この記事は2025年4月9日に掲載された情報となります。
ホクレン 農業総合研究所 営農支援センター 営農技術課
POINT
❶初発前に薬剤散布を行う
❷薬剤の散布間隔は10日以内
❸マンゼブ剤は400倍、散布水量100ℓ/10a以上で安定的効果
2023年度は、高温に経過した影響でテンサイ褐斑病(以下、褐斑病)が多発し、甚大な被害をもたらしました。ここでは、長沼研究農場で2024年度に実施した試験の成果について紹介します。
薬剤散布の開始時期及び散布間隔の違いについて
試験内容については、既存の技術を参考(下段の参考文献を参照)に設計し、早期、初発直後、発病後散布開始のほか、生育期間を通じ最も高温になる時期に散布間隔を短縮した区や、散布間隔を15日にした区、無散布区を含めた合計9処理区で実施しました(表1)。

※1 各処理の右枠内上段数値は散布間隔(日)
※2 表中記号Mはマンゼブ400倍、Cは銅剤1,000倍
※3 供試品種は褐斑病抵抗性「やや弱」
※4 散布水量は100ℓ/10a
※5 「初発」は、初めて発病が確認された日
※6 すべて直播栽培
〈参考文献〉
1)北海道農政部(2017)てんさいの褐斑病の多発傾向に対応した薬剤防除対策.平成29年普及奨励ならびに指導参考事項,pp. 120-123.
2)北海道農政部(2022)抵抗性“強”品種におけるマンゼブ水和剤を用いたテンサイ褐斑病防除法.令和4年普及奨励ならびに指導参考事項,pp. 95-97.
また、試験に用いる薬剤は、褐斑病薬剤耐性菌の発生拡大を考慮し、マンゼブ剤と銅剤を使用しました。
(1)早期薬剤散布の効果について
早期薬剤散布区(表1①)の発病度は低く、また、早期散布で高温時に間隔短縮した区(表1②)は、更に発病度※が低く抑えられました(図1、写真)。
※発病度20(指数1)〜「成葉に病斑が散見」、60(3)〜「成葉のほとんど全面に病斑が発生し、部分的に壊死が認められる。」、100(5)〜「成葉の大半が枯死し、新葉の発生が目立つ」、(調査基準〈北海道法〉より抜粋)


(2)初発直後散布と発病後散布、散布間隔15日の発病度
初発直後や発病後に散布を開始したり、散布間隔を15日とした区(表1③④⑦)は、いずれも早期散布区と比べると、発病度がかなり高くなりました。
また、発病後散布で高温時に間隔短縮した区(表1⑤)やマンゼブ剤・銅剤を混用した区(表1⑥)とも、大きな差はみられませんでした(図2、写真)。
※図1・2中の①〜⑨は表1のNo.と対応しています。


マンゼブ剤の散布濃度と散布水量の効果
マンゼブ剤の散布濃度を400倍と500倍とし、それぞれの散布水量を80、100、120ℓ/10aとした6処理に無散布区を含めた合計7処理区で効果を比較しました(表2)。

※表中記号Mはマンゼブ剤、Cは銅剤1,000倍。供試品種は褐斑病抵抗性「やや弱」。すべて直播栽培。
マンゼブ剤500倍では、80、100、120ℓ/10aと、散布水量が増えるほど発病度が低くなったものの、総じて400倍より発病度が高まる傾向にありました。400倍では100ℓ/10aと120ℓ/10aで同程度であったのに対し、80ℓ/10aでは発病度がやや高くなりました(図3)。

以上から、暑熱時におけるテンサイ褐斑病防除のポイントをまとめました。
①初発前に散布を行う
例年、初発時期の10日以上前に散布する(推奨)。
②薬剤の散布間隔は10日以内
気温が最も高くなる時期に散布間隔を短くする(推奨)。
③マンゼブ剤は散布濃度400倍、散布水量は100ℓ/10a以上で安定的な効果が得られる。