温暖化で変わる!北海道の病害虫対策

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気候の変動に伴って、害虫の発生時期が変化してきています。これまで北海道では見られなかった新しい病害も確認されるようになりました。これまでとは違った対策が求められています。

この記事は2022年6月1日に掲載された情報となります。

北海道立総合研究機構 中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ
研究主幹 小松 勉さん

北海道立総合研究機構 中央農業試験場 病虫部 予察診断グループ
研究主幹 小松 勉さん

03 春先の気温が高いと、害虫の発生も早期化

中央農業試験場の予察診断グループでは、北海道の主な作物に虫や病気がいつからどのくらい出ているのかを調べています。

害虫は毎年フェロモントラップや黄色水盤トラップなどを設置して捕獲(写真1〜3)。例年に比べて発生時期が早いか遅いか、量が増えたか減ったかなど調査します。

従来は5月になってからフェロモントラップを設置していました。しかし、調査初日に虫が入り、初発がつかめなくなる事例が発生し、近年は4月中旬から調査を始めるようにしています。部の害虫の発生時期は、確実に半月くらい早まっているといえるでしょう。

また、近年は秋でも気温が高いため、温度で生育が決まり、休眠しないコナガなどでは加害期間も長くなっています。秋になっても活発に活動し、作物に被害を与えることも。防除体系を見直す必要があるかもしれません。毎年決まった日程で防除スケジュールを組むのではなく、害虫の種類や発生時期に合わせて臨機応変に対応することが求められます。今後、極端な高温が続いた場合など、これまでにない害虫の大発生につながる可能性があることも胸に留めておいてください。

コナガ捕獲のためのフェロモントラップ
写真1. コナガ捕獲のためのフェロモントラップ
フェロモントラップにより捕獲されたコナガ成虫
写真2. フェロモントラップにより捕獲されたコナガ成虫
黄色水盤によるアブラムシ捕獲
写真3. 黄色水盤によるアブラムシ捕獲

04 特に注意が必要な害虫

ヨトウガ

初夏と盛夏の2回発生し、てん菜や葉菜類を加害します。葉に産み付けられた卵塊から幼虫が孵化(ふか)する頃に薬剤を散布するのが効果的。近年は発生時期の早期化が確認されているので注意が必要。

防除のタイミングを逃さないよう、圃場をよく観察するとともに、地域の発生予察情報もこまめにチェックするようにしましょう。なお、ヨトウガは日長を感知して越冬のため休眠する虫です。秋になると暖かくても休眠蛹になります。

ヨトウガ成虫
ヨトウガ成虫
ヨトウガ幼虫
ヨトウガ幼虫

コナガ

毎年、春の低気圧通過などに伴う南方向からの気流に乗って北海道に飛来します。コナガやアブラムシは日長ではなく温度で生育が決まる虫。

暑ければ暑いだけ早く大きくなり、何回も世代を繰り返します。春の気温が高くなり、加害の始まりの時期が早まっているだけではなく、秋も高温が続くせいで畑の野菜が食害を受けてしまうことも。秋口も防除が必要になるかもしれません。

コナガ成虫
コナガ成虫
コナガ幼虫
コナガ幼虫

アブラムシ

アブラムシやハダニなどの微小昆虫は発育に要する期間が短く、春から秋まで何回も世代を繰り返します。北海道でも暖かくなった影響で、これまでより1世代程度は増加するものと推察されています。アブラムシは馬鈴しょやてん菜などにウイルス病を媒介する危険もあるため、早めの防除が欠かせません。

モモアカアブラムシ
モモアカアブラムシ

05 雨が多くなると、病気も多くなる

温暖化問題を語る時、気温の上昇だけ問題視されがちですが、病気に関しては高温に加えて雨の影響が大きいでしょう。

気象台の発表によると、北海道も今後、確実に降水量が増えていくと予測されています。ゲリラ豪雨など短時間に大量の降雨の場合、圃場が滞水。それによりアスパラガスの疫病(写真4)、大豆や小豆の茎疫病など、病害の出現頻度が高まります。病害に対する抵抗性品種を選択したり、圃場に水がたまらないよう排水対策を徹底したり、長期的な観点から対応を考えなくてはなりません。温暖化に伴う病害虫の発生増加によって栽培管理は難しくなるでしょう。

現在、高度化する栽培管理に対応してICTやA‌Iを活用し効率的な防除ができるように、先を見据えたさまざまな研究が続けられています。

圃場の滞水により発生したアスパラガス疫病
写真4. 圃場の滞水により発生したアスパラガス疫病

ゲリラ豪雨などで短時間で圃場に水がたまってしまいます。病害のリスクが高まるのでしっかりと排水対策を!

06 新規作物の適地は、新しい病害虫にとっても適地

温暖化に伴い北海道でもサツマイモや落花生、生姜など、新規作物が栽培されるようになりました。しかし新規作物の適地になることは、新しい病害虫の発生にも適地になること。これまでにない病害虫の発生リスクが高まっています。

病気は汚染された種苗で持ち込まれて畑に侵入するほか、フィルムやコンテナなどについた土から広がることも。新規作物の種苗は道外から取り寄せることが多くなります。それだけに、きちんと管理された施設で育てられたもの、信頼のおける種苗生産者のものを入手してください。移植前には健全かどうかを確認し、場合によっては消毒をしてから移植するなど、細心の注意を払いましょう。

しっかりと管理された、信頼できる種苗生産者から苗を入手することが大切です。

病害虫発生予察情報を有効活用ください

北海道病害虫防除所のHPでは「病害虫発生予察情報」を毎月更新しています。病害虫の多発生が予測される場合は、随時、注意報も発信します。
HPのメール連絡サービスに登録すると、予察情報の発表時に、直接メールでお知らせを送信。見逃すことなく情報を収集できます。

北海道病害虫防除所のHP「病害虫発生予察情報」
http://www.agri.hro.or.jp/boujosho/
※スマホ未対応のためパソコンからアクセスしてください。

07 注意すべき病害

発生時期の変化や、これまで北海道では見られなかった病害が確認されています。

水稲の紋枯病

水稲の紋枯病

葉や葉鞘に大きな楕円形の病斑が生じ、白い菌糸がくもの巣のように張って、下葉から次第に枯れて倒伏しやすくなります。南方系の病気で高温多湿を好み、北海道ではほとんど見られませんでしたが、近年、道南地域を中心に発生を確認。また、空知地域の圃場で発生している赤色菌核病は紋枯病によく似た病変をつくる疑似紋枯病として知られています。いずれも今後、発生地域拡大の恐れがあります。

秋播き小麦の赤さび病

秋播き小麦の赤さび病

春の高温傾向により発生が早まり、発生量も多くなると考えられています。赤さび病抵抗性“中”以上の品種では、開花始めに行う赤かび病との同時防除で対応可能。ただし、主力品種「きたほなみ」は赤さび病が発生しやすいので注意しましょう。きたほなみの場合は、止葉抽出〜穂ばらみ期にかけての薬剤防除が必須となっています。

ウリ類ホモプシス根腐病

ウリ類ホモプシス根腐病

ウリ類ホモプシス根腐病

これまで北海道にはなかった病害で2020年に初めて確認されました。今のところは空知や上川地域のメロンときゅうりで発生が見られますが、すいかも注意が必要です。東北では露地きゅうりに深刻な被害が出ています。今後、道内での被害が拡大すれば、北海道農業に与える影響は大きくなるでしょう。温暖化によって今まで見たことのないような病害がいきなり発症するリスクも高まっています。

てん菜の褐斑病

てん菜の褐斑病

病原菌への感染で葉に褐色の病斑が発生。多発すると根中糖分が著しく減少します。かつては、9月の防除は不要とされていたものの、近年は9月が暖かくなり遅い時期にも発病、病状が進展します。重要とされる初発期からの薬剤散布についても、基幹薬剤のDMI剤・QoI剤・カスガマイシン剤は耐性菌が出現しているため、9月以降の糖量低下を防ぐには抵抗性に優れた品種の選定も重要です。