2021年のポイント!
1 気象変動に備える対策と基本技術の徹底
2 状況を見据え、スマート農業技術導入を検討
3 施設園芸作物は暑熱対策と省力化技術の検討を
4 【新技術】無加温ハウスで野菜の周年生産が可能に
5 【新技術】かぼちゃの貯蔵腐敗を減らす乾燥技術
この記事は2021年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局
技術普及課 主査
大平 誠さん
2020年は気温が高く経過しましたが、降水量や日照時間は時期により変動が大きく、野菜の品目によっては生育に影響したケースが散見されました。また、新型コロナウイルスの感染拡大により、生産現場の労働力確保が困難になるといった影響もありました。
花きは、イベントの中止や縮小により6月までは需要が低迷。航空機の減便により、切り花の輸送も大半がトラック輸送に限定されました。果樹では、観光農園の入場者数の減少や市場価格の低迷などが見られました。
北海道には夏場の野菜および花き生産を担う一大産地としての責任があります。こうした気象変動や感染症のリスクに対しても迅速かつ周到な対応が求められます。
ポイント1
気象変動に備える対策と基本技術の徹底
近年の傾向から、大きな気象変動は毎年起きるものと捉えて対策を講じる必要があります。そのためには産地の環境条件に適した作型や品種選定、育苗時期や管理方法の見直し、かん水設備の準備、排水対策や高温対策などを総合的に組み合わせ、気象変動に左右されない対策を進めなくてはなりません(写真1)。また、土壌病害虫の発生も散見されています。輪作や健全な種苗づくりなど、基本技術をもう一度見直しましょう。
ポイント2
状況を見据え、スマート農業技術導入を検討
機械化が難しい園芸作物は労働力不足への対応が大きな課題です。この状況を乗り越える一つの方法として、スマート農業技術(自動換気装置、自動かん水装置、アシストスーツ、自動操舵システムなど)の導入を検討しましょう(写真2)。また、観光農園や直売所では対面販売のあり方を再考し、インターネットなど利用した非接触型の販売方法などを探る必要があります。
ポイント3
施設園芸作物は暑熱対策と省力化技術の検討を
近年、夏は気温が高くなり施設内の暑熱対策が求められています。品種の選定、循環扇の設置、遮光資材の活用、積極的な換気方式の導入などを進めましょう。側窓巻き上げ装置や妻面の大型ファン導入など、省力化につながる自動化装備の導入も検討したいところです。また、低温トラックでの花きの輸送は日数が増加するため、出荷基準(切り前)の見直しなどの技術対応も求められます。
ポイント4【新技術】
無加温ハウスで野菜の周年生産が可能に
パイプハウスの保温装備と耐雪性を強化すると、北海道でも暖房を使わずに葉菜類を栽培できます。紫からしな、小かぶ、みずななどを9月〜1月および2〜4月に栽培できるので、無加温で周年栽培が可能です。地域ごとの気候特性に対応したハウスの保温装備と耐雪強度の目安を示したマップと冬季栽培マニュアルは上川農試のホームページで公開しています(図1)。
ポイント5【新技術】
かぼちゃの貯蔵腐敗を減らす乾燥技術
かぼちゃの貯蔵腐敗の主な原因は「つる枯病」です。この病害による果実の腐敗を減らすには、差圧通風乾燥が効果的であると明らかになりました。ただし、乾燥時の温度条件は15℃以上。差圧通風の処理期間は7日間、通風の風速はかぼちゃ付近で毎秒0.3mが目安です(写真3)。長期貯蔵による腐敗ロスにお悩みの場合はご検討ください。