労働力を増やすことは理解者を増やすこと

キーワード:アプリ人材雇用労働力労働力確保農福連携雇用

働く人とつなぐ

この記事は2024年8月1日に掲載された情報となります。

北海道農政部 農業経営局 農業経営課 農業経営・企業連携サポート室 主幹 七社 貴郎(ななしゃ たかお)さん (右) 主任 高楠 聖佳(たかくす せいか)さん(左)

北海道農政部 農業経営局 農業経営課
農業経営・企業連携サポート室
主幹 七社 貴郎(ななしゃ たかお)さん (右)
主任 高楠 聖佳(たかくす せいか)さん(左)

 

道内の農業分野の雇用情勢から、外国人材受け入れの状況、北海道における農業の人材確保の取り組みまで、労働力不足を補っていく方策を北海道農政部 農業経営課で聞きました。

POINT

  • 農業で働きたい人が少ない

  • バイトアプリや外国人材の受け入れが増えている

  • 農福連携やネットでの情報配信、退職自衛官への説明会など多チャンネルで採用を支援している

  • 待遇改善など「選んでもらえる」職場へ

 

農業分野は人手不足が常態化

2023年度の道内の有効求人倍率は、全職種平均1.0に対し、農耕作業員が1.7、養畜作業員が3.2と高い水準です。㆒方で事務員は0.4となっており、農業で働きたいという人が少ないことが分かります(北海道労働局調べ)。

こうした中で、地域の漁業や飲食業などの冬季の求人と組み合わせて通年で働けるようにする「特定地域づくり事業協同組合制度」の活用や、農繁期が異なる四国や九州との連携により人材を相互に派遣する産地間リレーなどの取り組みが行われています。

加えて近年、利用が増えているのが、1日単位で農業者と働き手をつなぐアルバイトアプリです。スキマ時間を活用して1日だけ、もしくは数時間だけ働くスタイルが定着してきているようです。

外国人材の受け入れも増えています。「技能実習制度」に加え、2019年には即戦力となる人材を受け入れる仕組みとして「特定技能制度」が創設され、これらを合わせた受け入れ人数は年々増加。道内の農業分野では5,107人(2023年)。5年間で約2倍になりました。

「ノウフク」に「ノウワク」

障がい者の社会参画を実現する「農福連携」の取り組みも増えています。各振興局農務課では「農福連携相談窓口」を設置して相談に応じています。今年から農林水産省認定の農福連携技術支援者を農業現場に派遣し、アドバイスする事業も始まりました。

また、北海道農政部では、働きやすい職場づくりなど雇用に関する情報をひとまとめにした「農業の人材確保お助け情報サイト」を開設しました。

「1日農業バイトと観光を組み合わせたオススメコースを情報発信する取り組み『農WORK(ノウワク)トリップ』も始めました。農業現場で働くきっかけづくりになれば」と担当の高楠さんはさまざまな働くニーズに合わせて情報提供を進めています。

 

北海道農政部「農業の人材確保お助け情報サイト」
北海道農政部「農業の人材確保お助け情報サイト」>WEBサイトへ

 

ノウワクトリップ
ノウワクトリップ>WEBサイトへ
1日単位の農業バイトと地域の観光を組み合わせたおすすめのコースを紹介。農業での1日アルバイトアプリの活用促進につなげます。

 

待遇の見直しも必要

更に、定年退職予定の自衛官を対象に、農業法人などへの就職について情報提供する取り組みもスタート。各地で開催しているインターンシップへの参加へとつなげていく予定です。自衛官への説明会を担当する七社さんはこう言います。

「定年後の再就職では通年雇用を希望する方が多いので、夏場にしっかり働いてもらい、冬はあまり仕事がなくても㆒定の給料を払うなどの工夫が必要かもしれません

1日バイトも通勤にかかる時間を考慮した日給や通勤手当を検討する必要があるでしょう。もし外国から人材を招いた場合の、渡航費用や住居の確保にかかる費用を時給に換算して比較してみれば、待遇の見直しも検討できるのではないでしょうか」

雇用で農業の理解者を増やす

人材確保は、今後更に厳しくなると見込まれます。他産業と同じ待遇では農業を選んでもらえないかもしれません。七社さんは「まずは地域で人材確保に成功している方の話を聞くのが早道」とアドバイス。最後に次のようなメッセージを託してくれました。

「農業に従事する人を増やすことは、農業の理解者を増やすこと。ひいては農産物の合理的な価格形成に向けた消費者の理解の醸成にもつながります。道も振興局ごとに地域の課題をテーマにした農業経営セミナーや個別相談会を開催するほか、今後も農業団体などと連携し、生産現場の人材確保を後押ししていきたいです」