北海道のブランド米として、全国の消費者に認められるようになった「ゆめぴりか」。そのブランドを維持するため、品質と価値を高める取り組みが進められています。
この記事は2020年12月1日に掲載された情報となります。
北海道米の新たなブランド形成協議会 会長 大関 光敏さん
Profile:1962年奈井江町生まれ。ゆめぴりか10haを含む水稲24haのほか小麦、大豆などを生産。JA新すながわゆめぴりか生産協議会会長も務める。
北海道でブランド米を確立
「ゆめぴりか」は、全国のブランド米のマーケットに切り込める極良食味米の品種として2008年に誕生しました。ブランドを確立するため、生産者、JA、ホクレン、行政、関係機関や団体が連携し「北海道米の新たなブランド形成協議会」(以下、協議会)を設立。精米タンパク含有率7.4%以下(生産目標として6.8%以下)という基準を設け、高品質な米の生産と全国的なプロモーションを推進してきました。
協議会設立当初からゆめぴりか生産とブランドの推進に尽力し、2020年7月から会長を務める大関光敏さんは、「最初に試食した時、今までにない粘りと風味に、これは素晴らしい米だと思い、ここまで努力してきました。一般財団法人日本穀物検定協会が発表する『米の食味ランキング』で2010年から10年連続『特A』評価を獲得(2010年は参考出品)。全国的に認知され、北海道米全体のイメージも大きく向上したと思います」と胸を張ります。
ブランド維持に関わる課題も
全道の生産者やJA、関係団体等が足並みをそろえて作ったゆめぴりかですが、現状ではブランド維持に関わる課題も発生しています。
「ゆめぴりかのタンパク含有率の基準値は7.4%以下ですが、非常にデリケートな品種であるため、圃場の選定や施肥、天候や生育に応じた水管理など、きめ細かく生産管理しないと基準を満たす米を作るのは簡単ではありません。それでもブランド米として味と品質を守るため、品質の証である認定マークを定めるなど、生産者や関係者の努力によりルールを徹底してきました。しかし実際は、認定マークが無く基準を満たさないような米が、ゆめぴりかとして販売されている場合があります。タンパク値が高い米は基準品と比べ食味が劣るため、それを食べた消費者が『ゆめぴりかはおいしくない』と一度でも感じてしまうと、ブランド全体の価値が下がってしまうことになります」と大関会長は危機感を募らせます。
また、協議会発足当初はゆめぴりか生産者のうち9割が協議会に参加し、一緒になって基準を満たす米づくりに努力してきましたが、近年は参加率が約7割になっているのも不安材料の一つ。
「山形県の『つや姫』や福井県の『いちほまれ』など、道外のトップブランド米では、協議会を編成し生産や流通について厳格なルールを定め、それを生産者が徹底して守ることで、非常に高品質の米を作っています。北海道は広く、地域ごとの条件も異なるので統一していくのは大変ですが、米の一大産地としての認識を持って、取り組んでいかなければならないと思います」
品質と信頼を守るために
協議会ではブランドを守るため、品質を優先した栽培管理の徹底に向けて、改めて広報活動を行っています。
「2018、19年は基準品が需要に満たない状況でした。そこで2019年に、ゆめぴりかの栽培マニュアルを再び生産者の皆さんに配布しました。その効果や天候も相まって、2020年は過去2カ年より多くのお客様に基準品をお届けできる見込みです。2020年には、そのマニュアルを簡潔にまとめ、栽培のポイントも紹介したリーフレットを配布し(図1、表1)、更なる努力を呼びかけています」と大関会長。
また、地域を挙げて高品質米としてのブランドを守る取り組みを進めている産地もあります。大関会長が代表を務めるJA新すながわゆめぴりか生産協議会もそのような産地の一つ。
「タンパク含有率の基準を協議会の目標値の6.8%とし、生産者への情報発信や相互のチェック体制で高品質なゆめぴりか生産に努めています。生産した米は、小規模のこだわりの販売店で店頭売価1㎏当たり800円もの高値がついた実績もあります。こだわって作ればこのように評価されるということも生産者の皆さんに知ってもらいたいですね。ゆめぴりかのブランド力が下がると、北海道米の他の品種にも悪影響を及ぼしかねません。北海道米の最高峰であるブランド米を作っているというプライドを持ち、消費者に選ばれる米作りに取り組んでいきましょう」