土づくりや収量アップだけではありません。輪作にはさまざまな効果があります。
この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。
ホクレン資材事業本部
肥料農薬部 特任技監 志賀 弘行(農学博士)
輪作が目指すのは長続きする農業
輪作とは「同じ土地に種類の異なる作物を、複数年にわたり一定の順序で繰り返して栽培する作付け体系」のこと。ホクレン肥料農薬部の志賀技監は、こう説明します。
「作物には根張りが深いもの浅いもの、収穫後の残渣(ざんさ)が多いもの少ないもの、いろんなタイプがあって、土の微生物も作物ごとに減ったり増えたりします。単一の作物を作り続けると、特定の病原菌やセンチュウが増え土の健康が損なわれるので、できるだけタイプの違う作物を組み合わせ、一定間隔で栽培することで土壌養分のバランスを保ち、長続きする農業を目指すのが輪作です」
土壌の生物多様性を保全し、養分の利用効率を高め、土壌病害を減少させるなど、輪作の効果は数え切れないほど(次頁参照)。持続可能な農業を実現するには欠かせないものだといえるでしょう。
労働力不足を背景にした小麦の過作が心配
北海道では1970年代以降、十勝地方などで、てん菜、豆類、馬鈴しょ、小麦の畑作4品で4年輪作という基本パターンが一般化しました。
「本来なら4品目がバランス良く作付けされているのが理想ですが、実際は麦類が畑作の作付けの6割近い面積を占めている地域もあり、どうしても過作になりやすいのが課題です」
その理由は、小麦の労働時間が圧倒的に少なく、しかも収益性が高いこと。特に秋播き小麦は前作が限られていることもあって、連作が多くなりがちです。
「同じ土地で同じ作物を作り続けると収量が減ることが多い。減収率は畑作4品の場合、豆、小麦、馬鈴しょ、てん菜の順で大きくなります」
一戸当たりの面積が拡大する中、手間のかからない小麦の作付けが増えると、連作障害への不安も高まります。「畑作4品のみでどう回すかという話ではなく、緑肥なども含め、いろいろな作物を組み合わせて欠点を補うことを考えるとよいでしょう。今は各地域で、条件に合わせた輪作への取り組みがあります」と志賀技監。輪作のさまざまなスタイルを、改めて学んでみませんか。