子牛に悪影響を及ぼす細菌はいつも身近な場所に潜んでいます。訓子府実証農場で行った、牛舎内の拭き取り検査による飼養環境の衛生管理に向けた取り組みを紹介します。
この記事は2021年8月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 訓子府実証農場 畜産技術課
子牛の下痢を予防する三つの対策
子牛の下痢は、「感染性」と「非感染性」の二つに分類されます。下痢のほとんどは感染性であり、その多くは大腸菌等の細菌が原因であると言われています。加えて、ロタウイルス等のウイルスやクリプトスポリジウム等の寄生虫による複合感染も多く報告されています。これら感染性下痢への対策として
①感染畜の隔離や治療を行う感染源対策
②感染を媒介する哺乳器具の消毒を行う感染経路対策
③未感染畜にワクチン接種を行う予防対策
以上、三つを総合的に行うことで発生をコントロールできます。今回は②についてご紹介します。
毎日の衛生管理を徹底することで病原菌減少へ
訓子府実証農場で拭き取り検査を行ったところ、長靴裏、哺乳ロボット周辺や、飼槽から多くの大腸菌が検出されました(写真1、図1)。長靴から多くの大腸菌が検出されたことは、人が媒介となり感染拡大している可能性を示しています。また、哺乳ロボットチューブ中の大腸菌数は糞便1g中の大腸菌数に相当します。バケット蓋(特にホース接続部)からは一般生菌が多く検出されました。農場では初乳用ミルカーとして使っているものなので、初乳の汚染につながっていたかもしれません。
検出された箇所は毎日の洗浄や消毒が足りていないと判断されるところで、ブラシ洗浄後に100倍希釈したロンテクト(逆性せっけん系消毒薬)を圧縮噴霧器で噴霧する洗浄を行いました。チューブは循環洗浄を行い、長靴は洗浄後踏み込み消毒層に浸漬してから保管しました。現在これらの作業を毎日行っています(写真2)。
更に、ウイルスや寄生虫による感染対策のため、牛舎内の石灰塗布を実施しました。その結果、ほとんどの箇所で大腸菌と一般生菌が検出限界以下となり、5カ月後の定期検査時にも菌は検出されず、良好な衛生状態が保たれていました(図1)。
飼養環境改善による増体への影響
改善後は哺乳期の増体が高くなり、個体ごとの増体もばらつきが小さくなりました(表1)。これは、体調を崩し増体が落ち込む個体が少ないことを示しているので、飼養環境を衛生的に保つメリットは大きいと実感しています。
しかし、環境改善を行うだけで増体が良くなる訳ではありません。感染畜の治療やワクチン接種を検討することも必要です。農場ではこれまで哺乳プログラムの改善、感染症対策、哺乳期のストレス低減と冬期の寒さ対策等を実施することで今回のような増体成績を達成しています。飼養環境の衛生管理についても、対策の一つとして考えていただけると幸いです。