浜松市「京丸園株式会社」のユニバーサル農業から学ぶ

福祉の視点に成長の鍵があった

キーワード:ユニバーサル農業福祉
福祉の視点に成長の鍵があった
ミストを導入し、暑さ対策を行ったチンゲンサイのハウス。
働く環境が良くなるだけでなく生産ロスが減ったことで、設備投資を考慮しても、年間ではプラスの収支になりました。
「働きやすさ」の改善は収益にも反映されています。

 

この記事は2020年2月1日に掲載された情報となります。

 

障がいを持つ方やシニア、主婦など多様な人々がおのおのの役割を果たしながら働ける「ユニバーサル農業」。その最前線をレポートします。

 

鈴木 厚志さん

京丸園株式会社 代表取締役 鈴木 厚志さん

「障がい者を雇用し、課題を解決したことが業務改善につながった」
DATA:1996年から障がい者雇用を実践。障がい者は心耕部に所属して作業に取り組む。誰でも作業できるよう、芽ねぎ(24a)、姫みつば(38a)、姫ちんげん(68a)などの栽培システムも確立している。

 

24年前から障がい者雇用を実践

「ユニバーサル農業の根幹にあるのは、農業に福祉の知恵を取り入れる『農福連携』の発想です。般的に農福連携と聞くとボランティアのイメージが先行しがちですが、我々が重視するのは経営。障がい者や高齢者を積極的に雇用し労力に見合った対価を支払う方で、農園全体の収益向上の実現を目指し続けているんです」と話す京丸園 代表の鈴木厚志さん。

現在、従業員数は約100名でその4分の1を占める25名が障がいを抱えた方々。障がい者雇用をスタートさせた24年前と比較すると、約7倍もの売り上げアップを達成しています。

 

解決方法は福祉の考えにあった

鈴木さんが障がい者雇用を始めたきっかけは「何とか、うちの子を働かせてください」という障がい者の親御さんからの依頼でした。

「その親御さんは、子どもが社会とつながったり役に立てる場を、必死に探していたんです」

それを機に鈴木さんは「自分も役に立てるのではないか」と障がい者雇用に取り組み始めました。

「障がい者を雇用することで課題も発生します。しかし、その課題を解決していくことで業務改善が進みました。それまで自分がやっていた仕事も人に任せられるようになり、経営や営業に力を入れることで会社は成長できたのです」

そうした業務改善のヒントは福祉の考え方にありました。

「福祉には作業分解という考え方があります。誰がやっても正確にできるように作業を分解し、マニュアルを作る。作業ごとの単価付けも行います。こうしたことが業務改善につながります。更に、障がい者と緒に働くことで、スタッフ同士が助け合うようになり、職場の雰囲気が優しくなりました。そのことが、働きやすい環境につながったと感じています」

 

人に合わせた仕事をマッチング

同社は現在も毎年、障がい者の採用を続けています。

「新人には得意なこと、やってみたいことを聞き、その方が働けるように作業形態や仕組みを整えていきます。本人ではなく会社が変化するわけです。また、仕事を細分化することで仕事の切り分けができ、人ひとりの適性に合った業務を担当してもらえるよう工夫しています。自分は農福連携を、ビジネスを発展させる大切な方法として考えています。福祉の力を借り、障がいがある人もない人も、高齢者から若年者まで誰もが働きやすい環境を整えていくことで『強い農業』ができると思うのです」

 


京丸園の日常から見る新しい雇用の風景

検品やパック詰め
検品やパック詰めは、障がい者に担当してもらうなど、作業の細分化により「できること」を割り振りします。

 

地元メーカーの協力で製作された使いやすい機械
トレー洗いを担当するスタッフに合わせ、使いやすい機械を地元メーカーの協力で製作。作業に集中でき、作業効率がアップしました。