水稲栽培期間中の「深水管理」や「中干し」が重要なのは言うまでもありませんが、収量や品質を高め、機械などで作業しやすい田んぼに改善するには、収穫後の圃場管理が大切です。
この記事は2021年10月1日に掲載された情報となります。
北海道農産協会
業務部 技監
竹内 稔さん
Profile:北海道岩見沢市北村生まれ。弘前大学農学部卒。1982年 北海道入庁。空知、後志、石狩、日高管内各農業改良普及センターや農業試験場等に普及指導員として勤務。担当作目は水稲。2020年より北海道農産協会勤務。
稲わら処理の仕方で生育にも影響が
収穫後の稲わらを放置したままだと、土壌表面からの水分蒸発が抑制され、圃場が乾きにくくなります。特に排水不良田における春すき込みでは、移植後、わらの分解に伴い、ポリフェノール類や有機酸などの生育阻害物質が発生(ワキの発生)し、根の生育が抑制されたり、稲わら由来の窒素が生育後期に吸収され、タンパク質含有率を高める恐れもあります(図1)。
透排水性向上への起点
透排水性の改善は作期中も意識すべきことですが、その第一段階は収穫後から始まります。目的は大きく二つ、乾田化により収量・品質の向上を図ることと、機械や人力による作業をしやすくするためです(写真1、表1)。
収穫後の具体的な管理
①稲わらの搬出
稲わらは貴重な資源です。搬出して堆肥や飼料などに有効活用しましょう(写真2)。また稲わらの焼却は、煙害(健康・交通)や産地への風評害の原因にもなるので絶対に行わないようにしましょう。
作業の都合上どうしても稲わら搬出ができない場合でも、そのまま放置せず、できるだけ早い時期に土壌表面に混和することで悪影響を緩和できます。
Point
収集後の稲わらを水田のそばに野積みすると、病害の感染源となる場合があります。そのままの放置は避けましょう。
②溝掘りで表面排水の促進を
収穫後は水田表面に水がたまらないよう、小排水溝を掘って排水を促します。表面水の除去で、圃場の乾燥を早めることができます(写真3)。
Point
作った溝は、確実に落水口につなぎ、収穫作業時のタイヤ跡も利用すると良いでしょう。
③心土破砕の施工
心土破砕は堅密な下層土を破砕して膨軟にし、根圏域を拡大する効果のほかに、水田では主に透排水性改善を目的として施工します。本暗きょが十分に機能している場合は、より効果的です。
Point
心土破砕は、圃場が乾いている時にできるだけゆっくりと施工し、暗きょと交わるように施工するのがコツです。
④畦畔の補修
冷害軽減に向けた深水管理や、肥料や除草剤の効果を維持するには、十分な畔高を備え漏水対策をしっかり行うことが重要です。降雪前に畦の状況を確認し、畦塗りなどの補修を行いましょう(写真4)。
Point
畦塗りは土壌水分のある時期に実施し、畔高は30cm以上を目標にしましょう。
⑤土壌診断の活用を
高品質米の安定生産には、施肥の適正化が欠かせません。分析結果や今年の生育を参考に、圃場ごとに施肥設計を確認しましょう。また、土壌分析は3〜4年ごとに行いましょう。
北海道農産協会が発信する情報をご活用ください
北海道農産協会では、水稲の水管理や病害虫防除など、栽培技術向上に役立つさまざまな資料配付やWebサイトでの公開を行っています。ぜひご覧ください。