
この記事は2025年12月1日に掲載された情報となります。

北海道 農政部 生産振興局 技術普及課
課長補佐(担い手対策)
七社 貴郎(ななしゃ たかお)さん (右)
北海道 農政部 農業経営局 農業経営課
農業経営・企業連携サポート室長 主幹(経営指導)
髙谷 泰範さん(中央)
公益財団法人 北海道農業公社農業経営相談室
継承コーディネーター 名取 雅之さん(左)
今や、どの業界も後継者不足が問題視されていますが、農業の経営継承はどのような状況なのでしょうか。担い手対策に詳しい北海道農政部や北海道農業公社の担当者に農業における後継者についてお聞きしました。
道内の農業経営者は高齢化しているの?
国が5年に一度まとめる統計調査「農林業センサス」で農業経営者の年齢構成を2015年と2020年で比較すると、30〜40代は増加、50〜60代は減少、70代以上が増加しています(図1)。高齢の人が増える一方で、若い世代の割合も増えていることがわかります。
振興局別に見ると、渡島・檜山・胆振で65歳以上の割合が高く、宗谷・釧路・根室の酪農地帯では低くなっています。小規模な水田や軽量野菜栽培は、酪農などに比べて高齢になっても続けやすいのかもしれません。

リタイアの年齢に変化はありますか?
離農農家の世帯主の平均年齢を見ると、2008年ごろは65歳くらいでした。2021年から2023年までの直近のデータでは69.7歳、70.1歳、69.4歳と上昇傾向にあります(図2)。

世代交代が進んでいないの?
残念ながら新規就農者の数は減少傾向です(表1)。なかでも他産業で働いていた農家の子弟が親元に戻って家業を継ぐUターン就農が少なくなっていて、親子間の経営継承が減少しています。「北海道で農業をやりたい」と新たに就農する新規参入者は毎年120人程度います。

(北海道農政部 新規就農者実態調査結果の概要) ※各年の数値には、過年度の未報告分を含んでいる場合がある。
※新規就農者の区分
●新規学卒就農者:農家出身者で学校を卒業後直ちに、または卒業後に研修を経て就農した者
●Uターン就農者:農家出身者で他産業に従事した後、就農した者
●新規参入者:農外から新たに就農した者
農業公社にはどのような相談が寄せらせていますか?
農業公社の「北海道農業経営相談所」などに寄せられる相談の内訳を見ると、2021年度は法人化の相談が41%とトップでした。2024年度になると経営継承(第三者含)が55%と半分以上まで増えています(図3)。

※農業公社の「北海道農業経営相談所」と、振興局等で開催しているセミナー相談会を合わせた相談件数です。
具体的な内容を過去3年間の平均で調べると、親子間継承が33%、親族や従業員以外が経営を引き継ぐ第三者継承の相談が67%の割合になっています。
経営継承の相談が増えているのはなぜ?
これまでは離農があれば、周囲の農業者が土地を引き受けてくれました。ただ地域によってはそれも限界に近づいているのではないでしょうか。大規模な農家で後継者がないままリタイアすると、周囲が引き受けるのも困難になります。
また、農家戸数が減ってしまうと、地域の商店や学校が維持できず、地域の衰退につながります。北海道農業の維持はもちろん、地域コミュニティの存続のためにも、農家の子弟も含めた新規就農者を呼び込み地域を活性化させていく必要があるでしょう。