VOL.1

耕地図への書き込みから始まる経営管理

キーワード:経営管理耕地図

農業経営塾アイキャッチ

この記事は2016年12月1日に掲載された情報となります。

 

今年の収穫も終わり、次年度の経営について思いをめぐらす時期だと思います。そこで、経営管理面でまず知ってほしいポイントについて、北海道農政部技術普及課 農業研究本部技術普及室 藤田上席普及指導員にお話を伺いました。

 

藤田雅久さん

北海道農政部 技術普及課
農業研究本部技術普及室
上席普及指導員 藤田雅久さん

Profile:青年海外協力隊(ボリビア)を経て、平成4年より普及指導員として留萌、上川、空知等の農業改良普及センターで活動。主に水稲の収量・品質向上に向けた技術改善に取り組む。現在は、関係機関・普及センターと、地域が直面する課題解決に向け研究職員と連携し活動している。

 

一口に経営管理といっても、ばくぜんとして具体的には想像しにくいですし、どこから手を付けたらいいか考えてしまうと思います。そこで、私が以前、上川地区の水稲生産者に提案したことをお話します。

 

当たり前のことを面倒がらずに実施することが重要

私が当時担当していたA町の水稲生産者を、その収量から上位、中位、下位の3グループに分け、栽培履歴等をもとにそれぞれの特徴を調べました。すると、上位と下位では栽培方法などに違いがあることがわかりました。

具体的には、高収量の方は圃場の収量差が少なく、どの圃場も安定してとれていましたが、低収量の方は育苗日数が長くなって苗質が不良だったり、側条施肥率が低くて初期生育が良くなかったり、適正な水管理がなされていないなどの他、土壌条件が違っていても施肥量がほぼ一律だったという特徴がありました。

収量を安定させるには、圃場ごとに何が原因かはっきりさせ、それを改善することによって、圃場間の収量差を小さくすることが大切だと感じます。

圃場ごとの管理というと、当たり前のことで今さらという感じだと思います。しかし、言葉でわかっていても、実際にそれを実行している方はかなり少ないのではないでしょうか。

 

圃場台帳(記入例)
圃場台帳(記入例)

 

 施肥を例にすると、春作業時に、計画どおりに(圃場ごと)肥料が散布されているか、ムラはないか確認するのは手間がかかります。忙しい時なので避けたいものです。でもそれが収益につながるのですから、私は「めんどうくさい」は金儲けには禁句ですとお話していました。

 

頭の中だけでなく「見える化」することで情報を共有する

圃場ごとの管理の取り組みを始める際、私が提案したのは(共済の)耕地図への書き込みでした。皆さんの頭の中にはもちろん圃場ごとの出来、不出来など入っていると思います。でも、それを記録し「見える化」する大切さを理解してほしいのです。

ポイントは、耕地図を軽トラなどに入れていつも持ち歩き、倒伏した部分やいもち病などの発生、小出来、大出来、切土や盛土などを気づいた時に都度メモすることです。

 

いもち病
いもち病

 

倒状
倒状

 

この耕地図をもとに、圃場ごとの施肥や収量などの台帳を作成することで、目標と実際との差がわかり、次年度に向けた対策が立てられます。また、記録することで、経営者だけでなく家族全員で情報を共有でき、圃場ごとの管理ができるのです。

もちろん、最初からここまでは難しいと思います。一筆ごとでなく、いくつかのグループに分けても良いですし、耕地図への書き込みだけでもかまいません。とにかく、圃場ごとに管理する意識づけができれば、全体の経営改善につながっていくと思います。実際に圃場ごとの管理を実践した方は、収量が安定し継続して高収量をあげていました。

 

耕地図への記入例
耕地図への記入例

 

まずは、耕地図への書き込み、そこから始めてはいかがでしょうか。