環境に配慮した、目指すべき農業の姿 「みどりの食糧システム戦略」

キーワード:みどりの食料システム戦略有機農業

環境に配慮した目指すべき農業の姿「みどりの食料システム戦略」

農林水産省が2021年5月に決定した「みどりの食料システム戦略」。その概要と生産現場へ向けた情報提供について農林水産省北海道農政事務所の山田英也さんにお聞きしました。

この記事は2022年8月1日に掲載された情報となります。

農林水産省 北海道農政事務所 所長 山田 英也さん

農林水産省 北海道農政事務所 所長 山田 英也さん

Q.最近耳にする「みどりの食料システム戦略」とはどんなこと?

A.食料システムとして「ありたい姿」を描いています

「みどりの食料システム戦略(以下みどり戦略)」は、2021年5月に農林水産省が発表した「農業の生産力向上と持続性の両立をめざす政策」です。地球温暖化が指摘され、SDGsなど環境を重視する世界的な動きの中、私たちの「食」もCO2ゼロエミッション化など、環境にやさしい持続可能な姿にしていかなければならないという考えに基づき策定しました。目標は2050年としていますが、中間目標として2030年も設定しています。

「みどり戦略」を実現するためには、農林水産物の生産に必要な資材やエネルギーの調達、生産活動、生産物の加工・流通、そして、その消費に至るまで、さまざまな関係者の皆さんの思いと行動がつながることが大切です。このつながりを「食料システム」と呼び、環境にやさしい(=みどり)食料システム戦略、と名付けられています。

「みどり戦略」は、食料システムとして「ありたい姿」を描いています。目標は高いのですが、それに向かって、技術革新を進めながら、2050年の実現を目指します。化学農薬・化学肥料低減、有機農業の取り組み面積拡大などの目標を掲げており、目標実現のためには、生産者の皆さんと力を合わせることが何よりも重要です。

農林水産省HP「みどりの食料システム戦略」
みどりの食料システム戦略についての詳細はHPをご覧ください。 https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/index.html

Q.生産現場の負担が増えることにはなりませんか?

A.長い目で見れば経営を安定させるなど、多くのメリットがあります

生産現場は食料システムの根幹です。まずは、生産体系を持続可能にしていくことが重要と考えています。みどり戦略では、化学農薬の50%低減、化学肥料の30%低減や有機農業の取り組み面積割合を25%(100万ha)へ拡大など、意欲的な目標を掲げています。私たちは、これらの目標に向けて取り組む生産者の皆さんを、「予算・金融・税制」で支援します。

支援は、「皆さんに負担をかけるから」という趣旨で行うものではありません。化学資材を減らして循環型資材を投入し、環境にやさしい生産活動を継続するために背中を押すものと考えています。環境にやさしい農業は長い目で見るとコストが安定し、経営面や現場で働く方々にとってもメリットがあるでしょう。

現在、不安定な世界情勢により、飼肥料や燃料の価格が値上がりしています。こうした変化を踏まえ、生産資材を輸入に頼る私たちの営農スタイルを見直す機会にもなるでしょう。

北海道では従来から、化学肥料・農薬の使用を最小限に抑える「クリーン農業」を進めており、その農産物には「YES!clean」マークを付けて販売しています。こうした経験のある北海道の皆さんは、みどり戦略にも取り組みやすいのではないでしょうか。

農林水産省では、財政面・制度面の支援だけでなく、現場を技術面でも応援するため、実用化された品種や新技術のカタログをWebで公開しています。ぜひ、ご活用ください。

「みどりの食料システム戦略」技術カタログ

「みどりの食料システム戦略」技術カタログ
「みどりの食料システム戦略」技術カタログ https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/catalog.html

Q.国の取り組みを教えてください

A.法律を整備し現場を支えます

みどり戦略の実現のためには、2050年まで息の長い取り組みが求められます。そのため、皆さんが安定的・継続的に取り組めるよう、「みどりの食料システム法」を制定しました。この法律の基本理念はみどり戦略に沿っており、環境にやさしい食料システムで未来の「食」を支えていこう、という考え方で成り立っています。

国は今年の秋までに、この法律の基本方針を定め、都道府県と市町村はこれに沿って、共同で基本計画を作ります。

生産者や事業者の皆さんは、こうした方針や計画に基づいてご自身の取り組みの計画を立てることで、認定を受けられます。計画が認定されると、税制面・金融面でメリットがあります。

みどりの食料システム法のポイント
みどりの食料システム法のポイント https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/houritsu-4.pdf

Q.情報はどこで得られますか?

A.インターネットでタイムリーに紹介しています

北海道農政事務所では、みどり戦略に関する特設Webサイトを開設しました。道内の取り組み事例の紹介や、有機食品の販売店がわかるMAP、国の支援措置など、現場と食に役立つ情報を集めています。ぜひご覧ください。

みどりの食料システム戦略 特設サイト
みどりの食料システム戦略 特設サイト https://www.maff.go.jp/hokkaido/midori/top.html
北海道農政事務所メールマガジン「ホカグリ通信」
北海道農政事務所メールマガジン「ホカグリ通信」 https://www.maff.go.jp/hokkaido/merumaga/index.html
動画サイト BUZZ MAFF「なまらでっかい道」
動画サイト BUZZ MAFF「なまらでっかい道」 https://www.maff.go.jp/hokkaido/buzzmaff/index.html

Q.今後、「みどりの食料システム戦略」をどのように進めていくのですか?

A.多くの人がメリットを実感できるように進めていきます

私たちは、環境にやさしい農林水産物が当たり前のようにお店に並び、当たり前のように買ってもらえる未来を望んでいます(図1)。そのために「環境にやさしい持続可能な消費や食育」、「環境にやさしい円滑な流通の後押し」、生産面では「技術開発や普及」、「環境にやさしい取り組みの支援」など、今できることに力を入れています。

こうした取り組みを進める中で、生産者、事業者、消費者、それぞれの方々が環境を意識しメリットを感じてもらえる環境を整えていきます。「いつもの食を、いつまでも」を合言葉に、皆さんと共に「環境と調和のとれた食料システム」の実現を目指しましょう。

「みどりの食料システム戦略」の取り組み
図1.「みどりの食料システム戦略」の取り組み