この記事は2019年10月1日に掲載された情報となります。
現場の負担を軽減する一貫パレチゼーション輸送を導入しているJAおとふけで、導入の経緯や効果について聞きました。
JAおとふけ 販売部 青果課
課長 宮村 徳親さん
にんじんを第5の主力作物に
JAおとふけでは2018年から、産地から出荷先の市場までパレットを使って輸送を行う「一貫パレチゼーション輸送」を導入しています。
同JAでは、主要作物である小麦・豆類・てん菜・馬鈴しょに加え、第5の作物として2006年から、にんじんの生産振興に取り組んでいます。
その際、生産者の初期投資や労力軽減のため、JAが播種や収穫を受託する「作業受委託方式」を採用。生産者の負担を軽減し、計画的な生産・出荷を可能にしました。現在は420haで作付けし、年間1万トン以上を出荷しています。
「生産量が増えると、選果場での選別や荷役作業に伴う人員の負担が増えてきます。以前は、ピーク時は土日も休みなく選果場を稼働していましたが、人手不足もあり、現在は日曜は休業。特に、積み込み時にフォークリフトを扱える人材がなかなか集まらないのが課題でした。そこで、ホクレンが推進している一貫パレチゼーション輸送(図1)を導入することにしたのです」とJAおとふけ販売部青果課 課長の宮村徳親さん。
運送会社・市場と連携して導入
一 貫パレチゼーション輸送では、段ボールをパレットに載せたままトラックに積み(写真1)、出荷先の市場でもパレットごとトラックから下ろします。
輸送に使用しているのは、日本パレットレンタル株式会社(JPR)のレンタルパレット(写真2)。
パレットのサイズに合わせて、輸送時に使う段ボールの規格を変更し、選果場のラインの機械も調整・更新しました。
手積みの場合は一台積み込むのに1人で約2時間半かかっていた作業が、一貫パレチゼーション輸送を導入後は30分ほどで完了できるようになりました(写真3)。
JAおとふけではフォークリフト操作の人員を削減でき、運送会社側にとっても、作業時間短縮や負担軽減につながっています。
にんじんは収穫後、発熱し劣化しやすい性質を持っているため、JAおとふけでは収穫から輸送までの各工程で温度管理を行う「コールドチェーン」の体制を取っています(写真4)。
積み下ろしの時間が短縮されることで、品温管理が更に徹底されました。市場の先の卸売業者や小売業者からの品質に対する評価は高く「JAおとふけのにんじんは鮮度が良い」と信頼を得ています。
こうした取り組みには、出荷先の市場でもパレットごと荷下ろしをし、スムーズに保管庫へ搬入する必要があります。
そこで、2016年の準備段階から全国の市場に協力を依頼することで理解が得られ、実施後は品質だけでなく作業軽減の面でも評価されています。
課題は市場からのパレットの回収率。現在は農産物全体で95%くらいで、更なる改善を市場に呼びかけています。
パレチゼーション輸送に取り組んで
JAおとふけでは、一貫パレチゼーション輸送の導入で、品質の確保や作業負担軽減など、多くのメリットがあったと宮村さんは言います。
「導入時に段ボールのサイズ変更や選果場のライン改修、パレットのレンタル料など費用は掛かりましたが、人件費などの削減によりランニングコストは低減しました。私たちと同様に人手不足に悩む産地も多いと思いますので、一貫パレチゼーション輸送が広まればと思います」