この記事は2024年10月7日に掲載された情報となります。
ホクレン 酪農畜産事業本部
前回は生乳1㎏あたりの温室効果ガス発生量と吸収量について解説しました。引き続き、今号は自給飼料の活用による温室効果ガス削減をお伝えします。ホクレンのチモシー単播とアカクローバ混播の比較給与試験を例に解説します。
アカクローバ混播試験の結果から見る温室効果ガス(CO₂換算)削減
自給飼料における栄養価の違い(イネ科牧草チモシーの単播とマメ科牧草アカクローバ混播)による生乳生産性への影響を調べるため1996年に試験を実施しました(表1)。
試験の結果、マメ科混播区の方が自給飼料の栄養価が上がり採食量も多いことから濃厚飼料(購入飼料)を削減(給与量乾物で2.2㎏/日少ない)でき、また乳量が多い(乳量1.2㎏/日多い)ため飼料費(粗飼料生産費含む)も下がり、経済メリットが出る結果となりました。
この試験を事例にして、生乳1kgあたりのCO₂発生量を試算しました。今回の試算では、給与内容や乳量の違いによってCO₂排出量に差が発生すると想定した排出源(堆肥化、牛のゲップ、購入飼料調達)について取り上げて試算しました。
結果、アカクローバ混播区の方が濃厚飼料の給与量が下がったことで、飼料調達部分にかかるCO₂が大きく減少しました。また、乳量が増えたことにより生乳1kgあたりCO₂(堆肥化ならびに牛のゲップ)も減少しました。飼料調達含め合計でCO₂が約9%減少する結果となりました。
北海道酪農の特徴は自給飼料基盤の活用です。マメ科牧草を混播し良質な自給飼料を給与することで、濃厚飼料の削減や乳量増加につながるため、経済メリットが出るだけでなく生乳1kgあたりのCO₂削減も可能です。
今回ご紹介した試験だけでなく、高刈り・適期刈り・草種検討など自給飼料の栄養価向上や、水分調整・十分な踏圧など発酵品質向上により、自給飼料の給与割合を高めることで経済性と環境負荷低減の両方につながります。