土の中に潜む細菌、かび、ウイルス、センチュウなどによる被害を防ぐには?

キーワード:センチュウ土壌改良病害虫連作障害
センチュウ
センチュウは顕微鏡で見ないと分からないほど小さな虫

 

この記事は2026年2月2日に掲載された情報となります。

 

道総研 農業研究本部 中央農業試験場 病虫部長 小松 勉さん

道総研 農業研究本部 中央農業試験場
病虫部長 小松 勉さん

 

土壌に生息する病原菌やセンチュウによって作物が生育不良になるケースも少なくありません。原因となる病害虫や改善に向けた対策について教えてもらいました。

 

Q.作物の生育不良を引き起こす原因となる病原菌や病害虫は?

 

A.さまざまな種類があり 作物によって違います

 

原因になるのはウイルス、細菌、かびなどさまざまあり、作物によって異なります。秋播き小麦では縞萎縮病や萎縮病(ともにウイルス)、豆類ではダイズシストセンチュウ(虫)、馬鈴しょでは半身萎凋病(かび)、てん菜では根腐病(かび)、トマトでは青枯病、かいよう病(ともに細菌)などがあります。

 

Q.連作をすると病原菌やセンチュウが増えるのはなぜ?

 

A.病原菌やセンチュウに好都合な環境が維持されるからです

 

宿主(しゅくしゅ)となる植物を連続して栽培すると、病原菌やセンチュウにとって好都合な環境が維持され、天敵による抑制が効かなくなります。

そのため土壌に病原菌やセンチュウが増えます。輪作をしているつもりでも、寄主範囲の広い病原菌やセンチュウから見れば連作と変わらない場合もあるので要注意。

たとえばネグサレセンチュウは大根、人参、ごぼうなどのほか、大豆や馬鈴しょにも寄生します。半身萎凋病もナス科、ウリ科、キク科、アブラナ科など宿主範囲が広いので、輪作体系には注意ください。

 

バーティシリウム黒点病
バーティシリウム黒点病
馬鈴しょを植えて半身萎凋病が出た畑に大根を植えると、地上部に目立った症状はないのに、維管束が黒く変色してしまうバーティシリウム黒点病になります。これはバーティシリウムというかびが原因。ナス科、ウリ科、キク科、アブラナ科など宿主の範囲が広い多犯性のかびです。土の中に長く残り、違う作物を植えても被害が出ます。症状が出にくいイネ科のトウモロコシやマメ科の作物で輪作をしましょう。

 

Q.病原菌やセンチュウによって作物はどのような被害を受けますか?

 

A.作物そのものをダメにします

 

土壌病害はそのほとんどが地上部の萎(しお)れ、枯凋(こちょう)など作物体そのものをダメにします。ダイズシストセンチュウは同様にダイズを黄化(おうか)させ、萎れさせます。早めに被害に気づくことが重要ですが、まん延してから発見される場合は少なくありません。

 

ジャガイモ半身萎凋病
ジャガイモ半身萎凋病
半身萎凋病は根から入ったかびが全方位に広がらず、侵入した維管束だけをふさいでしまうのが特徴。半分だけ枯れたように見えるのが名前の由来です。

 

トマト青枯病
トマト青枯病
青枯病は水の通る道に細菌が増殖する病気。水を吸い上げることができなくなり、葉が枯れる前に青いまま急に枯れてしまいます。

 

 

Q.土壌病害を減らすには?

 

A.輪作体系が大切です

 

なにより重要なのは適切な輪作体系です。作物や病害虫の種類によって、抵抗性品種の選択、対抗植物の栽培、土壌消毒などの対策も検討しましょう。

 

[抵抗性品種の選択]
病気になりにくい抵抗性品種があれば、そちらを作付けしましょう。小豆なら「エリモショウズ」と遺伝的にほぼ同じで、落葉病や萎凋病に強い「エリモ167」が普及しています。中央農試の作物開発部門では小麦の縞萎縮病に強い「きたほなみR」も開発しました。いま種子の生産中ですので、数年で出回るはずです。

 

[対抗植物の栽培]
センチュウでは対抗植物の栽培も有効です。秋播き小麦のあとにネグサレセンチュウには緑肥エンバクを育ててすき込むと、センチュウ密度が劇的に減ります。
宿主と似ているけれど虫を寄せ付けない「おとり植物」も利用できます。ダイズシストセンチュウにはアカクローバー、ジャガイモシロシストセンチュウにはポテモンを植えると効果的です。

 

おとり植物の例(ポテモン)
おとり植物の例(ポテモン)
シストセンチュウが「宿主が来た」と思い込み、休眠胞子が発芽しますが、おとり植物は発病しないので、卵からかえったシストセンチュウの幼虫が死滅します。

 

[土壌消毒]
施設園芸では土壌消毒(くん蒸剤、太陽熱、還元消毒)も有効です。といっても太陽熱での消毒や還元消毒は気温の高い時期でなければできないので、作付けを休まなければならず、現実的ではありません。

How to 還元消毒

還元消毒

米糠やふすまなど有機物を大量にまき、水を大量に与えてビニールで覆います。有機物を食べて微生物が増え、水の影響で土の中の酸素がなくなり、病原菌が死んでしまいます。

 

 

Q.土壌病害を減らすために心がけることは?

 

A.連作をしない、圃場に汚染された土壌を持ち込ませないことです

 

まず連作をしないことが重要です。また、圃場に汚染土壌を持ち込まないように意識しましょう。海外の農業資材に汚染された土が付着している場合もあるので、注意ください。野生動物や人間を介して広がる危険性もあります。見学会など外部の人間が圃場に立ち入る際はオーバーブーツを履く、靴を消毒するなどの防疫対策が不可欠です。