❸【大豆ミート】

世界的に注目の食材 大豆ミートの可能性

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世界的に注目の食材 大豆ミートの可能性
写真1.大豆ミートを使ったハンバーグ
この記事は2023年10月1日に掲載された情報となります。

株式会社アジテック・ファインフーズ 営業企画課 課長  東谷 剛さん

株式会社アジテック・ファインフーズ
営業企画課 課長 東谷 剛さん

 

高たんぱくなのに低カロリーな大豆ミート。ヘルシー志向の人を中心に支持を集めています。市場の中で、どのように受け入れられて今に至ったのか、大豆ミートを製造する岩手県釜石市の株式会社アジテック・ファインフーズに教えてもらいました。

注目を集める大豆ミート

スーパーの商品棚で「大豆ミート」の文字を見かけることが増えました。ファストフード店やファミリーレストランにも大豆ミートのメニューが登場。大豆ミートのレシピ本も次々と出版されています。

そもそも大豆ミートとは、大豆を原料につくる代替肉。肉や魚を食べない方などが肉の代わりに調理に用いるほか、ダイエット中やヘルシー志向の人にも人気があります。

この大豆ミートの製造を早くから手掛けてきたのが、岩手県釜石市のアジテック・ファインフーズ。営業企画課の東谷剛さんは、製造法を次のように説明します。

「丸大豆を圧搾し、油を搾り取った後、粉砕して粉にします。更に水を添加しながら熱と圧力をかけて押し出し、カットして挽肉やフィレのような形状に加工(写真2)したのが、当社の大豆ミートです(図1)」

写真1.大豆ミート ミンチタイプ(左)・フィレタイプ(右)
写真2.大豆ミート ミンチタイプ(左)・フィレタイプ(右)

 

大豆ミートの製造工程
図1.大豆ミートの製造工程

大豆のハムづくりからスタート

同社が大豆の加工を始めたのは30年以上前のこと。当時、新日本製鐵(株)釜石製鐵所の事業が縮小になったことから、新規事業としてスタート。最初に取り組んだのは大豆を使ったハムづくりでした。宗教的な理由から肉を食べない「台湾素食」という食文化が定着している台湾への輸出が始まりました。

7年ほど前からは日本国内向けの大豆ミートの製造に着手。他社が中国やアメリカ、ブラジル産などの大豆を使っているのに対し、同社は100%国産大豆。そのうち8割は北海道産です。

「当社の大豆ミートは小売ではなく、原料供給に特化しています。出荷された大豆ミートは食品メーカーや外食チェーンでハンバーグやカレー、ミートソースなどさまざまな商品に加工されています」

さまざまなレシピに使われている大豆ミート
さまざまなレシピに使われている大豆ミート

全国の学校給食で採用

最初はベジタリアンショップからの注文が中心でしたが、今は学校給食用の引き合いが増えています。

「ほぼ全国から問い合わせがあります。外国産の大豆でつくる大豆ミートと比較すると倍近い価格ですが、栄養士の方が安全安心の観点から国産大豆を選んでいただいていると思います」と東谷さん。

他県から地元で穫れた大豆で加工してほしいと依頼されることもあるそうです。

「原料が混ざらないようにラインを止めなくてはならないため、生産効率は落ちてしまいますが、地産地消の学校給食向けは、できる限り対応するようにしています」

地道な取り組みが実り、同社の大豆ミートの売り上げは7年前と比較して約6倍に成長しました。

大豆100%、無添加がこだわり

同社の大豆ミートは常温保存ができる乾燥タイプで、お湯で戻して使います。取引先からは焼肉用のスライス型や、からあげ用のブロック型を求める声があるものの、難しいのが現状です。

「小麦粉やでん粉、増粘剤や膨張剤などは加えていません。大豆100%なので、つなぎのないハンバーグのようなもの。整形しづらいのです。当たり前ですが、大豆ミートそのものは肉の味はしません。肉の味に近づけるためには牛肉エキスや化学調味料などを加える必要があります。当社ではそうした添加物を使わず、原料提供に徹しています」

ハンバーグやスープ、餃子、カレーなど、用途は工夫次第。ここ数年は製造が追いつかないほど注文が寄せられています。

「海外では小麦ミートやえんどう豆ミートなども登場し、植物性の代替肉の市場は世界的に拡大しているようです」と東谷さん。その背景には、世界人口の更なる増加によりたんぱく質の供給が需要に追いつかなくなるという予測があるようです。それ以前に東谷さんが心配しているのは農業者の高齢化と担い手不足。「このままだと農業が衰退してしまう。農家さんが一生懸命に育てた農産物の価値を高められるよう、我々製造業もがんばらなくてはと思っています」と話してくれました。

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