03 雇用主としての立場から考える

働く人の立場に立った環境づくり

キーワード:労働力北海道農協青年部協議会生産現場
働く人の立場に立った環境づくり
お昼はそれぞれ自宅に戻って食事をとる山内農場。余裕のあるときは、山内さんの奥様とパートさんが一緒にランチに出かけることもあるそう。「同じ30代だから、話しやすいんじゃないでしょうか。仲良くしているようですよ」と山内さん。

 

この記事は2017年12月1日に掲載された情報となります。

 

生産現場の労働力不足。生産者の皆さんはどう対処しているのでしょう。パート従業員に長く働き続けてもらうには、どのような配慮が必要なのでしょう。家族以外の従業員を雇用している北海道青年協議会の役員の方々に取材しました。

 

山内晋二さん

北海道農協青年部協議会
副会長 山内 晋二さん(JA道央)

 

主婦が働きやすい柔軟な勤務体制

恵庭市の山内晋二さんは、去年、経営を引き継いだばかり。現在はご両親と奥様と4人で、水稲、馬鈴薯、てん菜、大豆、小麦のほか、直売所向けのミニトマトやピーマンを生産しています。

「パートさんにお願いしているのは、ハウス内の管理や収穫作業、出荷のための箱詰めや袋詰めです。春先には田植え、秋にはイモ掘りも手伝ってもらうので、そのときはハウス内の作業を前倒しで進めるなど調整しています」

雇用しているパートさんは3人。うち1人は親戚で、あとの2人は近くに住む子育て中の30代の主婦です。期間は3月下旬から10月末まで、時間は朝8時半から正午、午後1時半から5時までですが、自由に休みがとれるようにしています。

「学校の行事や家庭の用事を優先して構いません、と伝えています。うちも雨が降れば急に作業を休むことがありますので、それでもいいという方に来てもらっています。都合に合わせて、朝だけ、半日だけ、と出てきてくれる日もありますよ」

パートさんの一人は、5年以上勤めてくれているベテラン。お子さんが小学生のうちは週末に休んでいましたが、中学生になってからは、仕事に出てきてくれる日も増えました。

「最近は、こちらが何をしてほしいと指示しなくても、先を読んで作業を進めてくれる」ほど。山内さんは「JAの直売所のことは僕よりも分かってる」と、信頼を寄せています。

 

うちでずっと働いてほしいから

パート従業員が定着せず、すぐに辞めてしまうケースも多いなか、山内さんは長く働いてもらうため、どのような配慮をしているのでしょう。

「なるべく無理のないように作業を組み立てたいと思っています。思ってはいるんですが、天気が悪いと計画通りにいかなくて…。そこが問題ですね」

休憩は倉庫のイスとテーブルで家族もパートさんも一緒に、お茶を飲むのが習慣だそう。おやつは用意しておきますが、パートさんが旅行のお土産を持参したり、手作りのお菓子を差し入れてくれたり…。経営者と従業員というよりも、もっとアットホームな雰囲気のようです。

「雨が降ると、ミニトマトが割れてしまうんですが、うちのパートさんは収穫しながら口に入れちゃうみたいで、『おなかいっぱい〜』って倉庫に戻ってくるんです。生産者として、つくっているものを捨てることは極力したくない。同じ気持ちでやってくれているんだな、とうれしくなります」

パートさんも自分たちと同じ生産者。だから山内さんのところでは、イモ掘り後に残る小さなイモや、パック詰めで残る野菜は持ち帰り自由。新米ができたら試食用に1袋進呈。贈答用のイモやお米も特別価格で提供しています。

 

山内さんとパートさん

 

「できればずっとうちで働いてもらいたい」という山内さん。いま気にかけているのは、パートさんの健康管理です。

「結婚してから一度も健康診断を受けていない人もいるんです。ご主人は会社で健診の機会があっても、主婦にはない。雇用側が一部費用を負担しても、JAグループの病院で健診を受けてもらう仕組みはできないのかなと思っているところです」

パートが働きやすい環境づくりは、働く側の立場になって考えることから始まるのかもしれませんね。

 

【生産者の取り組み】従業員に長く働いてもらうために


働き手の都合にあわせた勤務体制を整備

伊藤司さん

北海道農協青年部協議会
監事 伊藤 司さん(JA今金町)

 

うちはメインのミニトマトがほぼ手作業なので、最盛期には30名近いアルバイトが必要です。養護学校の卒業生、離農した近所の方、子どもの友達のお母さん、夏休み中の高校生、東京農大などから農協経由で来てくれる住み込みの学生さん、あらゆる方法で集めています。

勤務時間はあえて決めず、都合のいい日、都合のいい時間に働けるよう、タイムカードを導入しました。アルバイトさんを招待してお盆にはバーベキュー、年末には居酒屋で忘年会を開いているのも、来年も続けて来てほしいという気持ちからですね。


気をつけているのは、従業員の話を聞くこと

村田辰德さん

北海道農協青年部協議会
監事 村田 辰德さん(JA幕別町)

 

常勤雇用の男性が一人いるので、去年、従業員用の住宅として近所の中古住宅を購入しました。家族もいるので、春と秋の農繁期以外は、極力、土日を休んでもらうようにしています。

忙しいときはほかに女性のパートさん数名に手伝いをお願いしていますが、気をつけているのは一人一人の話を聞くこと。不満はちゃんと伝えてもらい、改善できることは改善したり、要望を聞いたうえで勤務時間を相談したりしています。

九州では、白菜の収穫期、漬け物会社の従業員が農家に作業支援に来てくれるそうですが、うちでもマネできないかと農協で話し合っているところです。