この記事は2024年4月1日に掲載された情報となります。
北海道農政部 生産振興局 技術普及課
総括普及指導員
(農業革新支援専門員)長井 淳一さん
ポイント
❶ 【新技術】暑熱対策により乳牛の快適性アップ
❷飼料・燃料高など畜産情勢の変化に対応する
❸【新技術】消化の良い牧草サイレージで自給飼料の割合を増やす
❹【新技術】冬枯れリスクを考慮したペレニアルライグラスの利用
❺災害に備えた対策を
ページ内の※は全て、「令和5年度指導参考事項」より
ポイント❶【新技術】
暑熱対策により乳牛の快適性アップ
昨年の高温により乳量や繁殖成績の低下が問題となったのは記憶に新しいところです。暑熱ストレスは搾乳牛だけでなく育成牛にも悪影響を及ぼします。
自然換気を最大限に活用しつつ、送風機や細霧冷房システム(写真1)などを組み合わせて乳牛の体感温度を下げることが重要です。
大型牛舎で機械換気(写真2)を導入する場合、「乳用牛舎における機械換気設備の設計指針」※が参考となります。
北海道の暑熱対策の指針となる研究成果は初めてで、頭数当たりの循環扇の数の指標や、消費電力を抑える効率の良い使用法なども記載されています。体感温度の管理と共に、消化性の良い飼料の給与や、清潔で乾いた環境など、牛のストレスの緩和に努めることも有効です。
ポイント❷
飼料・燃料高など畜産情勢の変化に対応する
飼料や電気・燃油など生産資材価格の高止まり、個体販売価格の低迷などにより、畜産経営は厳しい状況が続いています。北海道は広大な土地を活用し、豊富な粗飼料資源を有効利用することで生産コストを下げ、農業所得を確保することができます。
粗飼料は量を確保すると共に、牛が栄養を摂れる、質を重視した生産が重要です。近年は高温により生育が早まっており、刈り遅れにより品質が下がるケースが見られるので、適期収穫できるスケジュールを検討しましょう。
ポイント❸【新技術】
消化の良い牧草サイレージで自給飼料の割合を増やす
粗飼料に含まれる繊維が多いと、乳牛がすぐ満腹になり栄養摂取量が制限されます。
最近の研究によると、乳量30kg以上の乳牛において牧草サイレージの摂取量は、牧草サイレージに含まれるaNDFom(NDF〈中性デタージェント繊維〉とほぼ同義)が55%未満またはuNDF240(不消化繊維)が10%未満のときに高くなることが示されています。
この条件を満たすには、牧草の繊維が多くなる前に早めに収穫する必要があります。チモシー極早生または早生品種の1番草では穂ばらみ期、オーチャードグラス中手品種の1番草では出穂期までに収穫することが望ましいとされています。
参考「泌乳牛の飼料自給率を向上させるための牧草サイレージの繊維消化性」 ※
ポイント❹【新技術】
冬枯れリスクを考慮したペレニアルライグラスの利用
再生力・嗜好性に優れ放牧に適した草種ペレニアルライグラス(以下PR)は冬枯れに弱いため、雪が少なく土壌が凍結する十勝、釧路、根室地方では導入が難しいとされています。
しかし、PR冬枯れリスクマップ(図1)によると、いわゆる土壌凍結地帯でも地域によってPR導入リスクは異なるため、導入・利用に向け参考にしてください。また、補助草種として利用することで、さらに冬枯れリスクを下げることができます。
参考「北海道内のペレニアルライグラスの方牧草地における冬枯れリスク評価」 ※
ポイント❺
災害に備えた対策を
近年は、気象変動の影響と考えられる大型台風や暴風雨、大雪などが頻繁に発生し、いつ停電や断水に見舞われてもおかしくない状況です。
改めて災害に対する備えの重要性を認識する必要があります。
災害時に使用する発電機は普段使わずに放置されていることも多いと思いますが、年1〜2回作動してみて、動作や燃料の確認を行いましょう。
道では「災害における酪農危機管マニュアル」を作成して注意喚起を行っているので、万が㆒の備えの参考としてください。