肥料価格が高騰する中、化学肥料の代替として注目される緑肥の特徴や導入するメリット、活用方法のポイントについて、農研機構の唐澤敏彦さんにお聞きしました。
この記事は2022年10月1日に掲載された情報となります。
農研機構 中日本農業研究センター
温暖地野菜研究領域有機・環境保全型栽培グループ長補佐 唐澤 敏彦さん
肥料価格高騰により注目を浴びている緑肥
農林水産省の委託研究として2015年から2019年に行った「生産コストの削減に向けた有機質資材の活用技術の開発」の成果を「緑肥利用マニュアル」に集約しました。
この研究が始まった背景として、畑への堆肥投入量の減少や、土壌の養分バランスの悪化、肥料価格の高騰が挙げられます。化学肥料は輸入に頼っているため、国際情勢の変化により価格が高騰してきました。そうした状況を踏まえ、肥料の自給について考えるうえで有効なのが、古くから使われていた緑肥を肥料(養分供給)や土づくり(有機物補給)に活用することです。
種類により異なる緑肥の効果
緑肥が畑から吸い上げた養分は、すき込むことで土に戻すことができます。また、マメ科の緑肥は、根粒菌が空気中の窒素を固定することで、窒素を供給する働きをします。マメ科以外の緑肥の場合、前作が吸い残して、土壌に残った窒素を緑肥が吸い上げます。ほかにも、下層へ流出したカリの吸い上げ、リン酸の吸収に役立つ土壌微生物(菌根菌、リン溶解菌など)が増える、根が伸びることによる下層土の改善などの効果があります。また、マメ科緑肥は窒素、イネ科緑肥はカリが多いため、組み合わせると養分バランスが安定し、持続的に化学肥料の代替となります。
緑肥の種類や生育度合いによって、有機物の分解の早さが違うため、期待される効果も変わります。マメ科緑肥は分解が早いため、肥料効果が高いです。イネ科緑肥の生育初期は分解しやすいので肥料効果が高くなります。成長すると分解が遅くなり土壌に有機物が蓄積されるため、土づくりの効果が高くなります。
緑肥を最大限活用するために
緑肥を活用する大きなポイントの一つは、目的に合った種類を選ぶこと。緑肥の種類は多様なので、狙った効果を持ち、次の主作物の病害虫を増やさないよう注意して選びましょう(表1参照)。もう一つのポイントは、適期に栽培・すき込みを行うことです。主作物の栽培を妨げないことを大前提として、栽培時期と種類を選びます。腐熟期間を念頭に置いてすき込みを行うことも大切です。詳しくは、前述の「緑肥利用マニュアル」に掲載してあります。地域のJAや農業改良普及センターなどに相談するのも良いでしょう。以前から緑肥を活用していた方も、栽培方法によっては効果が出ていないこともあります。マニュアルを活用して見直すことで、緑肥を最大限に有効活用してください。