「えみまる」は、直播を始めとする省力栽培に適した、早生で良食味の水稲新品種です。
この記事は2020年8月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 米穀部 米穀総合課
道内水稲面積の維持・拡大に向け期待される「えみまる」
水田の集約化が進み、1戸当たりの作付面積は増加しましたが、担い手の減少や労働力不足などから、北海道全体では水稲作付面積の減少が続いています。労働力不足に対応した省力化栽培技術の普及は急務の課題です。
「えみまる」は、低温苗立性が従来の直播向け主力品種「ほしまる」を大きく上回ることから、直播栽培における安定生産が期待できます。また、高密度播種短期育苗(「密苗※1」など)の場合、慣行よりも若い苗を移植するため、生育遅れが懸念されますが、早生品種である「えみまる」を用いることで生育遅れを補うことができます※2。
これら省力化栽培技術に適した「えみまる」は、北海道において、将来的な水稲作付面積の維持・拡大に向け、中心となり得る期待の品種です。
※1.「密苗」はヤンマー株式会社の登録商標です。
※2.高密度播種短期育苗は、慣行の成苗や中苗より葉齢の若い苗を本田に移植するため、中苗と同じ生育量になるまで時間がかかります。地域によっては十分に登熟が進まず、収量や品質の低下が懸念されます。
「ななつぼし」並みの食味を生かして販売
主食用米の需要は全国で年間約700万トン強ですが、人口減少や食の多様化などにより、近年は年に8〜10万トン程度減少しています。一方で、スーパーやコンビニエンスストアなどで販売される、弁当やおにぎりなどを持ち帰って食べる「中食」、レストランなどへ出かけて食事する「外食」が米の消費の約3割を占め、増加傾向となっています(図1)。今後も、単身世帯や共働き世帯の増加などから需要が伸びることが予想されています。中長期的に安定した販路を確保するには、これら中食・外食需要を取り込んでいくことが重要になっています(図2)。
そこで「えみまる」は、コンビニのおにぎりや弁当用、冷凍米飯用など中食・外食の業務用を中心に販売していく予定です。また、「ななつぼし」並みの食味の良さを生かし(図3)、家庭用精米としての販売にも取り組んでおり、道内ではホクレンが(図4)、道外でも株式会社神明が5月から販売を開始しています。
生産拡大に向け多様な用途に販売へ
「えみまる」の昨年の作付面積は、一般栽培の初年度ということから約500haでしたが、本年は約1300haが見込まれ、今後も更に作付けが拡大する見通しです。
ホクレンでは省力化技術導入に伴う「えみまる」の生産拡大を見据え、安定した販路を確保し生産者の皆さんに安心して作っていただけるよう、弁当・おにぎり用途やレストラン・お食事処向け、無菌パック米飯用途などの業務用需要の販路開拓に加えて、家庭用での固定需要確保にも取り組んでいく予定です。