
この記事は2026年1月19日に掲載された情報となります。

新規就農を考える in 標津2025 実行委員会
安達永補さん・真子さん
☆ Happy Land ☆安達牧場
●安達 永補さん(左)
1978年、標津町生まれ。酪農学園大学卒業後、両親の営む「☆ Happy Land ☆安達牧場」に就農し、25歳で経営移譲。現在は乳牛165頭を飼養している。
安達 真子さん(右)
●岩手県の米農家出身。日本大学で畜産を学び、卒業後、農林水産省で酪農分野を担当。生産者として酪農の魅力を発信する必要性を強く感じる中、2019年に永補さんと結婚。以来、得意不得意を補完しながら夫婦二人三脚で食農教育を軸としたさまざまな活動を行っている。
単なる職業体験ではなく、学生に「考える場」を提供した新規就農イベント「新規就農を考えるin標津2025」。2025年9月に開催されたこのイベントについて、実行委員会の安達夫妻にお話を伺いました。
地域で実感する危機感
北海道新規就農ネットワークではこれまで道内7町村で12回、新規就農セミナーを主催・共催してきました。今回、13回目として標津町で「新規就農を考えるin標津2025」を開催。中心メンバーとして活動したのが安達牧場の安達永補さん・真子さん夫妻です。
発端は同ネットワークから安達さんへ開催打診があったことでした。標津地域でも人手不足への危機感が高まっていたことから、夫婦で開催を決断。3年前に提案を受けた安達さんは、JA標津や標津町と協議し体制を構築しました。
「受け入れ体制のほころびが生じないようJAや役場と連携してバックアップ体制を整備。そのため、準備期間は2年に及びました」と、安達さんは急がずじっくりとイベントに向けて協力体制を固めました。

地域の協力がイベントを成功へ
イベントは3日間行われ、北海道大学や酪農学園大学、帯広畜産大学、日本大学などから、30名弱の学生が参加しました。
初日は㆒般の方を含め約120名が参加し、講演やパネルディスカッションを開催、2日目は離農物件を見ながらグループで新規就農計画を立案、発表。
3日目は放牧酪農家の放牧地を見ながらグループごとに植生・土壌・飼料設計を学び、改善点を協議、発表。他にも地域の歴史や生活などのカリキュラムを加え、地域課題を考えられるプログラムとしました。



運営にはJA標津、標津町、地域の農家や企業、普及員など、さまざまな組織や個人が連携。北海道新規就農ネットワークの会員約25名と標津町の農家が現場でサポートしました。
「二番草収穫の繁忙期にもかかわらず、多くの皆さんにご協力いただきました。この協力体制があったからこそ、裏テーマである『大人の本気』を学生たちに伝えられたと思います。
初日は内容が難しかったものの、2日目・3日目には考える時間を持てたことやサポートもあり、『考えが深まった』『自分の知識の浅さを実感した』など、学生から好意的に受け止められたようです」
イベントは次代へのきっかけ
一方で、参加学生数の増加に向けた調整など、今後の改善点も見えてきました。
「考える時間とプレゼン準備の充実、新規就農者のつながりや実行委員会の結束強化など、持続的な仕組み作りや、人のつながりを強化したいと考えています」
今後に向けて、安達さんはイベントの目標を単に参加学生を増やすことではないと言います。
「参加学生が考える姿勢の質を重視しています。思い出作りではなく主体的な思考と大人との関係構築が目的。イベントは現場を知り、地域と関わることで、農業を自らの幸せや生活に結びつけて考えるきっかけです。
牧場の方向性についても、今後は小学生から大学生・㆒般の方まで、幅広い世代・背景が交わり、既存のイメージを超えて、『農に関わるキャリア』や『生産者と消費者の双方向理解』を社会に発信したいと思っています」
大切なのは地域と酪農の魅力をしっかりと伝えること
JA篠津 営農生活課
課長 大場 靖幸さん
標津町では、この5年間で酪農家が17戸離農するなど、減少傾向が続いています。そこで、JA標津では担い手の確保を目指し、東京や大阪で開催される新農業人フェアに年間3〜4回参加。
新規就農者向けのサポートや助成も充実させていますが、担い手確保は難しい状況が続いています。このような状況の中、安達夫妻を中心に北海道新規就農ネットワークと協力して「新規就農を考えるin標津2025」を開催し、大きな成果を上げることができました。
特に印象深かったのは、学生や関係者など100名以上が標津町に集まったことです。
酪農を学ぶ熱心な学生も参加しており、その姿に大いに刺激を受けました。今回のイベントで得た知見を生かし、今後は学校訪問の機会を増やして、さらに多くの学生に酪農や標津町の魅力を伝えていく予定です。
まずは酪農の魅力を体験していただき、標津町で一定期間経験を積みながら、それぞれのペースで資金準備や知識を身に付け、就農にチャレンジできるよう、さまざまな選択肢を広げていきたいと考えています。
初めての試みで反省すべき点もありましたが、今後も新規就農ネットワークと連携し、多様な方々と共にイベントの継続に取り組んでまいります。
