北海道社会福祉協議会 大泉さんに聞きました

農業と福祉、まずは個別に知り合うこと

キーワード:人手不足福祉農業農福連携

農業と福祉、まずは個別に知り合うこと

この記事は2020年2月1日に掲載された情報となります。

 

農業者の人手不足、障がい者の就労、双方のニーズを組み合わせて解決につなげようという農福連携のマッチングとは?

 

大泉 浩一さん

社会福祉法人 北海道社会福祉協議会 マッチング事業
コーディネーター 大泉 浩一さん

 

北海道障がい者条例に基づく、「福祉的就労の底上げ支援」を担当するコーディネーターとして9年前に就任。中小企業診断士の資格を持つ、コンサルティングの専門家でもあります。

 

農業と福祉の出合いをつくる

障がい者が利用する福祉事業所と産業界をマッチングする役割を担っているコーディネーターの大泉浩さん。引っ越し業者でのダンボールを畳む作業や、レンタカー会社での洗車など、企業の依頼に応じて道内に900以上ある福祉事業所に仕事をつないでいます。

「農業はもともと障がい者も働ける分野でしたが、機械化が進んで難しくなってきた経緯があります。それでも作業を細かく切り分ければ、障がいのある方が参加できる部分がまだまだあるはずです」

では、どのように連携するのがよいでしょう。大泉さんは「地域の福祉と農業、どちらの状況も把握しているのは行政だけ。役場の農政課と福祉課を巻き込んで農業と福祉が知り合うきっかけをつくることが大事」と話します。

実際に恵庭市では2016年から「恵庭市農福連携による障がい者等就労促進ネットワーク」を立ち上げ、農家と福祉事業所の正式な契約による農作業の委託が行われています。定植やハウス内除草など、部作業を切り出して障がい者に働いてもらう仕組みです。

 

地域単位で「労働力」を考える

「北広島市には、新規就農時から福祉事業所と業務委託契約を結び、農福連携を積極的に推進している生産者もいます。まずは福祉事業所と組んで、施設内でできる袋詰めやシール貼りなどの軽作業を外注し、お互いの理解が深まってからハウスや畑の作業を依頼するのがいいでしょう」

また、その際には福祉事業所側との十分な話し合いを通じた信頼関係の構築が重要となります。事業所も利用する障がい者に少しでも高い工賃(賃金)を払おうと、収益性の高い仕事を求め、パンやクッキーづくりなど独自事業に取り組んでいる場合も多いからです。

「これからは農福連携に限らず、地域単位で労働力をどう確保していくかを考える必要があります。障がい者だけではなく、高齢者や生活困窮者なども含めた、地域の多様な人材に活躍してもらうスキームを『産官学』が緒になって考えていくことが重要です」

 

図1.農福連携へのステップ
図1.農福連携へのステップ