02.整備 農業機械の性能を引き出す

日頃の整備が高い生産性をうむ

キーワード:ICT整備農業機械

日頃の整備が高い生産性をうむ

この記事は2017年2月1日に掲載された情報となります。

 

高速で大きな負荷をかけながら繊細な作業を行う農機。その性能を引き出すために日頃の整備は欠かせません。故障や事故など整備不良がもたらす損害から整備のポイントまで中央農業試験場の吉田邦彦さんにお聞きしました。

 

吉田 邦彦さん

地方独立行政法人 北海道立総合研究機構
中央農業試験場 生産研究部
生産システムグループ
研究主任 吉田 邦彦さん

Profile:北海道大学農学部卒業。平成12 年根釧農試、平成21 年十勝農試、平成26 年より中央農試。家畜ふん尿処理および搾乳機械、畑作機械・栽培の試験研究を経て、現在は道央水田作地域を主な対象として、無人トラクターの活用や野菜収穫の軽労化に関する試験研究を担当している。滋賀県出身。

 

●maintenance

焦らず、余裕を持ち農業機械を使いこなすために

農作業を担う農業機械が故障すると作業計画が遅れてしまい、大きな損失につながることにもなりかねません。場合によっては大きな事故につながることもあります。

道総研中央農業試験場の吉田邦彦研究主任は故障による作業遅延や事故を避けるためのポイントとして日々の整備を重視しています。

「農業機械が活躍する環境は硬い石があるなど過酷なもの。それだけに、機械の性能が上がっても放っておけば故障してしまうリスクもあります。農業機械の故障は作業の遅延につながり、作業が遅れる焦りから事故の原因になることもあります。だからこそ、大切なのは点検・整備で常に万全の状態を保つこと。そして作業中の小さなトラブルを軽視しないことです。トラブルによる焦りはより大きな事故につながります。小さなトラブルのうちに解消し、余裕を持って機械を運用してください」

 

ロールベーラー火災
圃場でのロールベーラー火災。可動部では金属同士が高速で擦れ合います。
そのため、潤滑が不十分と摩擦による可動部の破損や内部の高温、火花の発生によりロールベーラーの火災や左写真のような、梱包するロールへの引火につながる可能性もあります。

 

変化を読み取ることが第一歩

一言で整備といってもさまざまなことがあります。吉田さんは機械の状態を感じてトラブルを未然に防ぐことが重要だといいます。

「可動部の潤滑が不足すると音や振動に違和感が出てきます。この変化を見逃さない。機械の調子がいい時との小さな違いを認識し、しっかりと原因を追究しましょう。ちょっとした違和感でも、その後ろに大きなトラブルが隠れているかも……と認識できるかどうかが分かれ目になります。

小さなうちに故障など不調の原因の芽を摘むことで故障や事故を防ぐことができます。作業のピーク時期にはどうしても作業を進めることを優先してしまうので、シーズン前の余裕ある時期にオイルや油圧チェックだけでなく、試験運転をしてください。面倒かもしれませんが、こうした手間がピーク時の故障や事故を避ける基本です。

毎日の整備では可動部のグリスアップと洗車が重要です。アクシデントの多くは可動部の熱など潤滑不足や汚れの付着による故障箇所の見落としが原因です。整備というと難しく考えがちですが、最も基本的なグリスアップや洗車が特に重要なのです。

作業後は残渣や土などをしっかり洗い落とし、可動部をグリスアップすることですぐに使える状態にしておく。専門的な知識も大切ですが、こうした日々の整備が農業機械の性能を引き出し、作業をスムーズにします」

 

施肥試験の様子
速度連動ブロードキャスタによる施肥試験の様子(十勝農試)。
ブロードキャスタの施肥量自動制御では肥料ゲート開閉が制御信号に正確に応答することが必要です。肥料カスの固結、詰まりがないことを確認しましょう。

 

農業機械が進化しても整備の重要性は変わらない

ICTにより進化を遂げる農業機械。吉田さんも最新技術を使った次世代農業機械の開発に参加しています。新しい時代の農業機械に必要な整備とはどんな点でしょうか。

「ICT化により、自動制御を活用した可変施肥や遠隔サポートの充実など、軽労・低コスト化につながるさまざまな恩恵が受けられるようになっています。反面、コンソール(制御装置)をはじめとする電子機器類が増加したことで、コネクタの接触不良や断線など、従来よりも気にすべきポイントは増えています。

また自動制御では、制御信号に対して作業機側が確実に応答することが前提となりますが、作業機自体の稼働が円滑でなければ満足のいく効果は得られません。従来通りの点検整備による機械コンディションの維持と、ICT機器類の確実な作動、いずれに対しても配慮を怠らず、新たな時代の農業機械を使いこなしてほしいと考えています」

 

大豆圃場写真
農業機械による精度の高い作業は生産性の向上につながります。
写真のような生育の揃った圃場づくりには農業機械の性能を引き出す日々の整備が欠かせません。

 

読者アンケートから

整備について読者の皆さんにアンケート。貴重なご意見の中からいくつかご紹介します。

●点検・整備

▪︎あわてて整備しない(余裕をもって整備する)。【せたな町・女性】

▪︎乗る前にトラクターのまわり1 周点検。【北広島市・女性】

▪︎小さな事でも気付き次第すぐ修理。【秩父別町・男性】

▪︎日々(作業前)の点検・確認が農業機械の故障トラブルを防ぐことになります。もちろん使用後の洗浄、グリスアップ等の点検も大切ですが、野ざらしは避けましょう。屋根がなくてもクロスシートで覆い(カバー)をすることも大切です。愛情を持って機械を手入れする気持ちが大事です。【池田町・男性】

 


 

●清掃

▪︎使用後の清掃などこまめなメンテナンスをしている。【伊達市・女性】

▪︎機械は使ったらすぐ、必ず洗うか掃除して片づける。外に出しておかないなど…。機械のサビなどつかないようにしています。【上富良野町・女性】

 


 

●グリス

▪︎グリスとオイル交換はケチらずこまめに!【別海町・男性】

▪︎こまめにグリスアップするのが故障を減らすポイント。【美幌町・男性】

 


 

●オイル

▪︎オイル交換等、自分でできることは日頃から点検する。【豊富町・男性】

トラクター等の場合はオイル交換時の記録をキャビン内に書いている!【新ひだか町・男性】

 


 

●機械音

▪︎音を(作業時)注意して聞き、異常音を聞き分ける。【せたな町・女性】

 


 

 ●保管

▪︎農機具は使っている時より使わないとき(冬期間)の方が大切にしよう。【標茶町・女性】

 


●その他

▪︎機械整備は定期的な点検と日常的な点検を分けて全て機械別にExcel で管理を行う。【ふらの・男性】