤色灯火器と赤色反射器も備えます。

作業機の全幅が2.5m を超えている場合

最大安定傾斜角度の考え方

車両総重量が車両重量の1.2倍以上、または積載により重心の高さが上がるものは、最大安定傾斜角度は35度以上となります。なお、安定性の確認がとれたトラクターと作業機の組み合わせは、順次、下記の日農工ホームページで公開されます。

最大安定傾斜角度の考え方

制限標識などの規格

制限標識は形状、寸法、色の規格が定められています。作業機を装着した全幅が2.5mを超える場合の全幅表示、最大安定傾斜角度が規定に満たない場合の運行速度15km/h以下の表示は、文字の大きさが決められています。

制限標識などの規格

※❶〜❻の図は一般社団法人日本農業機械工業会より

しっかりとした安全対策を

その他、車検の必要な大型特殊自動車(農耕トラクター)に、作業機を装着して公道走行する場合は、所轄の運輸支局で構造変更検査を受ける必要があります。

いずれの条件もすべてのトラクターと作業機に対応が求められます。遵守の義務は運転者に課せられています。判断が難しいと感じた場合は、お近くのJ‌Aなどに相談してください。

詳しくは日本農業機械工業会のホームページをご確認ください。 http://www.jfmma.or.jp/koudo.html