この記事は2024年12月2日に掲載された情報となります。
北海道農政部 食品政策課
みどりの食料システム戦略室
主査 三宅 真人
温室効果ガスの削減量や吸収量を「クレジット」として国が認証するJ−クレジット制度。実際に農業でどのように取り組まれているのか、北海道農政部の三宅主査に基礎から教えてもらいました。
Q1.ニュースなどで取り上げられるカーボンクレジットって何?
A.温室効果ガス排出削減量を売買できる仕組みのことです
カーボンクレジットとは「温室効果ガス排出の見込み量」と「排出量削減により減った排出量」との差をクレジット化することで「排出削減量」として売買できるようにした仕組みのことです(図1)。
農業の場合、生産者は温室効果ガス削減に取り組むことでクレジットを創出し、温室効果ガス排出量削減が必要な企業へ販売。企業はこれを購入することで、購入分の排出削減量を自社の排出削減量として埋め合わせます。生産者は販売したクレジットの価格に応じて収入を得ることができます。
Q2.最近よく聞くJ−クレジットはカーボンクレジットなの?
A.国が主導する信頼性の高いカーボンクレジットです
カーボンクレジットには、国連が主導するものや、国際間取引ができるボランタリークレジットなど、いくつかの種類があります。
J−クレジットはそうしたものの㆒つで、環境省・経済産業省・農林水産省によって運営されています。省エネルギー設備の導入や再生可能エネルギーの利用、適切な森林管理などによる温室効果ガスの排出量削減・吸収量増を「クレジット」として国が認証し、取引できるようにした制度です。
創出されたクレジットは、企業や自治体などが買い取り、温室効果ガス削減目標達成や環境への取り組みに対するPRなど、さまざまな用途で活用できます。
Jークレジット誕生の背景
1997年開催の「地球温暖化防止京都会議」で採択された京都議定書により、日本政府は温室効果ガス削減目標を定めました。その目標達成のために日本政府は法律の整備、温室効果ガス排出量の報告を義務付けるなど、さまざまな施策を実施。
環境省ではその一環として、カーボンクレジットによる排出量削減「J–VER」を2008年に開始しました。 J–VERは京都議定書の目標に対し約83%達成という成果を上げ、2012年度で終了。その後、国内にあった他のカーボンクレジットを発展的に統合し、2013年に J–クレジットが誕生しました。