米国「Dairy One」社と提携した粗飼料分析サービスを開始

ネットワーク利用によるDairy One社の検量線情報活用(イメージ)
図1.ネットワーク利用によるDairy One社の検量線情報活用(イメージ)

「Dairy One」社との提携により、海外の新たな飼料設計ソフトに対応した粗飼料分析が道内で実施できるようになりました。

この記事は2020年8月1日に掲載された情報となります。

ホクレン 畜産生産部 生産技術課

「Dairy  One」社のNIR分析が道内で可能に

乳牛の飼料設計において、必要な栄養や給与量をより正確につかむため、道内でも米国で開発された乳牛栄養システム※1に基づいた飼料設計ソフトを導入している事例があります。しかしその活用には、従来に加え新たな分析項目も必要となることから、海外の分析機関に依頼する必要がありました。

ホクレンでは、全農の要請を受け本年(2020年)7月から新たに米国の分析機関「Dairy  One」社との提携による粗飼料分析サービスを開始しました。

同社は、ニューヨーク州において生乳や土壌、粗飼料など酪農に関わる各種分析(化学分析)や近赤外分析を行う機関で、年間十万点以上の飼料分析を行っています。

粗飼料分析は、般的に乾燥させたサンプルに近赤外線(NIR)を照射し、その吸光度を検量線(吸光度と化学分析値との相関から求めた式)に当てはめ、値を推定します。検量線は分析精度を左右し、作成には多くの化学分析を実施したデータやノウハウが必要です。

同社サーバーとネットワークでつながり、同社が米国のほか世界各地の提携先機関に提供している最新の検量線情報を活用することで(図1)、道内で分析しても同社実施と変わらぬ精度の分析が可能になります。

※1.コーネル大学(米国)が開発している乳牛栄養プログラム(CNCPS)。飼料と牛の生産性について予測するもの。

新たな飼料設計ソフトに対応した分析項目とデータ形式

海外にサンプルを送るのではなく、ホクレンくみあい飼料株式会社の釧路西港工場で分析するのでスピーディーに結果を報告できます(写真1、図2、表1)。

ホクレンくみあい飼料株式会社(釧路西港工場)の分析装置
写真1.ホクレンくみあい飼料株式会社(釧路西港工場)の分析装置
分析結果報告書の例
図2.分析結果報告書の例
主な分析項目と日本語表記(参考)
表1.主な分析項目と日本語表記(参考)

般的な水分やタンパク質、炭水化物、ミネラルなどの分析に加え、繊維の消化率(NDFD)①や、消化できない繊維(uNDF)②、デンプンの消化率、アンモニアや、乳酸などの有機酸も含まれています。また、飼料設計ソフトに対応したデータ形式(XML形式※2)により報告できるので、手入力することなくソフトにデータを取り込めます。

分析の種類は、「コーンサイレージ」「グラスサイレージ(ヘイレージ)」「乾草(ヘイ)」「生草」の四つです。なお、ミネラルについては、特に乾乳期の設計をする場合、分析精度の高い蛍光X線分析によるオプション(DCAD)分析を推奨しています。また、サンプル受け付けから3営業日後に結果を報告できるよう取り進めています。詳しくは、お近くのJ‌Aまたはホクレン支所までお問い合わせください。

※2. XML形式は、ホクレン支所(畜産生産課/酪農畜産課)からの提供となります。
※3. aNDFom:従来の分析(NDF)では、α耐熱性アミラーゼ処理によりデンプンを除去し、ミネラルを取り除いていますが、本分析では亜硫酸ナトリウム処理も追加されているため、従来とは別の表記となります。
※4.消化率:乳牛のルーメンから抽出したルーメン液と飼料を試験管内で培養して消化率を見ています。数字は培養時間を示しています。なお、従来の分析でも、グラスサイレージ、コーンサイレージは、9月頃からNDFD(30、120、240時間)の表示を予定しています。

【留意事項】
●Dairy One分析は、Dairy OneのNIRによる分析結果と、オプション(DCAD)分析によるミネラル分析項目のみとなります。
●オプション分析時は、NIRによるミネラルの分析結果は表示されません。
●分析項目は英語表示です。日本語の表記は表1のとおりです。
●一つのサンプルによる、Dairy One分析と従来の粗飼料分析実施は受け付けできません。
●従来の粗飼料分析や、有機酸、アンモニア、硝酸態窒素などの分析を希望される場合は、サンプルを別にし従来の申込用紙に記入してお申し込みください。