カテゴリー:生産振興
実施年度:2015~2017年度
実施:留萌支所営農支援室
対象JA:JA南るもい(令和3年2月1日に「JAるもい」へ改称)
協力関係機関:留萌農業改良普及センター南留萌支所、北海道中央農業共済組合留萌支所、留萌市、小平町、増毛町
POINT
●効率的な営農のために「無代かき栽培」「乾田直播栽培」を新規導入
●「南るもい輪作研究会」を立ち上げて技術を普及
この記事は2021年4月1日に掲載された情報となります。
新たな栽培体系の検討
JA南るもい(現JAるもい)管内では、農業生産現場での担い手の高齢化と後継者不足が深刻な状況です。一戸当たりの経営規模は拡大しており、このままでは更に担い手不足が進行してしまうため、早急な対策が必要となっています。
留萌地区の営農は水稲中心ですが、経営規模拡大に伴い畑作(水田転換畑)の位置付けは高まっています。同時に、畑作用農業機械の導入も進んでおり、より効率的に営農を行うため、畑作と稲作で作業機を共用できる“無代かき栽培”(図1)と稲作省力化技術である“乾田直播栽培”(図2)の導入を検討しました。
良食味米生産と輪作体系の確立を目指して
留萌地区では無代かき・乾田直播栽培の実施例が少ないことから、先進地(空知地区)の事例をもとに、2015年度から取り組みを始めました。留萌地区は良食味米(低タンパク米)の産地であるため、良食味米の生産と畑作物の収量性向上を併せて実現するよう、独自の肥培管理法の確立を目標に設定。複数年にわたり各種実証試験等に取り組み(表1)、その結果を関係者間で確認・共有しながら取り進めました。
初年度(2015年度)は取り組み戸数2戸から始まり、翌年には5戸、翌々年には12戸、と拡大しました。無代かき栽培を中心にした技術の有用性は徐々に浸透。これは土壌物理性改善とともに良食味米生産も同時に実現できたことが大きいと考えています。当技術は代かきをしないため滞水性(水持ち)は低下しますが、土壌の団粒構造は失われません。そのため、稲の根域が広がり健全な生育が可能。排水性の向上により、水田転換畑にした場合の畑作物の収量性向上も期待できます。
このように水田と畑を輪換することで土壌の健全化が実現できます。
「南るもい輪作研究会」の立ち上げ
このような取り組みを経て、2017年2月にJA南るもいを中心として「南るもい輪作研究会」を立ち上げました。無代かき栽培は2019年度には67haを超え(図3)、一定の普及が実現できたと見ています。一方、乾田直播栽培は作付品種が少ないことから普及は限定的だったものの、良食味米品種の「えみまる」の登場により今後は作付面積の拡大が見込まれます。
また、同研究会のもう一つのテーマである「畑作物の収量向上」に関しては、極端な気象変動が重なり(2017・2018年は集中豪雨による滞水被害、2019年は播種期以降の極度の干ばつによる大豆の出芽不良など)、十分な成果が残せていません。今後も継続的に土壌物理性などの改善状況を確認し、天候等に左右されにくい土壌づくりを目指します。