この記事は2023年12月27日に掲載された情報となります。
「日本の農業に貢献したい」という思いから香港に「華御結(はなむすび)」をオープン。おむすびを通じて日本米のおいしさを香港で伝えてきた百農社。世界展開を見据えた新ブランド「OMUSUBI」をスタートさせた同社の西田代表取締役に海外での北海道米の価値についてお聞きしました。
百農社国際有限公司
代表取締役 西田 宗生さん
1984年生まれ。神奈川県出身。
早稲田大学政治経済学部卒。
19歳でIT企業を創業。順調に事業を進める中、
「人生をかけて行う事業とは」を模索し、農業の振興へと舵を切る。
2010年、おむすび販売会社の「百農社国際」を香港に設立。
現在の従業員数は約850名、店舗数は141店舗になる。
可能性を信じ、食文化を伝える
「100年先の“農”を創る」を理念に香港で日本米のおむすびチェーン店を展開する百農社。現在では香港の生活におむすびは浸透していますが(写真1)、 2011年の1号店オープン時は“お寿司”と勘違いされるなど、なかなか受け入れてもらえなかったといいます。
「オープン直後に東日本大震災があって、私たちにとってマイナスからのスタートでした。加えて、香港では冷めたごはんを食べない、ごはんを持ち歩かない。まさに、食文化を伝えることから始めました」
オープン当初は思うように業績が伸びず、赤字続きだったものの積極的に出店。スタッフと共に日本の食文化を地道に伝え、香港の食に“おむすび”という新しいジャンルを確立しました。現在では駅中や大規模ショッピングモールにも出店。香港でも展開する大手コーヒーチェーンの出店数に匹敵する141店舗で展開しています。
「創業前の2010年に食品見本市フードエキスポで日本米のおむすびを提供した時、並んで食べてくださったお子さんの笑顔を見て日本米の可能性を確信しました。その経験があったので逆風の中でも積極的に事業展開できたと思います」
共に世界で成長しよう
2022年1月に同社では世界展開旗艦店として新ブランド「OMUSUBI(おむすび)」をスタートさせました(写真2)。その「OMUSUBI」で採用されたのは北海道産ふっくりんこです。
「事業を始める前に全国の生産地を訪ねて歩いたことがありました。その時に北海道米のおいしさと可能性を感じました。
会社設立当初は取扱量は小さかったのですが、2019年からは本格的に北海道米を輸入。世界展開を始めるに当たっても北海道米を使わせていただいています。私たちは〝取り引き〟と〝取り組み〟を分けて考えています。品質が良くおいしいだけで取り組み先は決めていません。
私たちのミッションである日本の農業を成長させていくために共に考え、価値観を共有できる産地さんと一緒に成長したいと考えています。産地さんは共に世界で戦うパートナーといえるでしょう」
世界展開を考えるうえで環境問題を避けて通れないと西田さんは考えています。
「消費者だけでなく各国政府も環境問題に対する関心は非常に高いものがあります。日本米を国際ブランドにするためにも環境への取り組みは欠かせません。
中干しや秋すき込みなどでメタンガスの発生を抑え、農薬の使用を極力控えた環境にやさしい米づくりが大切です。
OMUSUBIで北海道米を使わせていただいているのも、環境問題にしっかり取り組んでくださっているから。北海道というブランドは香港でも浸透しているので大きな武器。日本国内とは違った新たな発想で、北海道米を世界へ広げていきたいと考えています。」