この記事は2016年8月1日に掲載された情報となります。
後志総合振興局
本田晃 地域政策課長
「協力してくれたリゾート会社に感謝しています。冬と夏の通年雇用で就業の場としての後志に魅力を感じる人がもっと増えてくれれば」と話す。
無料職業紹介事業所の認可を自ら取得するなど、マッチングプランの推進役を務めました。
JAようてい営業経済事業本部 地域振興課
浦口俊昭 統括課長(右)
福田達裕さん(左)
マッチングプランの受け入れ農家のため、面接マニュアルや雇用契約書、就業規則などの見本をつくって配布。
「受け入れ農家の心得」も作成して、きめ細かくサポートしました。
蘭越町 トマト生産者
近藤一祝さん
「トッドとアレックス、ふたりとも農業は初めてらしいけど、気持ちよく働いてくれるから、たいした助かってる。外国人だから困ることなんてなんもないよ。うちの孫の運動会にも二人して応援に来てくれたんだ」と、すっかり打ち解けた様子です。
しりべし 「まち・ひと・しごと」マッチングプラン
冬季の豊富な労働力を農業就労へ結びつけるには
「後志にはニセコ、キロロ、ルスツと3つのリゾートがあり、冬場には1,000人の日本人、1,200人の外国人が働きに来ます。多くは独身の若者で春になると別の地域へ移ってしまう季節労働ですが、彼らに残ってもらい夏場も働いてもらえないか、という地域の要望が出発点です」
去年の秋からスタートした「しりべし『まち・ひと・しごと』マッチングプラン」について、こう説明してくれた後志総合振興局の本田晃地域政策課長。まずはリゾートの協力を得て、冬山のスタッフに「夏の就業希望」についてアンケートを実施。80人を超える人が夏季就業を希望したことから、一人一人の意向をヒアリングする「冬山ジョブ・マッチング・カフェ」を各リゾートで開催。希望する職種やエリアを個別に把握しました。
そのなかで農作業ヘルパーを希望した人を中心に声をかけ、3月には管内4農協と連携して「アグリスタッフフェア」をリゾートエリアで開催。農家との面談を仲介して、JAようていで13名の採用が決定しました。
彼らの住まいとして夏場は社員寮を提供してくれるなど、リゾート会社も強力にバックアップ。地域が一体となって労働力確保に取り組む体制が整いつつあります。冬はスキーリゾート、夏は農業というライフスタイルで通年雇用が実現すれば、地域内での定住につながり、いずれ農業経営者として独立する可能性も広がりそうです。
振興局を中心に、JAと民間企業が連携
農家側の求人を取りまとめたJAようてい地域振興課の浦口俊昭統括課長は「求人は商業や観光業などの時給と同程度か、それ以上になるように条件を付けて募りましたが、33農家で50人くらいの求人数が集まった」と話します。
4〜10月まで、なるべく長期で雇用してくれる農家を優先してマッチングしましたが、実際は「1〜2カ月で集中的に稼いで、そのお金で旅行に行きたい」という求職者も少なくなかったとか。
また、近くに住まいが見つからなかったり、通勤手段がなかったりして諦めるケースもありました。「今年の冬は前回の反省を踏まえて、住まいの確保や交通手段の有無など農家側の求人情報を詳細に集めるつもり」といいます。
では、実際にマッチングプランで農作業ヘルパーの仕事に就いた方は、農業にどう向き合っているのでしょう。蘭越町の近藤農園で働く2人の外国人、トッドさんとアレックスさんに話を聞きました。
カナダ出身のトッドさんはスキーのインストラクターで、日本人の女性と結婚し赤ちゃんが生まれたばかり。農場の近くの中古住宅を購入して「来年以降も夏はぜひここで働きたい」と話します。
もうひとりアメリカ出身のアレックスさんも奥さんが日本人。これまで本州で英会話教室の講師をしていましたが「マイペースで季節に合わせて変化のある、さまざまな仕事ができる農業が楽しい」と顔をほころばせます。いまはリゾート会社の寮で暮らしており「川でカヤックに挑戦してみたい」とニセコの夏を満喫しています。
後志総合振興局では今回のマッチングプランの改善点を踏まえた上で、来シーズンにはグローバルなマッチングコンシェルジュの配置を検討しているほか、JAようていも独自で無料職業紹介事業の認可を取得して窓口を増やし、より力を入れていく方針です。地域に埋もれている潜在的な労働力を掘り起こし、求人側と結びつける新しい取り組みは、行政とJA、民間企業の連携で大きな成果を結びつつあります。