自動操舵補助装置を搭載したトラクターは、初心者も熟練者と同じような精度で作業が可能です。JAの研修会をきっかけにトラクターに乗り始めた音更町の小森さんを取材しました。
この記事は2021年10月1日に掲載された情報となります。
自動操舵トラクターでストレス軽減できました
音更町 小森 奈美さん
Profile:滋賀県出身。畑作を営む小森孝一さんと2010年に結婚。53haの畑で、小麦、大豆、馬鈴しょ、子実とうもろこし、長いもなどを栽培。
私にもできるんじゃない?
音更町の小森奈美さんは、夫の自動操舵トラクターの補助席に乗った時「私にもできるんじゃない?」と感じたそうです。
ちょうど2019年8月にJAで女性部限定の自動操舵トラクターの体験試乗会があったので、さっそく参加。翌月には実際に圃場で乗ってみることにしました。最初に挑戦したのは整地。馬鈴しょの収穫後の畑に、秋小麦を播くための準備作業です。
「ボタンを押すと軌道に乗り始めるので、最初は不安でついハンドルをつかみたくなりました」
自動操舵とはいえ、緊張したせいか、腰は痛いし、足もむくんで「家に帰ってキッチンで包丁を持つとふらふらだった」と言います。しかし3年目の今では余裕をもって操作できるようになりました。
「トラクターを旋回する枕地だけは自動操舵を使わず自分で運転しますが、あとはお任せ。どこから進んでも軌道に合わせてまっすぐ走ってくれます。枕地の手前でピピッと合図が鳴るので"端まで行ったら旋回する"の繰り返しです」
すごく助かってる
夫の孝一さんがトラクターにGNSS(※)自動操舵補助装置を導入したのは2015年。JAおとふけでホクレンRTK補正データの配信サービスが始まる前年のことでした。
「トラクター3台に自動操舵補助装置を搭載。お義父さんが耕起、私が整地、夫が播種と、手分けしたため、周囲に『もう播き終わったの?』と驚かれるほど早かったです」
義父が体調を崩したため、今は孝一さんと奈美さんの2人で分担していますが、全てを1人でやっている農家もある中、小森家の作業進度は早い方。孝一さんも「すごく助かってる」とうれしそうです。
「以前、馬鈴しょの植え付けの時は私やお義母さんが後ろの機械に乗って種いもを落としていました。マスクやメガネで完全防備しても砂ぼこりで耳の中まで真っ黒になるし、汗だくになるのに、夫はキャビンでエアコンをかけて涼しい顔。どうして私たちが汚れるほうなの?逆じゃないの?って思っていました」と明るく笑う奈美さん。今年は秋までに大型特殊免許を取得する計画を立てています。
「今は圃場に移動する時、夫に電話してトラクターを運んでもらっていますが、大型特殊免許があれば公道も自分で走れます」
離れた圃場へ一人で移動できるようになれば、より役に立てるはずだと考えています。
※全球測位衛星システム。GPS(アメリカ)、GLONASS(ロシア)等の衛星測位システムの総称。
→ここが変わった!
ボタン一つで前進!
操作モニタで設定した経路をGNSSを利用して自動走行するシステムです。直進部分は手放し運転が可能で、スピードも自由に設定できます。「ボタン一つで前進するので誰でも乗れます。怖かったら止まればいいので安心です」と奈美さん。
→ここが変わった!
ハンドル操作はほぼなし!
小森農場では、ハンドル操作なしで軌道に合わせて動くTrimble社製を導入しています。「最初は夫にいちいち電話して操作を聞いて、作業の手を止めてしまっていたので、申し訳なかった」と奈美さん。今はほとんど一人で操作できるようになっています。
ママ、かっこいい!
試乗会に参加した女性部の仲間の中には、奈美さんの様子を見てGPSを導入し、これから挑戦する人がいるのだとか。
「私にできるんだから大丈夫と伝えたいですね」と奈美さん。もしかしたら自動操舵は、トラクター操作に慣れたベテランよりも未経験者の方がとっつきやすいのでは、と感じています。
「手動でハンドルを切るとGNSSの通信が一回切れるんです。運転に慣れている人ほど、ついハンドルを握りたくなるので、初心者の方が違和感なく操作できるかもしれません」
トラクターに乗っていると、小学生の子どもが「ママかっこいい!」と褒めてくれるそう。大型トラックやバスも女性ドライバーが活躍する時代、トラクターを運転する女性もますます増えそうです。