この記事は2019年6月1日に掲載された情報となります。
長雨やゲリラ豪雨、台風などが続き北海道の気候が変化していると感じている人も多いのでは? 札幌管区気象台でお聞きしました。
気象防災部 地球環境・海洋課
地球温暖化情報官(取材時)
服部 博和さん
気候変化の影響を軽減するため
桜の開花が昔よりも早くなったと感じませんか?
「北海道では10年あたり約1.1日の割合で開花が早まっています。50年前と比べると5日くらい前倒しです。逆にかえでの紅葉日は10年あたり約2.7日の割合で遅くなっています。気温の影響で、植物にもさまざまな変化が現れているのです」
こう説明してくれたのは札幌管区気象台の服部博和さん。このように気候が変わっていく中、私たちにできることはあるのでしょうか。
「温室効果ガスの排出を抑制し温暖化の進行を食い止める『緩和』。そして、気候変動による被害を回避・軽減する『適応』。この二つに同時に取り組む必要があります」
農業被害を軽減する「適応」とは、どのような対策でしょう?
「気温が上がっていくのを前提に、前もって手を打っておくことです。近年ワイン用ブドウの栽培が盛んになったり、水稲の品質が向上するという予測もありますが、新しい品目や品種の導入、作付け時期の早期化など、気候の変化をプラスに生かす方法を考えておくべきかもしれません」
気候変化をプラスに捉える一方で、自然災害リスクは高まっており、ハウスの強靱化や河川の氾濫対策などの対応が必須となっています。
「気象庁が発信する気象情報を活用してほしいと思います。警報級の風や雨の可能性は5日前から発信しています。また、これまでは1週間先までの気温を『週間予報』として出していたのですが、6月からは『2週間気温予想』も毎日提供します。農作業のスケジュールづくりの参考にしてください」
気候が変わり、経験だけでは対応できないことも増えています。今後は気象庁の気象情報をいち早く入手して、短期的・長期的に備えることが、より重要になるのです。
Q.気温はさらに上がっていくの?
A.地球温暖化は進行しています。
北海道では100年あたり約1.6℃の割合で年平均気温が上昇しています。都市化による変化もありますが、地球温暖化の影響が大きいと考えられます。
このまま温暖化が進むと、これまでの上昇幅を大きく上回りながら、さらに上昇すると見られており、緩和策が進まなければ、70年後の21世紀末には20世紀末に比べて5℃程度上昇すると予測されています。
Q.大雨は増えるの?
A.短時間に強く降る雨が増加傾向。
北海道における年降水量に長期的な変化は見られません。ただし1時間当たりの降水量が30mm以上の激しい雨は増加傾向。
いわゆるバケツをひっくり返したような短時間の大雨はこれまで5年に一度程度の割合でしたが、今世紀末にはほぼ毎年発生するようになると予測されます。国交省では雨の降り方が局地化・集中化・激甚化すると指摘しています。
Q.地球温暖化がこのまま進むと?
A.気候は大きく変わります。
今後、二酸化炭素の排出を大幅に削減できなければ、21世紀末の北海道は、真夏日(最高気温30℃以上)が年に25日程度に増えると見られています。
現在は年間30日程度の夏日(25℃以上)も、80日を超えると予測されています。北海道にはこれまでほとんどなかった熱帯夜(最低気温が25℃以上の夜)も出現。熱中症リスクが増大すると考えられます。
Q.リスクに備えるには?
A.気象情報に注目を。
1時間先までの雨雲の動きは「降水ナウキャスト」、15時間先までの降水量予測は「降水短時間予報」で確認できます。いずれも気象庁ホームページでどなたでもご覧になれます。また、同ホームページには「農業気象ポータルサイト」があり、「農業に役立つ気象情報の利用の手引き」がダウンロードできます。無料でご覧いただけるのでぜひご活用ください。