JA全農が、化学メーカーのBASF社と共同で今年4月からサービスを開始した、栽培管理支援システム「xarvio® FIELD MANAGER」(以下、ザルビオFM)の概要を紹介します。
この記事は2021年12月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 肥料農薬部 技術普及課
ザルビオFMは、品種データ、栽培方法、気象状況など、さまざまなデータをAI(人工知能)が解析し、防除など最適な作業時期を教えてくれるサービスです。現在、水稲と大豆を対象に提供されています。
ザルビオFMはパソコンやスマートフォンから利用可能で、主に三つの機能があります。
1 生育ステージ予測
栽培している作物の生育ステージの推移を予測する機能です。品種や播種日(移植日)などを入力すると、AIが地域の気象条件などを解析し、圃場ごとに予測します(図1)。各生育ステージ(水稲の場合、幼穂形成期、出穂期、成熟期など)にいつ達するか事前に予測できるので、それに応じた防除や施肥時期など、適切な作業計画を立てることができます。なお、予測はその年の状況などを踏まえ随時更新されます。
2 最適な防除を支援
水稲の主要病害である、いもち病のほか、紋枯(もんがれ)病などの病害発生リスクを4日後まで予測します(図2)。
大豆では、その圃場で問題となる雑草種や耕種条件をあらかじめ登録することで、適切な除草剤や散布時期、耕起のタイミングなどを知らせてくれます。薬剤の選択や防除タイミングを適切かつ効率的にできます。
●:低リスク〜感染リスクは低い(防除不要)
●:中リスク〜多少リスクがある(防除レベルに達していない)
●:高リスク〜感染リスクがある(高い確率で防除レベルに達している)
※上記画面は過去にさかのぼって病害リスクの状況を表示させたもの
3 衛星画像で生育状況を把握
衛星画像を自動で取得して解析し、圃場ごとの生育量(バイオマス)を算出します。圃場内の生育状況が見て分かるよう、衛星データから生育量を表す指数(※1)を求め、同様な生育量のゾーンごとに色分けして表示できるので(図3)、生育不良箇所や生育ムラも分かります。また、過去にさかのぼることもできます。
現在、この機能を活用した肥料の可変施肥(※2)や農薬の可変散布(※3)の技術開発を進めており、ホクレンでは、大豆において殺虫剤を可変散布する試験を実施しています。
※1:NDVI(正規化植生指数)やLAI(葉面積指数)
※2:生育量が多い場所には少なく、少ない場所には多く施肥する技術(一部の農業機械に限られる)
※3:生育量が多い場所には多く、少ない場所には少なく農薬を散布する技術(開発中)
コスト低減や省力化に向け役立つサービスへ
ホクレンでは、北海道内の生産者を対象にしたモニター調査を今年から行い、使用感などを確認しています。実際に使った方からは、「生育ステージ予測機能は、具体的な時期が分かり参考になった」、「生育量(バイオマス)も実際に圃場を歩くと傾向が合っている」などと評価する声が寄せられました。
一方、「すでに水稲と小麦で、衛星データから収穫時期を決めるサービスを使っているが、ザルビオFMでもできるようにしてほしい」や、「病害だけでなく、害虫の発生予察機能も追加してほしい」、「登録時の農薬名検索や使用量の入力がしづらい」など、改善を求める意見もありました。
課題はありますが、開発側にフィードバックし、コスト低減や省力化に向け役立つサービスになるよう進めていきます。
なお、ザルビオFMは、左記でアカウント取得後、2圃場まで無料で試すことができます。3圃場以上の場合、100圃場まで年間1万3200円(税込み)のサービスとなります(※4)。