北農5連JA営農サポート協議会では、JA等の農業労働力人材確保の取り組みを支援しています。2022年度から人材派遣会社や旅行会社などのパートナー企業4社と連携し、農業現場における労働力確保の取り組みを開始。アグリポートVOL.37では、パートナー企業の概要や雇用形態の違いを解説しましたが、今回は、パートナー企業のより詳しい活用方法についてご紹介します。
この記事は2022年10月1日に掲載された情報となります。
パートナー企業の特徴
株式会社JTB
農作業請負
POINT
●2021年4月にJA全農と連携協定を締結。各地のJAグループ、ホテルなど旅行関係事業者等とのネットワークを活用し農作業支援を全国展開。
●依頼主(生産者・JA)は作業を委託するため別の作業ができるなど効率化が図れる。
●人材確保に要する期間は約3カ月。
● JAは生産者から請負契約の委任を受け、JTBと契約を締結。JAは生産者から請負料金を集めJTBに支払う。
● 対応可能な地域が限られ、現在は後志・石狩・空知地区。
産地間連携事業について今夏、九州から労働者を後志地区に迎え入れました。実効性のある産地間・地域間の連携方法を検討しています。また、道外の大学生や企業では北海道へ行くこと自体に興味を示している方々も多く、農業と観光を組み合わせた旅行プランも視野に入れています。
パートナー企業の特徴
鎌倉インダストリーズ株式会社 Kamakura Industries
マッチング(バイト)アプリ「daywork」
POINT
●生産者がアプリ「daywork」で直接募集し、求職者とマッチングすることができる。
●求職者は生産者ニーズに応じ1日単位で働くことができる。
●人材確保に要する期間は最短で1日。
●アプリ利用料は現在無料(通信料は利用者負担)。道内58JAが活用中で全国にも展開中(2022年8月現在)。
マッチングアプリを通じて、求職者が空いた日を利用して1日から働くことができます。現場ニーズに柔軟に対応できることもあり、多くのJAが活用。
主婦(夫)や本業を持つ人など、これまで応募できなかった農業分野での副業を希望する人材を掘り起こすことができ、多様な働き方に対応しています。
パートナー企業の特徴
YUIME株式会社
日本人材外国人材派遣
特定技能登録支援
農作業請負
POINT
●特定技能による農業分野に特化した人材派遣を展開している。道内200〜300人の派遣実績があり、今年の採用累計で400人を計画。
●全国各地の繁忙期を組み合わせた日本人材・外国人材の派遣が特徴で、派遣にかかる国内交通費は現地に向かう片道分になっている。
●人材確保に要する期間は約3カ月。特定技能人材は社員として採用するため受け入れ側(生産者・JA)の希望に応じて柔軟な派遣ができる。
●派遣のほか、登録支援機関でもあるため直接雇用の支援、今年6月からは請負も開始し、現地の希望に応じた働き方を提供できる。
●住宅手配、家電は受け入れ側が準備するが、かかった費用の一部を労働者側が負担。
パートナー企業として業務提携締結以前から、道内の農業分野に人材を提供してきました。
耕種分野では全国の繁忙期を組み合わせた人材提供が特徴。今後は畜種分野への参入も検討しており、近い将来道内に事業所を設置予定です。
パートナー企業の特徴
キャリアバンク株式会社
日本人材派遣
特定技能登録支援
POINT
●2021年9月に北海道と「外国人材の就労支援に関する連携協定」締結。北海道外国人相談センターと連携し、外国人就労支援を行っている。
●日本人の派遣・職業紹介、特定技能外国人の直接雇用支援・紹介など幅広い事業を展開。
●SATOグループ(札幌市、行政書士法人・社会保険労務士法人)のグループ企業で円滑な人材受け入れ体制を整備。また、グループ会社には技能実習生の監理団体、語学学校を持つなど人材サービスに関する事業が充実。
●特定技能の登録支援により雇用主(生産者・JA)の直接雇用を支援。
●技能実習生と比較して、特定技能在留資格は5年間何度でも出入国が可能。再来日して同じ生産現場で働くことができる。また特定技能外国人は転職も可能。
●人材確保に要する期間は約6カ月。求人票に基づき外国または国内で募集を行う。
●海外から入国する場合、初期費用が発生するものの雇用期間が長いほど全体費用に占める割合は低くなるため、短期雇用より5〜6カ月以上の長期雇用に適する。
●登録支援にかかる月額管理費用が発生する。
<特定技能の直接雇用(登録支援)について>
技能実習生と比較した場合、①語学・技能が優っています。②5年間は特定技能の在留資格で出入国が可能であるため、母国から戻った後も同じ生産現場で働くことができます。
労働者1人当たりにかかる費用の目安
<比較条件>
●勤務日数:21日/月 ●労働時間:8時間/日。8時間×21日=168時間/月とした。
●時給、請負料金、初期費用、管理費は各パートナー企業からの聞き取りに基づく。
※ただし、請負単価および特定技能の時給に幅がある場合は中間値を使用。
●住宅や交通費にかかる費用は含まない。
単位:円
1.時給単価、請負料金(目安)
⑴ 最低賃金
● 現在北海道の最低賃金は時給889円。今年10月から920円/時間に変更。
● 雇用主は最低賃金を下回って雇用することができない。
⑵ 請負料金
●道内ミニトマト収穫の事例から1日1人当たりの費用を計算すると11,600円。
●請負料金は出来高払いのため作業内容により変わる。
⑶ 登録支援(特定技能)
● 求人内容等で変動するものの中間値は時給1,025円程度。
⑷ 派遣(特定技能)
● 求人内容等で変動するものの中間値は時給1,550円程度。
2.費用の目安について
⑴ 雇用期間 1日、1〜12カ月ごとに計算
⑵ 時給単価・請負料金の違いはあるが、雇用形態にかかわらず雇用期間と共に費用は増加。
⑶ 特定技能の直接雇用(登録支援)は、雇用期間が長くなるほど初期費用が薄まっていき、5〜6カ月を境に特定技能派遣より経済的メリットが出てくる。