この記事は2025年5月9日に掲載された情報となります。
近年、さまざまな要因で北海道産でん粉原料用馬鈴しょの生産量が減少し、でん粉の供給量を制限しています。そこで、生産振興を目的に、2025年1月23・24日に「第31回馬鈴しょ及びでん粉講習会」が開催され、馬鈴しょでん粉の現状や生産技術、メーカーでの利用状況などの講演のほか、生産者とメーカーの交流会などが行われました。その講演から、「コナヒメ」安定生産へのポイントを紹介します。
気象変動による馬鈴しょ生育への影響
生産量減少の要因の㆒つに、気象変動による温暖化が挙げられます。
2023〜2024年の気象庁アメダスデータによると、夏場の平均最高気温は30度前後に達し、最低気温が平年の平均気温に近づくなど、総じて気温は上昇しています。
このような条件では生育初期の茎葉生育が促進され、株全体の光合成量が増加することから、塊茎肥大への寄与が期待される㆒方、生育後半のでん粉蓄積を阻害する危険性があります(図1)。

受光率と通気性の改善が重要
温暖化に対応するポイントとして、受光率と通気性の改善が挙げられます。
現在の環境下では茎葉が旺盛になりやすいため、光合成や塊茎肥大への効果が期待できる㆒方で、群落が密になりやすいため、熱や湿気がこもり、病害の拡大やでん粉蓄積の阻害などを引き起こしやすくなります。
そこで、株の間に適度なゆとりを作ってあげれば、光を取り込みやすく、風通しが良くなるため、環境改善につながります。
ゆとりを作るためには、①株と株の間を広げる「疎植栽培」や、②株の生育を適度に抑える「分施体系」が有効な技術となります。
疎植栽培の検討
茎葉が旺盛になりやすい条件下では、株間や畦間を広げることにより、でん粉収量が慣行栽培並み、またはそれ以上に確保できたという試験結果が得られています(図2)。

※LAI(葉面積指数):葉の多少を示す指数。単位面積当たりの葉面積(㎡)÷単位面積(㎡)
※道総研十勝農業試験場令和5年度試験成績より
実際に疎植に取り組んでいる生産者からも、「株間の拡張により上いも収量が慣行並み以上に向上した」「畦間を72〜75㎝に広げることで、平均的に収量向上が見られた」という声が挙がっています。
分施体系の検討
「コナヒメ」は開花期頃に茎葉が伸長しやすい特徴があります(表1)。

昨今の気象変動には不安定な降水パターンも挙げられ、施用した肥料が想定通りに働かないことも多く見られます。
特に、生育初期に少雨でありながら、7月に多雨となる年では、施用した肥料が㆒気に溶出し、高温条件と開花期が重なり、茎葉の過繁茂や徒長につながった事例が多くみられます。
降水パターンが想定できない以上、施肥体系で対応する必要があり、適度な茎葉を実現するためにも、基肥重点型から培土前や着蕾(ちゃくらい)期などと分けて施用する分施体系や、降水に左右されにくい緩効性肥料の使用などが効果的です。
疎植も分施も、作業体系やこれまでの圃場生育を見ながら検討する必要があります。日頃、過繁茂になりにくい圃場では、かえって収量が減ってしまう危険性もあります。
様子を見ながら少しずつ試して生産性向上を目指しましょう。

>>北海道農産基金協会HPへ
第31回馬鈴しょ及びでん粉講習会の様子


