シン道産品 寒締めちぢみほうれん草 加工用冷凍野菜の取り組み

新商品で産地を後押し

キーワード:冷凍野菜冷凍食品縮みほうれんそう

生産者と連携し、産地貢献につながる試みとしてスタートした加工用冷凍野菜「寒締めちぢみほうれん草」。家庭用冷凍食品の需要増に注目したこの商品の開発について、ご紹介します。

この記事は2022年12月1日に掲載された情報となります。

ホクレン農産事業本部 食品部 食品課 高橋 琴さん

ホクレン農産事業本部
食品部 食品課 高橋 琴さん

労力が低減でき、取り組みやすい

ホクレン食品部では産地と連携し、付加価値を高めた商品の開発を進めています。今、注目しているのは加工用冷凍野菜です。

「ホクレンの冷凍野菜といえば業務用が大半でした。しかし、ホクレンでは市販用商品の開発・販売強化を進めてきたことに加え、コロナ禍の影響により食のスタイルが変化したことで、家庭用冷凍野菜の需要が拡大しています。〝高くても良いものを〟という傾向も見られ、付加価値の高い冷凍野菜という新たなジャンルが生まれています」と高橋さん。

このような環境下で注目したのが、〈寒締めちぢみほうれん草〉。冬場に寒締めされたほうれん草の市場評価は高いですが、限られた期間しか出荷されません。また、生産現場にとって出来秋以降の収益確保に有効なものの、収穫時の労力の大きさが課題となっていました。生産者の高齢化などもあり、市場価値が高いにもかかわらず生産量は減少傾向です。

加工用原料の作付けなら収穫時の労力を大幅に低減できるほか、冷凍野菜であれば旬の味覚を年中楽しめます」

〈寒締めちぢみほうれん草〉の規格は品質とおいしさにこだわり、糖度8度以上に設定。方、収穫時の労力が少なく、生産者が取り組みやすくなっています。

「葉先を折らないように慎重に収穫するなどの手間が少ないため、廃棄ロスが減り、反収も上がります。また、個包装のような袋詰め作業もありません。生産メリットと商品の意義をお伝えしたところ、J‌AひがしかわとJ‌Aきたみらいの生産者の皆さんにご賛同いただけました」

機能性表示食品として商品力アップ

作物を冬場の冷気にさらし成長を止めること(寒締め処理)で糖が蓄積され甘みが強くなります。「寒締め」は外気と地温の関係を見て調整しますが、基本的に9月中旬までに播種を済ませ、11月以降に寒締め、12月上旬から収穫が始まります。成長に使われずに余った糖は作物を甘くするほか、ちぢみほうれん草は「ルテイン」を豊富に含んでいるのも特長です。

「市販用冷凍野菜の〈寒締めちぢみほうれん草〉は、目の健康維持に効果が期待できる『ルテイン』に注目して機能性表示食品の届け出をしました。機能性表示食品として販売することで、商品力をアップしています」

こだわりの価値を伝える

多くの方々の努力が実り〈寒締めちぢみほうれん草〉は「簡単でおいしい」を高いレベルで実現しました。また、家庭や生産現場でのロスを低減し、SDGsにも貢献できます。

「高品質を消費者にアピールするために商品パッケージにもこだわりました(8ページ参照)。通常の冷凍野菜とは違う高級感を表現し、陳列棚に並べた時に映えるデザインを採用。生産地の情報も表示し、地域ブランドの認知度向上につなげています。先に上げた機能性表示食品としての表示も含め、品質の高さをしっかりと伝えることで少々高価でも『商品に見合った価値』で販売できるはずです」

冷凍野菜のニーズは今後も拡大していくことが予想されます。高品質な道産品のおいしさを生かし、いつでも味わってもらえる冷凍商品にはチャンスが広がっていると高橋さんは考えています。

「今後もSDGsや労力低減などを視野に入れながら、産地貢献につながる商品開発を進めていきます」

冷凍野菜「寒締めちぢみほうれん草」に取り組む
JAきたみらいとJAひがしかわ

生産者と共に広げる JAきたみらいブランド

JAきたみらい 販売企画部 野菜果実グループ 主任 濱埜 竜汰さん

JAきたみらい 販売企画部
野菜果実グループ 主任 濱埜 竜汰さん

オホーツク地域の冬の冷え込みは、ちぢみほうれん草にとって最適。JAきたみらいのちぢみほうれん草は甘さが自慢です。

生産者は「きたみらい産」ブランドに誇りを持ってくださる方が多く、ブランド維持にはこだわってきました。しかし、高齢化もあり、生産から離れる方も。

そこで、今回の加工用の取り組みを始めるに当たり、以前ちぢみほうれん草に取り組んでいた生産者などに内容を説明。収穫時の労力を低減できることもあり、賛同していただきました。

新たな取り組みにより地域のおいしさを多くの方に味わっていただき、JAきたみらいブランドの認知度向上につながっていくことを願っています。

※JAきたみらいの商品パッケージは現在試案中で、今期での発売を予定しています。
昨年は4戸の生産者にご協力いただき試験栽培を実施。今年の本製造では11戸の生産者にご協力いただきます。
写真1. 昨年は4戸の生産者にご協力いただき試験栽培を実施。今年の本製造では11戸の生産者にご協力いただきます。

年間を通じておいしさを伝える

JAひがしかわ  営農販売部 青果課 課長 松友 貴文さん

JAひがしかわ営農販売部
青果課 課長 松友 貴文さん

JAひがしかわでは、2003年から栽培を行い「しばれほうれん草」の名称で販売しています。ほぼ無農薬で栽培していますが、「ひがしかわサラダGAP(生産履歴)」により農薬使用状況や肥培管理をJAで厳しくチェックし、圃場での糖度測定を行い、基準に達したものだけを出荷、販売しています。

昨年からはホクレンとコラボし、冷凍野菜商品にも取り組んでおり、今年の9月から販売が開始されています。この取り組みにより、周年を通して東川町のほうれん草をお客様に提供できるようになりました。

糖度を上げるための温度調整や積雪による倒壊防止など冬期間の大変なハウス管理はありますが、多くの方々に東川町のほうれん草を食べていただけるよう、作付面積を増やし、販売地域を広げていきたいと考えています。

寒締めちぢみほうれん草

「寒締めちぢみほうれん草」は今年の9月より東川町の道の駅で販売がスタートし「おいしい」と高評価。また、JAひがしかわをアピールしたパッケージも好評です。
写真2. 「寒締めちぢみほうれん草」は今年の9月より東川町の道の駅で販売がスタートし「おいしい」と高評価。また、JAひがしかわをアピールしたパッケージも好評です。