この記事は2019年10月1日に掲載された情報となります。
ホクレン 物流部 物流総合課
北海道で生産される農畜産物の約7割は道外で消費されます。それを支える物流を取り巻く環境が変化する中、安定した輸送力を確保するための取り組みが始まっています。
トラック運転手不足が深刻になっています
道産農畜産物を道外に運ぶ手段には、青函トンネルを通るJRコンテナ(約3割)、トラックやトレーラー(荷台)を載せて運ぶフェリーやRORO船※(約5割)、バラ積みで大量輸送する船舶や不定期船(約2割)などがあります(表1)。
※貨物を積んだトラックやトレーラー(荷台)ごと運ぶ貨物専用船
トラック輸送はどの輸送手段でも必要ですが、全国的に運転手は不足しています。また、高齢化などで、年々数が減り、特に大型トラック運転手(全国で約30万人)は過去20年で約15万人も減っています(図1)。
現在、トラック運転手は、他産業に比べ賃金が低く労働時間が長い傾向にあり、また、手積みや手下ろしの重労働も敬遠されるため、十分集められなくなっています。
ホクレンの輸送手配でも、手積みや手下ろしが必要だったり、深夜の配達になる場合などは輸送車両を確保しにくくなっている状況です。
将来の予測でも、運転手は更に減少することが見込まれており、農畜産物輸送に大きな影響が出ないよう、ホクレンもさまざまな取り組みを行っています。その一つに、農産物の「一貫パレチゼーション輸送」があります。
次ページで紹介しますが、これは手作業ではなくパレットを利用しトラックやJRコンテナに積み込み、納入先まで輸送することで、運転手の負担軽減と効率化を図るものです。馬鈴しょ、玉ねぎを中心に取り組んでいますが、現在、にんじんや大根の輸送にも導入を進めています。パレットの運用(回収)や、パレットに合う段ボールサイズの設定など課題もありますが、それらをクリアしながら、広げていく必要があります。
鉄道貨物輸送で懸念されることがあります
鉄道貨物輸送は全国に張り巡らされたネットワークや、比較的小さなロット(5トン単位)で輸送できるなどの利点があり、重要な輸送手段です。
しかし、JR北海道が2016年11月に公表した「単独では維持が困難な13線区」の中に、JR貨物の貨物列車が走行する三つの線区が含まれ懸念されています(図2)。
ホクレンでは、将来の北海道物流を考える各種会合に参画し重要性を訴えるとともに、JAグループ北海道として道・国などへ鉄道貨物輸送の維持に向け支援を講ずるよう要請を行いました。
また現在、青函トンネルなど新幹線と貨物列車が共用している区間では、すれ違う際の安全上、新幹線の速度が時速160㎞に制限されています。しかし、北海道新幹線の札幌延伸が予定される2030年度に、更に高速で走らせるため、共用する鉄道貨物は海上輸送に切り替えを検討するとの報道があります。
そうなると、更なる運転手不足や輸送コスト、輸送日数の増加が心配されます。南下貨物だけでなく、北上貨物(食料品・工業製品・宅配便など)輸送にも影響し、「北海道経済全体」に影響を及ぼしかねず、輸送力やコストの維持に向け、今後も関係各所へ働きかけを行っていく予定です。
将来にわたって安定した輸送力を確保するため、省力化を進めることや、効率的な物流となるよう関係者が知恵を出し合い協力していくことが求められています。