圃場環境を改善し、地力を向上させるサブソイラやプラウを使った作業。その基本とポイントをスガノ農機株式会社の上川原さんにお聞きしました。
この記事は2020年8月1日に掲載された情報となります。
スガノ農機株式会社 上富良野営業所
営業推進部長 上川原 和行さん
トラクターの大型化で深くまで耕せるようになりましたが、これに伴い、硬盤層も下がっているため、より深い位置での心土破砕が必要になってきています。
心土破砕はなぜ必要なのか
湿害にも干ばつにも強い圃場へ
トラクターで作業をすると土壌が踏み固められたり、作土の下に硬盤(耕盤)層が形成されたりして、根張りや水の浸透が悪くなります。これを改善するのが「心土破砕」です。サブソイラなどナイフのような形状の機械で硬盤層に亀裂を入れ、透排水性を向上させます。根の生育範囲が拡大するため根張りが良くなり、養分吸収が旺盛になるほか、湿害にも干ばつにも強い圃場をつくることができます(図1)。
収穫後、秋のうちに心土破砕を行えば、雪どけ水がすみやかに抜けてくれるため、春作業がスムーズになります。秋の終わりまで収穫が続く場合は、春に心土破砕をする地域もあります。
作業の前には必ず硬盤層の深さを調べること
心土破砕のポイント
心土破砕は、あらかじめ圃場の硬盤層がどこにあるのか調べ、効果のある深さで作業をするのが鉄則です。硬盤層が40㎝の深さに形成されている場合、それより浅い場所に機械をかけても効果はありません。トラクターの馬力が不安なら、3本爪のサブソイラは中央を外し2本爪できっちり深く作業しましょう。馬力に余力がある場合は、3本爪のうち中央の爪を深くすると、縦に水の道ができるので、より効果的です。
心土破砕の作業は、圃場を斜めやクロスに
作業の注意点
田んぼでは田植えと同じ方向で心土破砕をすると、田植機が溝にぬかってしまうので、斜めか横にかけるのがコツです。畑も同じで、水が通る「水みち」をつぶさないようにするには、斜めやクロスにかけると良いでしょう。更に毎年同じ方向ではなく、少しずつ角度を変えると、土の中で水みちがたくさん増えて、排水効果がより高まります。
圃場や作物に合わせて適切な選択を
心土破砕の作業機の種類
スガノ農機の場合は、一般的なサブソイラなど下記の3種類の作業機があります。刃先が減ると土に刺さりづらくなるので、こまめに交換してください。
反転耕起はなぜ必要か
天地返しとすき込みで地力アップ
反転耕起とは土を塊のまま起こし、天地をひっくり返すことです。麦わらや稲株などの作物残渣を有機物として土に戻し、微生物による分解を促進させて地力を高めます。微生物の働きが活性化すると、土にたくさん空気が入り、人間がつくり出すことのできない団粒構造の土壌になります。団粒構造とは、細かい土の粒子が小さな塊をつくり、それが集積した土壌のこと。雨の多い時には排水し、干ばつの時は保水してくれるので植物の生育に適しています。
また、反転耕起により雑草の駆除ができるほか、寒さで土の下に逃げた病害虫を上層に戻して駆除する効果もあります(図2)。
反転耕起に欠かせない作業機「プラウ」
プラウの役割と手順
反転耕起に使う代表的な機械といえばプラウです。土を切って塊のまま横に反転させて起こしていきます(図3)。下の土を上にあげ、表層の土をなるべく下の深いところに入れてやるのが大切です。
通常は、収穫後に麦わらや稲株などの作物残渣を粉砕・攪拌(かくはん)し、サブソイラなどで心土破砕してから反転耕起を行います。秋に行うのであればそのまま寒にさらし、雪の重さで砕土。秋の収穫がぎりぎりなら、春に心土破砕してプラウですき込み、整地作業の後に播種します。
土質や作物に合わせてプラウを選ぶ
プラウの種類と選び方
トラクターの馬力に合わせて作業機を選ぶ人もいますが、本来は圃場の土質や作物に合わせて必要なプラウを見極め、それを引っぱるのに適したトラクターを考えるべきです。
プラウの場合、ボトムサイズ、連数、ボトムの種類などでさまざまな種類があります。ちなみにボトムプラウ(羽)は主に次の3タイプがあります。
●シェア:土の中にもぐって土を切断し、その土をモールドボードに送り込みます。
●モールドボード:シェアから送り込まれた土を持ち上げて反転・放てき・粉砕します。鉄鋼製と樹脂製があります。
●ランドサイド:側圧を受けながらプラウの水平を保持します。
●カバーボード:土の飛散を防ぎ反転を補助。草地や作物の残渣すき込みに効果的。
●ヒール:上部からの圧力を支えます。
●エクステンション:反転を補助します。
プラウを長く安全に使うために
保管とメンテナンス
プラウにはトラクターの片輪を溝に落として耕起する「溝曳き(みぞひき)」と、溝に落とさない「丘曳き(おかひき)」、どちらにも使える「兼用」タイプがあります。クローラータイプや自動操舵トラクターを使う場合は丘曳きが適しています。
プラウは油圧やベアリングを使っているので、使用前もしくは使用後にはグリースアップが必要です。その日の作業が終わったら軽く水洗いしながら、どこか破損していないか、油切れはないか確認し、翌日の使用に備えてください。長期の保管の際はしっかり水洗いした後、廃油を塗り、錆びないよう屋内に格納しましょう。
トラクターとプラウの連結は、ここがポイント!
正しい連結のチェック項目
最近は大型トラクターが多く、プラウの調整が狂っていても引っ張ることはできますが、正しく連結することは大切です。プラウを正しく連結すると、トラクターの燃費が向上、作業機も長持ちします。また圃場を平らに耕せるので、整地作業もラクになります。調整が不十分で、でこぼこに耕してしまうと、その後の整地が大変で、作物の生育にバラつきが出ることもあります。
特に重要なのは2点。ひとつはリフトロッドの長さです。1mm単位で左右を合わせてください。トラクターの根元で1cmずれると、5連プラウの後ろでは大きな誤差になってしまいます。もうひとつ重要なのがチェックチェーンの調整です。ロータリーなどはトラクターにしっかり固定しますが、プラウやサブソイラは緩めておく必要があります。トラクターのタイヤに干渉しない程度に緩みがあると、障害物があっても衝撃を軽減するので作業機が破損しづらくなります。イラストを参考に調整をチェックしましょう。
タイヤの空気圧は適正ですか?
ラグが2〜3個接地する適正な空気圧に設定し、左右の空気圧は必ず揃えます。
タイヤの空気圧が高すぎるとラグとラグの間に泥を巻き込み引く力が落ちてしまいます。反対に空気圧が低いと引く力は上がりますが、バーストすることも。
前後のタイヤトレッドの中心は揃っていますか?
前輪の左右のタイヤの距離を調整して、後輪と前輪の中心を合わせます。
前輪後輪のセンターが合っていないと、溝に落ちた時に角度がついてしまいます。トラクターの取扱説明書を参考に調整を。
リフトロッドは左右同じ長さですか?
リフトアームピンからロワーリンクボールまでの距離をターンバックル(シリンダの長短)で調整し、左右の長さを1mm単位まで合わせてください。
リバーシブルプラウの場合、どちらかが長いと行きと帰りで耕す深さが変わってしまいます。
チェックチェーンは適度に緩んでいますか?
作業機を固定するチェックチェーンは、トラクターのタイヤに干渉しない程度(揺れ幅5〜6cm程度)で左右均等に緩めます。
固定すると障害物の衝撃で、作業機が破損することも。
プラウの左右が水平になっていますか?
レベルねじを調整し、左右を水平にします。レベル調整値は左右同じ値にしてください。
後ろから見てトラクターが斜めになっていても、プラウの中央のフレームが土に対して左右水平になっていれば大丈夫です。
プラウの前後が水平になっていますか?
トップリンクの長さを調整し、前後を水平にします。トップリンクを詰めすぎると前が下がり後ろが高くなります。
トップリンクを一度はずし、起こしたい深さで数m走り、プラウが平らになった状態でつけてください。
第一ボトムの耕幅は適正ですか?