作業機の取り付けや取り外しを安全に行うためのポイントについて農業大学校の斉藤さんに聞きました。
この記事は2020年8月1日に掲載された情報となります。
北海道立農業大学校
教務部 主査(機械) 斉藤 克史さん
気を付けてほしいポイント
着脱作業時の注意点
作業機の取り付けや取り外しは、作業に適した安全な服装で行います。ヘルメットや安全靴を着用し、作業着の腰ばきやタオルの首掛けは避けてください(図8)。
また、作業はエンジンを切り、なるべく平らな場所で行うこと。傾斜地では駐車ブレーキのかけ忘れなどでトラクターが動き出す恐れが。必ずギアをニュートラルにして駐車ブレーキをかけてください。
一人で作業する時は、周囲に子どもや高齢者がいないか確認を。トラクターを動かす時は念のためクラクションを鳴らしましょう。
また、ロワーリンクを合わせる時は足や手が直接触れないよう棒を使用すると安全です。
3点リンクで支える直装式の作業機の着脱手順
●準備
①ヒッチピンおよびロワーリンクフック、ヒッチプレート(作業機側)などの点検。
②左右ロワーリンクの高さを同じにする。
③作業機のボルトや部品の摩耗状況を確認。
④軸受け部、取り付けシャフトの緩み、ガタの点検。
⑤グリースアップをする。
●取り付け
①トップリンク、ロワーリンクの各ヒッチボールを作業機のヒッチに取り付ける。
②トラクターを作業機に正対し、ロワーリンクを下げる。
③ロワーリンクフックがヒッチボールに合う位置まで後退。
④前後進レバーをニュートラルにして、駐車ブレーキをかける。
⑤左右のロワーリンクのフック幅を作業機のヒッチボールに合わせる。
⑥ロワーリンクを上げて作業機のヒッチボールをフックにかける。
⑦続いてトップリンクを取り付ける。
⑧作業機を上げてチェックチェーン(振れ止め)の確認調整をする。
●取り外し
①作業機を平らなところに下ろす。
②トップリンクを外す。
③ロワーリンクのフックのロックを外し、ロワーリンクを下げる。
④トラクターを前進させ、作業機から離す。
複数人で着脱作業する際の注意点
複数人で作業する際は役割分担を明確にしておきましょう。運転者主導の場合は常に補助者の動きに注意を払うこと。補助者はトラクターの後方や死角に立たず、運転者の見える位置で待機します。補助者主導の場合は補助者の合図に従って運転手が操作します。いずれもお互いに声掛け確認が欠かせません。
事故が起こりやすいのはこんな時
トップリンク着脱時に指を挟んだり頭をぶつけたり、ロワーリンクの着脱時に足や手にけがをする恐れがあります。運転者の誤操作や駐車ブレーキの掛け忘れでトラクターが動き、作業者がトラクターと作業機に挟まれるケースも。必ずエンジンを切り、ギアをニュートラルにして駐車ブレーキをかけてください。
ミスを前提にした安全管理
農業大学校での指導
農業の死亡事故率は全産業平均の約10倍、建設業の約2.5倍にのぼります。当校の学生や研修生にはまず農作業が非常に危険だということを認識してもらうようにしています。作業機の着脱についても「人はミスをする」ことを前提に危険予知を訓練。万が一ミスをしてもけがをしない、もしくは軽傷で済むような安全対策を心掛けています。焦っていると冷静な判断ができず、重大事故につながりやすいので、なるべく時間に余裕をもって作業することも大切です。