この記事は2019年4月1日に掲載された情報となります。
江別市にあるJAカレッジで2月に行われた「女性農業者生き活き研修」。1泊2日の研修後、参加者4名に残っていただき、女性農業者としての悩み、やりがい、これから変えていきたい点など、ざっくばらんにお聞きしました!
JAながぬま 服部 まゆみさん
夫と義父母の4人暮らし。別棟に息子夫婦と孫2人が暮らす。
娘2人は札幌。営農品目は米・大豆・麦・長ねぎ。
「お嫁さんが出かける時は、息子が作業を休んで面倒みてる。
それでいいんじゃないかな」
JAながぬま 井形 和代さん
東京出身。息子3人は学生で家を離れているので、夫と義父母の4人暮らし。
営農品目は米と麦、直売所で青大豆を販売。
「女性も正組合員になり、総代にもなったんです。
農協にもっと女性の総代や役員が増えたらいいですね」
JAながぬま 荒井 克枝さん
娘3人のうち2人は札幌で生活。
現在は夫と義母と次女の4人暮らし。
営農品目はアスパラガスを中心に大豆と小麦。
「農協の女性部に入ったら、
先輩方が話を聞いてくれたりアドバイスしてくれたり、
すごく助けられました」
JA月形町 福井 百合子さん
夫と息子、義父母と5人暮らし。
夫婦と息子の3人で水田を中心に麦と大豆を栽培。
娘は大学を卒業して独立。
「機械化が進んでいるし、人材派遣もあるし、
昔ほど嫁を頼る状況ではないと思います」
昔と比べ女性の立場は変わった?
服部:今は専従者給与があるけど、昔は無かったですよね。結婚当初はまだ経営移譲していなかったので、夏も冬も主人がアルバイトをしてやりくりしてました。
荒井:私はお盆と正月にお小遣い程度にもらいました。普段から買いものに必要なお金はもらっていたし、特に不満もなかったです。
福井:農家だけじゃないですけど、昔は「嫁は使って当たり前」みたいな意識がありましたよね。
井形:私は主人が経営移譲した後に結婚したので、給料制でした。当たり前ですけど、勤めていた時の給料よりずっと少ないし、ボーナスもない。でも、結婚してしばらくしてから主人がパソコンで入力した農業簿記を書き写してみて納得しました。生命保険などもちゃんと考えて処理してるんだなって。
農家でよかったことは?
荒井:よかったのは新鮮でおいしい野菜を食べられること、時間の融通がきくこと。学校行事にも参加しやすいです。夕食もみんなで一緒に食べられるのがいいですよね。
服部:忙しい時は大変だけど、自由な時間もとれるんですよね。若い時はバレーボール、今は手芸をしたりと趣味も楽しめる。農閑期には主人と旅行に出かけたり。だから、息子やお嫁さんには「私たちが出かける時は頼むね」「あなたたちも自由に行ってね」と伝えています。
福井:家族経営だと夫婦で喜びを共有できるのがいいですよね。ダンナさんが勤め人で奥さんが家にいたら、共通の話題ってあるのかしら?農家は作柄や天候について話しながら、同じ目標に向かって力を合わせられます。
井形:私は天気のいい日に作業服を着て外に出られるのがうれしくて。結婚当初はハイキングついでに苗箱を運ぶ感覚でした。子どもの同級生のお母さんも作業の手伝いに来ると「気持ちいいねー」と言ってくれますよ。
大変だったことは?
井形:ゴールデンウィークに身動きがとれないこと。子どもが小さい時は「子どもの日」だけは遊びに連れて行きましたけど。今年の10連休も農家は関係ないですもんね。
福井:私は実家も嫁ぎ先も稲作だったのですが、やり方が違うのに戸惑いました。非効率だなと思っても言えないし、しばらく悶々としてました。
荒井:「外で仕事してる方が偉い」みたいな雰囲気がありますよね。結婚した当初は、家事と育児の他に外の仕事もあって、どれも中途半端で悩んだことがありました。でも、農協の女性部に入ったら、先輩方が話を聞いてくれたりアドバイスしてくれたり、すごく助けられて。その後フレッシュミズができ、同年代の仲間で集まるのも、いい気分転換になりました。
女性がいきいきと働くために改善できる点は?
荒井:結婚したばかりの頃は自分の居場所があるといいですよね。自由に花を植えられるスペースがあったり、家庭菜園を任せてもらえたら、うれしいかも。あとは女の人が家から出やすい環境をつくってあげることかな。
井形:よそから来ると地域で孤立してしまいがち。周りも何で困ってるか分からない。だから、お互いになんでも言える環境をつくることが大事だと思います。
服部:うちは今、お嫁さんが子育てに専念中。私の時代は子育ても農作業もごはん支度も全部しなきゃならなかったけど、子育て中心でいいと理解しています。
福井:最近は親世帯とは別居が前提で、街から畑に通う人もいますからね。機械化が進んでいるし、人材派遣もあるし、昔ほど嫁を頼る状況ではないと思います。
荒井:うちは娘が「継ぎたい」と言ったら主人が「ムリだ」と反対して。今は別の道に進みましたが、結婚してから実家の農業を手伝うというパターンもあるようなので、少しだけ期待してます。
福井:娘さんがダンナさんと戻ってくるケース、月形でもありますよ。
服部:息子は会社員になったけど、孫が農業やりたいと戻ってきてるところもあるし。
荒井:それだけ外からみて職業としての農業のイメージがよくなってきてるってことですよね。
井形:農業をやりたくて来た人は一生懸命ですよね。つい口を出したくなるのも分かりますが、自分たちのやり方を押しつけるのではなく、頼ってきたら教えるくらいの距離感の方がいいと思います。
若い人に来てもらうためには?
福井:作る喜びを伝えたいですね。
井形:長沼はグリーンツーリズムが盛んですが、子どもたちだけじゃなく親の世代にも参加してもらいたいし、同じ町内でも農業と無縁の人に田植えや稲刈りを体験してもらいたい。
服部:今は農作業服もかわいいのがあるし、農場もキレイにして「昔のイメージとは違う!」と伝えたいですよね。
井形:でも農村はまだまだ男社会な面もありますよね。女性は夫に意見を言えても、一歩外に出たら発言権がない。会議でも「女の人は黙ってて」と言われてしまうことも。だから私は出資金を払って正組合員になり、総代にもなったんです。農協にもっと女性の総代や役員が増えたらいいなと思います。
最近は男性の意識も変わって、若い人は会議があっても「子どもを風呂に入れる時間だから」と帰ったりしますよ。奥さん一人じゃ大変だからって。昔だったら考えられないけど、世の中は着実に変わってきてると思います。
服部:うちの息子もイクメンです。お嫁さんが出かける時は、息子が作業を休んで面倒みてる。それでいいんじゃないかな。
荒井:昔はダンナに預けたはずなのに、結局ばあちゃんが世話してたり……。
服部:そうすると、なおさらお嫁さんは出づらくなるもんね。
荒井:夫がイクメンだと奥さんは気楽。
井形:やっぱり大切なのは夫の理解だよね。
研修会の価値や意義とは?
荒井:さまざまな地域の人と交流できるのでためになります。
福井:いつも家で仕事してるから、他地域の人と会って話す機会は貴重。今回は道東の酪農の方もいたので、いろんな話を聞けました。
服部:私は若い時トラクターに乗りたかったのにできなかった。今はもうムリだけど、そういう研修があれば出たかったと思う。
井形:子どもを預かってくれるところがあれば、若い人ももっと参加しやすくなるよね。
服部:こうして振り返ったら農業をやっていてよかったと思うけれど、20〜30代で座談会したら、つらいつらいとグチを言ってたかもしれないよね。
福井:それはある(一同うなずく)。
服部:大変さも含めて、よかったと思えるようになる。そこを伝えたいかな。