この記事は2023年8月1日に掲載された情報となります。
カテゴリー:実証試験
実施年度:2021〜2022年度
対象:JA伊達市
実施:苫小牧支所営農支援室
協力関係機関:胆振農業改良普及センター、伊達市経済環境部農務課
POINT
●JA伊達市での振興作物「さつまいも」で特産品作り
JA伊達市が目指す特産品
北海道の中でも気候の温暖な伊達市は多種多様な野菜類の栽培が盛んです。一方、メインとなる品目が少ないことから新たな特産品づくりが必要です。
そこで、JA伊達市では新たな振興作物として「さつまいも」を選定し、生販一貫の流通体制の構築により、特産品として取り扱いの拡大を目指しています(写真1)。
3種類の「さつまいも」で栽培試験
「さつまいも」の栽培適性の検証や生産体制の確立を進めるため、2021年度はJA伊達市の試験圃場で「ベニアズマ」「シルクスイート」「べにはるか」の3品種について、栽培から貯蔵・販売に至るまでの課題抽出や対応策を検討する試験を行いました。
いずれの品種も、購入した切り苗を定植し、無農薬で栽培しました(写真2)。
栽培中は茎葉が繁茂する前に管理機などで畝間の雑草処理を行い、除草剤は使用しませんでした。
2021年度の夏期は高温少雨でしたが、生育は旺盛で水不足の状況ではありませんでした。
しかし、収量は多かったものの収穫時のキズや折れ、巨大塊根の発生により正品率が低下し、ハリガネムシの食害などもありました(写真3)。
貯蔵試験では、簡易キュアリング処理中の結露で軟化、萎れの発生が見られましたが、品種による違いも確認されました(写真4)。
こうして、栽培から貯蔵までの試験を実施することで、品種の特性や課題も見えてきました(表1・2、図1・2)。
さつまいもの産地化に向けて
収穫から1カ月貯蔵後にホクレン食品流通研究課で試食による官能評価と成分分析を行いました。
基準とした茨城県産の同品種との「焼き芋」の官能評価では、いずれの品種も品質はやや劣り課題が残る結果となりましたが、「ベニアズマ」については総合的な好みに大差はありませんでした(写真5)。
また、販路開拓のためホクレン園芸開発課によるユーザーへの試食会や加工向けの試作にも取り組みました。
2021年度の収穫時に見られた各種障害について改善の方向性が見えたことから、2022年3月末には苗代軽減効果を確認するための採苗試験を実施※。2022年度は試験範囲を拡大し、7カ所(JA試験圃+生産者試作圃6カ所)で取り組みを進めています。試験栽培を行う生産者へは、土壌分析、圃場巡回、各種調査を適時実施し、さつまいも産地化に向けた先進地域視察や研修会も開催予定です。