気象庁 札幌管区気象台 気象防災部

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キーワード:気候変動気象災害温暖化異常気象

どうなる_北海道の気候

この記事は2025年8月1日に掲載された情報となります。

札幌管区気象台桜井さん横田さん

気象庁 札幌管区気象台 気象防災部
気候変動・海洋情報調整官
桜井 敏之さん(左)
地域防災推進課 地球温暖化情報官
横田 歩さん(右)

 

昔と比べて気候が変わったと実感している方も多いのではないでしょうか。実際にどのくらい変化しているのでしょう?札幌管区気象台で観測結果と将来予測について教えてもらいました。

 

POINT

《北海道の気候の将来予測》

  • 20世紀末と比較して21世紀末の気温は約1.5〜5℃上昇する

  • 真夏日の日数は増加、真冬日の日数は減少

  • 短時間強雨の発生頻度が増える

  • 降雪・積雪は減少、ただし大雪のリスクが低下するとは限らない

 

地球温暖化の影響が明らかに

—北海道の気温は高くなっているのですか。

気温は確かに上昇傾向にあります。1898年から2024年までの北海道の年平均気温は、100年あたり1.79℃の割合で上昇しています(図1)。

 

図1_北海道の年平均気温
図1.北海道の年平均気温 1898〜2024年 (札幌管区気象台提供)
長期間、観測を継続している7地点(旭川、網走、札幌、帯広、根室、寿都、函館)のデータから算出したグラフです。北海道の年平均気温は変動しながら徐々に上昇しています。特にここ数年は高温の年が多くなっています。
※赤い直線は、長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示しています。

 

—雨の降り方も変化していますか。

傘を差していても濡れるような短時間強雨(1時間に30mm以上)の回数は増加傾向が現れており、1980年頃と比較しておおむね1.5倍程度に頻度が増えています(図2)。気温の上昇に伴い、大気中に水蒸気をより多く含むことができるようになるため、㆒度に降る雨の量が多くなっていると考えられます。

 

図2_北海道短時間強雨の年間発生回数
図2.北海道[アメダス]短時間強雨の年間発生回数 (札幌管区気象台提供)
北海道のアメダス観測地点でみると、短時間強雨(1時間降水量30㎜以上)の年間発生回数は増加傾向が現れています。統計期間の初期の10年(1979〜1988年)と最近10年(2015〜2024年)を比べると、発生回数は約1.5倍に増加しています。
※アメダスを用いた統計期間は1979年からなので、気温より期間が短くなっています。
※赤い直線は、長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示しています。

 

—雪の降り方はどうですか。

北海道の日本海側では、年最深積雪(その年で最も深い積雪)が10年あたり3.9%の割合で減少傾向が現れています(図3)。

また、  日降雪量50㎝以上の年間日数も減少しています。

㆒方で、今年2月4日には帯広で24時間の降雪量が124㎝という記録的な大雪が発生しており、その要因の㆒つとして、地球温暖化の影響があることも報告されています。

地球温暖化による気温や海面水温の上昇に伴って、大気中の水蒸気量が増加。気温の低い陸上で降雪量の増加につながったと考えられます。  

 

図3_北海道日本海側の年最深積雪
図3.北海道日本海側の年最深積雪
(札幌管区気象台提供)
北海道日本海側の8地点(稚内、留萌、旭川、札幌、岩見沢、寿都、江差、倶知安)の年最深積雪の平年比です。赤い直線(長期変化傾向)で示している通り、減少傾向が現れています。
※赤い直線は、長期変化傾向(この期間の平均的な変化傾向)を示しています。

 

—ほかにはどのような変化がありますか。

これは札幌の例ですが、桜の開花は10年あたり1.5日早くなっています。楓の紅葉は10年あたり3.7日遅くなっています。

夏(6〜8月)の北海道7地点平均の最高気温は100年あたり1.05℃の割合で上昇、最低気温は100年あたり2.05℃の割合で上昇しています。最高気温よりも最低気温の上昇幅が大きくなっているため、昼夜の寒暖差が小さくなってきていると考えられます。  

 

北海道の気候は、この先どうなる?

気候の将来予測は、今後、温室効果ガスの排出量がどのくらい削減されるかによって大きく違ってきます。複数あるシナリオのうち、ここではパリ協定の2℃目標※が達成された場合の「2℃上昇シナリオ」、追加的な緩和策を取らなかった場合の「4℃上昇シナリオ」の二つについて説明します。

※2015年にパリで開催されたCOP21 において、「世界全体の平均気温の上昇を工業化以前と比べ、2℃より十分低く保つ(2℃目標)とともに1.5℃までに抑える努力を追求する」ことが世界共通の長期目標に掲げられました。

—北海道の気候の将来予測を教えてください。

〈気温について〉

20世紀末と21世紀末の年平均気温を比べると、2℃上昇シナリオで約1.5℃、4℃上昇シナリオでは約5℃、上昇すると予測されています(図4)。

 

図4_21世紀末における北海道の年平均気温の変化の分布
図4.21世紀末における北海道の年平均気温の変化の分布
文部科学省及び気象庁「日本の気候変動2025」より
左は2℃上昇シナリオ、右は4℃上昇シナリオでの予測です。20世紀末(1980〜1999年)と21世紀末(2076〜2095年)を比べた場合、北海道の年平均気温は2℃上昇シナリオで約1.5℃、4℃上昇シナリオで約5℃、上昇する予測です。

 

石狩地方では、20世紀末に年間で4日だった真夏日の日数が、2℃上昇シナリオでは約8日に、4℃上昇シナリオでは約32日に増加すると見込まれます。真冬日の日数も20世紀末の年間58日から減少し、2℃上昇シナリオでは約38日、4℃上昇シナリオでは約10日になると予測されています。

〈雨について〉

短時間に強い雨が降り、土砂災害や洪水等のリスクが高まると考えられます。短時間強雨(1時間降水量30㎜以上)の年間発生回数を20世紀末と21世紀末で比べると、2℃上昇シナリオでは約1.8倍、4℃上昇シナリオでは約4.6倍に増加すると予測されています。

また、20世紀末には100年に一回しか起こらないような極端な大雨(北海道では日降水量100〜200㎜以上)の発生頻度と強度が、将来は高まると見込まれます。

発生頻度については、2℃上昇時の気候では100年に約2.6回に、4℃上昇時の気候では更に増えて、100年に約6.4回になると予測されています。

〈台風について〉

日本付近の台風の強度は強まり、台風に伴う降水量も増加すると予測されています。

〈雪について〉

4℃上昇シナリオでは年最深積雪(図5)や年降雪量は減少し、降雪の期間も短くなると予測されます。ただし、内陸部では厳冬期を中心に、極端な大雪時の降雪量が増加する可能性もあります。1年を合計した降雪量は少なくなりますが、大雪のリスクが低下するとは言い切れません。

—冷害や干ばつの心配はなくなりますか?

㆒般的には夏の低温は発生しにくくなると考えられます。

ただし、北海道では夏にオホーツク海高気圧が発生して冷たい空気が流入し、気温が低下することがあります。

このオホーツク海高気圧の予測は難しく、将来どうなるかははっきりとは分かりません。

冷害の懸念がなくなるとは言い切れないでしょう。

干ばつについては、予測に必要な資料がないため、現時点では分かっていません。

春の雪解け時期が早まることに伴う水不足の懸念はあります。また、4℃上昇シナリオでは日本全体で無降水(日降水量が1㎜未満)の日数が増えると予測されています。

北海道の将来予測としては明瞭な変化傾向は予測されていませんが、注意が必要です。

—気候変動にどう備えればよいでしょうか。

最新の観測結果や将来予測については気象庁のホームページでより詳細に紹介しています。

また、気候変動の対策には、温室効果ガスの排出を抑制する「緩和」と、変化する気候に備える「適応」という二本柱があります。

世界中で緩和策に取り組んでいますが、地球温暖化の影響を完全に避けることは難しいでしょう。

このため適応策についても取り組むことが重要とされています。その取り組みの一つとして、北海道が関係機関と協力して運営している「北海道気候変動適応センター」のホームページでは、北海道の気候変動の影響や適応に関する情報が提供されています。

災害リスクに備えるなど、適切な危機感を持ちながら、変化を好機と捉えるような新しい発想も求められています。

 

気候変動についての最新情報は以下のサイトをご覧ください。

●気象庁 日本の気候変動2025>>移動する

●気象庁 気候変動ポータル>>移動する

●北海道気候変動適応センター>>移動する