トマトのハウス栽培で発生する土壌病害、「褐色根腐病」低減に向けた美瑛町の取り組みを紹介します。
この記事は2021年2月1日に掲載された情報となります。
上川農業改良普及センター 大雪支所 地域第一係長 木村 篤
Profile:京都市出身。十勝、オホーツクの普及センター勤務を経て、2019年4月より現職。
生産者数が100戸を超える美瑛町の大玉トマトは、北海道内で平取町に次ぐ収穫量を誇ります(表1)。昭和40年代に始まった同町のトマト栽培は、農業者の栽培技術の改善、JAや町の生産振興支援により、高い生産水準に達しています。
しかし、長期連用するトマトハウスの連作障害や土壌病害の中には、はっきりした兆候を示さないものもあり、ベテランの農業者でもなかなか気付かないことがあります。
褐色根腐病とは?
トマトの褐色根腐病は、「萎凋(いちょう)病」や「かいよう病」のように茎葉の黄化や萎(しお)れといった目立った病徴を見せません。
一方、地下の根は褐色に腐敗して、直根表面に多数の亀裂を生じ、コルク化したような特徴的な姿になります(写真1)。病原菌は被害根とともに土壌中に生き残るため、連作すると発生が多くなります。
地域を挙げた実態調査
地上部には異変を見せず、病害として認識されてこなかった褐色根腐病ですが、「外観に目立った症状はないが、日中の高温時に茎葉が萎れる。これは病気か?」。そんな農業者の疑問をきっかけに、その存在が認知され、地域一体となった取り組みが始まりました。
地域の発生実態を調べるため、普及センター、JAびえい「とまと生産部会」が2016年、226棟のハウスを対象に大規模な調査を行った結果、約4割のハウスで褐色根腐病の発生が確認されました(図1)。発病程度は、発生したハウスの6割が「少」発生という評価でした。地域に広く発生しているものの、発病程度は比較的軽度であるといえました。
取り組みやすい技術メニューを選んで対策
褐色根腐病の対策には、ハウス内を湛水状態にする土壌還元消毒のほか、抵抗性台木の利用、冬期のハウスフィルム除去といった方法があります。
実態調査から、多くのハウスは軽度の発生であること、春先に苗を定植する促成栽培作型でも取り組みやすいことを考慮し、定植前のハウス内土壌にフスマを施用する方法を選択しました。フスマを基肥と一緒に混和するという作業は、手軽さも特長の一つです。この取り組みにより、施用後の発病度低下が確認されました(図2)。
取り組んだ農業者からは、「トマトの草勢への影響はない」「費用が安い」「追加の作業がなく取り組みやすい」と好評です。地域では、ハウスの発病度に応じたフスマ施用量を設定し、技術の普及を進めています。
対策技術の認知度向上
フスマを施用する技術を広く知ってもらうため、収穫が終了したハウスで研修を実施しました。実際に褐色根腐病の被害根を観察し、病害の特徴や被害を知ってもらうことで、この技術を地域に広めていきたいと考えています(写真2)。