
この記事は2025年6月11日に掲載された情報となります。
ホクレン 施設資材部 資材課
収量確保のために取り組むべき課題である暑熱対策。有効な外張りフィルムの比較試験を実施しました。
2023年度は記録的な猛暑の影響により、トマトでは日焼け症状や花落ちによる着果不良、尻腐れなどの生理障害が発生し、収量低下の原因となりました。北海道の施設園芸における暑熱対策は、収量確保のため喫緊に取り組むべき課題となっています。
そこで、ホクレンでは、暑熱対策に有効でコストパフォーマンスに優れた資材を検討すべく、2024年度にホクレン長沼研究農場で、ビニールハウスの外張りフィルムについての比較試験を行いました。
試験概要
試験は、1棟ごとに異なる外張りフィルムを展張したトマトハウス3棟で行い(写真1)、遮光ネットなどの展張はせず、隔離床養液栽培によって行いました。調査項目は①ハウス内環境調査、②果実表面温度調査、③収量調査です。
試験に用いたフィルムは、
❶クリンテートFX(以下FX)
系統銘柄で広く使われている
❷クリンテートSK(以下SK)
北海道内ではあまり使用実績がなかったものの価格もFXと同じで、系統銘柄の暑熱対策フィルムとして改めて期待されている
❸POクール
道内での使用場面はあってもホクレンとして比較試験を実施していなかったの3種類です(表1)。

試験結果
①ハウス内環境調査
ハウス内の照度は、FX>POクール>SKで推移しました。どの区でもトマト栽培に必要な光は確保できていました。
ハウス内最高気温は、6月13日〜9月20日の栽培期間中でFXと比較した最大差において、SKが3.6℃、POクールで2.7℃低い結果となりました。
図1は栽培期間中における長沼町の最高気温日(8月12日)の日の出から日の入りまでのハウス内温度推移を示したものです。SKとPOクールともに、FXのハウス内気温よりも低く推移していることが分かります。

また写真2では、ハウス内写真およびサーモグラフィ画像を上下で示しており、FXと比べ、SK、POクールでは通路表面温度が低くなっていることが分かります。

②果実表面温度調査
果実表面温度について、ハウス内の日陰側と日当たり側でそれぞれ計測したところ(図2)、日陰側ではFXと比較しSKが1.5℃、POクールが0.2℃低く、日当たり側ではSKが3.9℃、POクールが1.1℃低い結果となりました。

このことから、特にSKについては、光を散乱させるフィルムの梨地(なしじ)※効果により直射日光が和らぎ、果実表面温度の上昇を抑えられたと推察されます。
※梨の皮のように表面に凹凸の加工が施されること
③収量調査
総収量については大きな差は見られませんでしたが、規格内収量はSKでFX比1.2倍の結果となりました(図3)。
規格内率についてもSKが65・5%と最も高い結果となり、図4のとおり障害果の個数が減少していることが分かりました。特に〝着色不良果〟については、果実表面温度の上昇を抑えられたことによる効果であると推察しています。


今後の暑熱対策に向けて
2024年度は、2023年度に比べ比較的穏やかな夏場の気温となりました。しかし、今後も厳しい猛暑が続いていくことが予想されます。
2025年度についても引き続き施設園芸における暑熱対策試験を行い、生産者の皆さんに役立つ情報を発信していきます。
着色不良とは?
果実が高温になることで赤色色素であるリコペンが生成されにくくなり、赤色に着色しない現象。黄変果、グリーンバック果などと呼ばれる。
SK区で着色不良による障害果が減少。